2022/03/25 (金) 12:00 8
玉野競輪場で3月26〜29日に開設71周年記念「瀬戸の王子杯争奪戦(GIII)」が開催される。初のホテル併設競輪場として生まれ変わった玉野競輪場。風光明媚な場所にあり、穏やかな瀬戸内海が目の前だ。“競輪”を組み込んだ「KEIRIN HOTEL 10」が誕生し、宿舎としても活用されるという異次元の舞台だ。
まさかこんな時代が訪れようとは思わなかった…。それを一番思っているのは岩津裕介(39歳・岡山=87期)ではなかろうかと思う。2009年12月1日、初めて地元記念を勝った日が刻まれている。当時まだ手薄だった中四国勢の中、みんながバトンをつないで優勝を手にした。
「最後、自分だけになってしまったみたいで…」
と振り返ったものだが、その最後を“イワツ”に、今の中四国は“イワツ”に、と誰もが期待をかけてつないだバトンがあった。
記念の準決がABCに分かれていたころだ。準決Bのメンバーが決まった時点で、中四国は地元の守谷陽介(41歳・岡山=87期)と広島の吉永和生(45歳・広島=80期)、そして徳島の三ツ石康洋(41歳・徳島=86期)の3人。「並び、どうする? 」となって、3人で話す。
三ツ石が「前でやろか」と言った瞬間。守谷は待っていたクサい…。
吉永「お前、ニヤっとしただろ」。
守谷「いや、してません」。
私は見た。守谷がニヤっとしたのを…。そして、一瞬にして昭和のニヒルな俳優のような顔に戻したのを…。三ツ石はきっちり主導権を握り、守谷ー吉永で番手まくり、準決Bは2人が決勝に勝ち上がる制度だったが、その2つの枠を占めた。
当時、三ツ石は見た目そのまま。男気の塊で、果敢な仕掛けで別線を制圧していた。それでいて冷静。
「番手まくりを決めるにはポイントがあるんですよ。いきなりガツンと踏む選手がおるでしょう。あれは失敗しやすいんです。最初は80%くらいでジワ〜ッといって90、100と上げていくんです」。
その開催ではS班を目指す村上博幸(42歳・京都=86期)につなげる、藤木裕(37歳・京都=89期)と稲川翔(37歳・大阪=90期)のバトンの話もあったのだが、それはまた別の機会に。三ツ石は守谷と吉永が決勝に乗れば、岩津と一緒になって中四国で戦える…と信じて風を切ったのだ。
決勝のメンバーは豪華で、当時爆発的に強かった小嶋敬二(52歳・石川=74期)が吉田敏洋(42歳・愛知=85期)と同乗、稲垣裕之(44歳・京都=86期)と村上と中四国が本線とは言えなかった。
しかし、守谷が風を切り、岩津は3角番手まくり。吉永は迫ってきた稲垣を何度も体を当ててブロックした。
今回は松浦悠士(31歳・広島=98期)がいる強者としての中四国軍団が、脇本雄太(32歳・福井=94期)を筆頭とする遠征勢を迎え撃つ形だ。脇本はウィナーズカップ決勝、また奈良記念(春日賞争覇戦)決勝の失敗をどう克服しにいくのかーー。
また、必見のシリーズが始まる。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。