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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の現時点】5年かけて今がある…、ろうそくの火は消える前に一瞬だけ燃え盛る

2022/03/12 (土) 18:00 27

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、21時にはスマホの電源を切る!を徹底している佐藤慎太郎です。2月末、今年最初のビッグレース「全日本選抜競輪(GI)」を走ってきやした。頂点のみを狙って乗り込んだが、優勝叶わず4着。今月は振り返りをメインに書いていこうと思う。

全日本選抜決勝ゴール前、佐藤慎太郎(2番車・黒)は最終直線で差を縮めるも4着(撮影:島尻譲)

S級S班として活躍すべき選手

 全日本選抜の開催前はずっとレースが続いてたし、取手に入る時には「脚落ちてねーかなー」とか多少の不安があった。だが、これは取り越し苦労だったようで、初日から準決までの3発走ってみて、状態は思いのほか良かったように思う。

 同県3人で勝ち上がり、決勝は新田と成田と連係することができた。事前にレース展開を想像してさまざまなプランを練るんだけど、作戦は作戦でしかなく、“現実のレースで起きること”は想定外のこともある。ちょっと今回は心持ちの面を詳しく回顧してみるわ。

決勝は新田祐大、佐藤慎太郎、成田和也の福島ラインで乗り込んだ(撮影:島尻譲)

 今回に限った話じゃないけど、オレの中で「新田の判断を第一に尊重する」っていうのがある。決勝はひとつの作戦パターンとして“新田が太田竜馬をたたくパターン”もあった。レースも動くし、先行を得意とする深谷の走りにも影響するだろうし、また違う様相のレースになったと思う。

 でも、例えば新田が太田の前に出ようとした時、どれくらいの脚力を消耗するかわからないし、もしも太田が「出させまい」と抵抗したら、新田のダメージはデカい。太田の気持ちまでは読めないし、すんなり前に出られるかわからない中で、一発まくりに懸けた新田の選択は良い判断だと思う。

 それに、オレの中で新田祐大は「自分が勝てるタイミング」で勝負して欲しい選手。日本を代表して世界と戦ったわけだから、競輪の舞台でもS級S班で活躍するべき選手だと思っている。自分の勝ちにこだわっていいし、こだわるべき。そして、その後ろを走るオレにもこだわりがある。

最終3角で猛チャージ、多くのファンが勝負所で沸いた(撮影:島尻譲)

一人の男として理想形を追う

 前を走る選手がラインの強みを生かしたいって気持ちで走っていたり、後ろを気遣いながら「ラインで決めたい」って気持ちを全面に出したりする時、追い込み屋のオレとしたら嬉しい。そういう気持ちのこもった走りや選手同士の連係が競輪の魅力でもある。

 たまに慎太郎ファンの人達の中で「先頭選手がその位置から動いてもシンタロウが厳しいだろう」という声があったりする。今回の決勝後もちらっと聞こえてきた。“慎太郎びいき”ってのは本当にありがたい限りなんだけど、このあたりオレにも持論があって。

 一人の男として『新田が勝ちにいった所を交わしてこそ』だと思うんだよね。世界を相手にした新田祐大が自分の勝ちにこだわり、その新田を差して勝つのが、オレにとっての理想形なのよ。そこを目指していることは忘れてはならない。

 まあ脚力だけで考えれば、新田とそういう勝負ができるかも? と思ってること自体が“過信”なのかもしれないし、勘違い甚だしいかもしれないけどね。でもどこを目指しているのかは自分の中で決めておきたい。

準決勝後「新田の勝てる走りでいい」とコメント(撮影:島尻譲)

ゴール後の声に奮い立つ「シンタロウ! 次また頑張れよ」

 全日本選抜決勝のゴール後に「シンタロウ! 次また頑張れよ」と声援が聞こえてきた。優勝したわけでも確定版に乗ったわけでもないのに。4着のオレは車券にも絡めていないから、車券を取ったお客さんが褒めてくれたってわけじゃない。負けて悔しいんだけど、「次また頑張れよ」の声がひとりふたりじゃなくて、なんかそれが純粋に嬉しかった。

 車券関係なしにダイレクトにオレそのものを応援してくれてる人がいるって実感、全身にやる気がみなぎる想いだったわ。これからもみなさんの応援のおかげで、トレーニングも頑張れる。「シンタロウ! 次また頑張れよ」と声をかけてくれたみなさん、次また頑張るよ。そして“勝つ姿”をみなさんに届けたい。それを見て欲しい。

「ファンの声がしっかり届いてきた」と語る慎太郎選手、ゴール後に笑顔を見せることも(撮影:島尻譲)

5年かけて作り上げた自分

 GI戦が終わった時点で、今年は20走。ここまで記念(GIII)で1回、全日本選抜で1回、確定板を逃した。でもそれ以外の9割は確定板に乗っている。図に乗るってわけではなく、その事実には自信を持っても良いのかな、と思い始めてる。

 なぜかと言えば表面的な数字ではなく「厳しい展開でも3着までに突っ込めてる」ってことだから。勝って当たり前のレースで勝つのは当然として、展開向かずの厳しいレースでも確定板を捉えることは大事。それが今年はできている気がする。そしてその要因も把握している。

 実は5年前、オレはすべての練習方法を刷新した。ここにきてやっと、その練習方法が“モノにできた”って感覚がある。5年かけてやってきたことが実を結んでいる。練習を変えることで体にも変化があったし、疲れが抜けなかったりもした。

 去年までは「練習のせいなのか、年齢によるものなのか」が判断できない“よくわからない疲れ”があったんだけど、今年は自分の状態がよく理解できてる。体の面でしっかり今の自分に向き合えている。

全日本選抜決勝前まで19走うち18走が確定板、3連対率は驚異の94.7%(撮影:島尻譲)

ろうそくの火は消える少し前に勢いを増す

 それとやっぱり気持ちの面がデカい。ろうそくの火が消える前ってボワッと大きく燃え上がるでしょう? オレの競輪人生は、今その時期にあると思う。S級S班として最上の舞台でレースを走れる時間は限りがある。それだけはわかってる。余命宣告されてるようなもんよ(笑)。

 一走一走、一踏み一踏みの大切さが若い時と全然違う。“無駄にしたくない”って気持ちの入り方が全然違う。まだ時間に余裕を感じていた若い時は「オレはまだまだ強くなれる」っていう気持ちだった。今は「この一瞬しかない」って気持ちしかない。

 5年という期間を費やして作ってきた体と気持ちがやっと噛み合ってきた。すごく時間がかかったけど、S級S班の佐藤慎太郎としての火が消える前、これから派手に燃やしていく。ボワーッとギラギラに行くからよ。

読者に向ける慎太郎のアンサー

 今月は読者さんから寄せられてる質問にもアンサーを出したい。日ごろの感謝を込めて、ここに全力で筆を走らせる! ガハハ!

質問に答えるときも100%の力を出し切る男(撮影:島尻譲)

ーースマホの電源切って不都合は発生しないの?

 しない! 21時にスマホの電源は切る!

ーーライバル視している選手は誰ですか? やっぱり他のS級S班の選手を特別視している?

 オレの場合、他人を意識するよりも『自分を高めることに集中した方が簡単』って持論がありまして。なのでライバル視とか特別視とかしないですね。“オレのライバルはオレ自身”みたいなのを地で行ってます。それにS級S班なんて別格の世界だと思っていて、オレなんて付録みたいな存在。ライバル視なんて到底できないっすわ(笑)。

 ただ、同年代の追い込み選手の活躍に刺激をもらうことはありますね。小倉とか諸橋が活躍してると、やる気スイッチが入るというか。でもこれはライバル視というか、競輪選手じゃなくて他の仕事をしている人もそうじゃないかな? 自分と同じ職種の人間には目がいくような感じかと。S級S班やナショナルチームよりも、同年代の追い込み選手の方に目線が行きますね。

ーー慎太郎さんの頑張る姿に力をもらっています。頑張り続ける思考やモチベーションはどこから来るのでしょう? 自然に湧いているものなのでしょうか?

 特別なことは何もしてないけど、『自分が成長していく過程を楽しむ』って考えを大事にしてます。自分が強くなっていく姿を自分で横から見ているようなイメージというか。幸い、競輪選手として強くなっている実感が続いてるので、苦しいトレーニングも楽しんでいるし、限界を知りたい気持ちは自然に沸いてきますね。

 だけど、それ以上に、人からもらうモチベーションが大きいんですよ。応援してくれる人に勝つ姿を見せたいという気持ちが何よりも自分を突き動かすパワーになってます。自分のためだけじゃなくて、ましてやお金でもない。応援してくれる人たちを沸かせたい、喜ばせたいって願望がすべての源です。だから頑張る姿よりも勝つ姿、結果を出したいね。

 ある開催で「競輪選手どこまでやるよ?」って冗談交じりに先輩と話したんだけど、「レースを見て喜んでくれる人がいるから走るんや」って言ってましたね。オレも自分の出世がどうの成績がどうのってことよりも、観てくれるファンの方への意識が120%です。それがプロフェッショナルの境地じゃないかな、とも思います。

 それじゃあ、今月はこの辺で! 次回は宇都宮ウィナーズカップで燃えたぎる!

「トレーニング、気持ち、応援の声」の三要素が噛み合っている今、ろうそくの火はさらに勢いを増す(撮影:島尻譲)

【公式HP・SNSはコチラ】
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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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