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すっぴんガールズに恋しました!

【山口真未】デビュー時から存在感は抜群! 元陸上競技のエースはガールズケイリンのスターへ駆け上がる

アプリ限定 2022/02/26 (土) 12:00 17

 ⽇々熱い戦いを繰り広げているガールズケイリンの選⼿たち。このコラムではガールズ選⼿の素顔に迫り、競輪記者歴12年の松本直記者がその魅⼒を紹介していきます。2⽉のピックアップ選⼿は120期の“最年長レーサー”。

 2021年5月にデビューした「山口真未 (やまぐち・まみ)選手」です! 学生時代は陸上競技で輝かしい実績を残し、怪我が原因で自転車競技へ転向したという山口選手。これまでの競技人生とプロデビューしてからの1年間に迫ります。

SNSはファンに向け、自身のレースに関する投稿をマメにしている山口。前向きで好感が持てる。

陸上競技のエース! 一生陸上に関わると思っていた…

 山口真未は静岡支部の所属だが、生まれは茨城県古河市。古河市は茨城の小京都と言われ、歴史遺産が数多く残されている町だ。山口はこの地で活発に育ち、身体能力の高さは陸上競技で開花したようだ。中学3年生の時、参加した2006年の全日本中学校陸上競技選手権大会・四種競技(200メートル走、100メートルハードル、砲丸投げ、走り高跳び)で6位入賞。高校も県内有数の陸上競技強豪校の取手聖徳へ進学。寮生活で陸上競技に打ち込んだ。

中学時代、陸上競技中の山口(本人提供)

 高校時代の夢は「体育教師」、陸上を続ける前提で考えていた。大学は教育学部のある国立の茨城大へ進学。大学時代も陸上競技に打ち込み2011、2012年の日本学生陸上競技対校選手権大会(インカレ)七種競技(100メートルハードル、走り高跳び、砲丸投げ、200メートル走、走り幅跳び、やり投げ、800メートル走)で2年連続8位に入賞。大学4年の日本グランプリでも8位と結果を残した。

大転機は試合中の怪我

 しかし大学最後の大会で、山口に大転機が訪れる。

不運にも左アキレス腱の全断裂の大けがを負ってしまったのだ。手術は成功したが、その後は思い通りの結果を出すことができず、陸上競技生活を続けることが困難になってしまった。けがの後遺症で悩んでいた頃、陸上競技以外への転向のトライアウト(テスト)を受けることになった。

 適性結果はスケルトン、7人制ラグビー、自転車競技の3種類を勧められた。その中で最初に取り組んだのは冬季五輪種目にもなっているスケルトン、うつ伏せでそりに乗り猛スピードで駆け抜ける競技だ。しかしこれは山口には合わず、半年取り組んだがリタイア。

大学時代、アキレス腱損傷し治療中の山口(本人提供)

ロードバイクからトラック競技、そして競輪への道のり

 次に手を付けたのが自転車競技(長距離)だった。実家に近い千葉で1年間ロードに取り組んだ。しかし打ち込んでいくうちに、トラック競技の方への関心が高まり、ロードで世話になった人の繋がりで日本サイクルスポーツセンターの職員になった。職員の業務をこなしながら空いた時間でトラック競技に打ち込むと、秘めた才能が一気に開花した。

 2018年9月に行われた全日本自転車競技選手権大会の500メートルタイムトライアルで優勝。ナショナルチームの強化B指定選手に選ばれた。「陸上競技はケガで諦めるしかなかった」「夢のオリンピック挑戦への権利をつかみ取ったが現実は厳しかった」と振り返る。

「ナショナルチームの強化B指定の選手に選ばれたことは嬉しかったですが、強化A指定の(小林)優香ちゃん、(太田)りゆちゃんとの力の差を感じた。東京五輪を目指していきたい気持ちはあったけれど、厳しいと感じましたね。自転車競技は好きだったので、強くなるための近道だと思い、日本競輪選手養成所に入ってガールズケイリン選手を目指すことを決めました」。

ハタチ前後が多い120期はかしまし過ぎた!?

120期の3人。高木香帆、山口真未、蛯原 杏奈

 2020年5月、日本競輪選手養成所120期生として入所。戸惑ったことは自分が最年長(※当時29歳)だったことだと笑いながら話してくれた。

「120期は高卒で現役入学の子が多く、その1つ上の20歳組も多かったですね。自分の下が岩田みゆき、吉川美穂。若い子が多くてにぎやかに過ごせました。養成所生活はコロナ禍で外出も全くできなくて大変なことも多かったけど、同期21人で練習できた経験は得難いものでした」。

 コロナ禍で外出もできない中の養成所生活だったが、訓練に打ち込み、卒業記念レースは決勝3着。在所成績は4位という好成績。

デビュー当時から存在感はバツグン

 ガールズケイリン9期の118期から始まったルーキーシリーズ。山口はルーキーシリーズを3場所走り、3場所とも決勝進出。6月の和歌山では嬉しい優勝を掴みとった。

 本デビューは7月伊東。地元戦でデビューを迎えるのは期待の表れ。山口自身も予選2走目で1着と結果を残した。先輩相手にいきなり優勝とはならなかったが、存在感を見せた3日間だった。

デビュー戦から存在感を見せつけていた山口

「ルーキーシリーズは同期同士の戦い。7月の本デビュー後は先輩との戦い。養成所とは全然違う流れに戸惑ったことも多かった。レースの展開、相手選手の動きを見極めるのが大変でした!」と語る。

 デビュー後は得意のスタートとダッシュ力を生かした攻めで車券に貢献。初優勝もそろそろと思ったころ、試練はやってきた。

11月の静岡、予選1でゴールを3着で通過後に落車をしてしまったのだ。
「静岡の落車は自分のミス。仕掛けるタイミングのミス。流れを見過ぎてしまったから位置が悪くなった。その結果ゴール後に落車。けがは大したことがなかったし、逆に気が引き締まりましたけどね」。

 落車後は1場所休んで、11月末のいわき平から戦列に復帰、決勝は2着。12月の取手は決勝3着と優勝まであと一歩のところまで前進した。

練習仲間の久米詩とロードトレーニング中に撮影(本人提供)

初のコレクショントライアルで経験値を積んだ

 年が明けて2場所目の宇都宮は、初のコレクショントライアル参戦だった。結果は5・5・1着と勝ち上がることはできなかったが、収穫の多いシリーズだったと振り返る。

「宇都宮のトライアルはいい経験になりました。ガールズケイリンのトップレベルが集まるレースは、仕掛けるタイミングがちょっと遅れるだけで致命傷になります。予選2走は悔しかったけど(5着)、最終日はその悔しい気持ちが勝ちにつながったと思います。今まではダッシュを生かしたカマシが勝ちパターンだったけれど、最終日の一般戦はペース駆けに持ち込んで逃げ切ることができたんです。構えているよりも、前に出て戦う方がチャンスは大きいと気づきました」。

左から久米詩、師匠の落合達彦、山口、鈴木奈央(本人提供)

 得意のダッシュを生かすだけでなく、ペースで駆けて押し切る自信を付けると、結果はすぐに付いてきた。

 宇都宮直後の大宮で初優勝達成。決まり手は差し。久米詩のまくりに乗って追い込みでの勝利だったが、戦法の幅が広がった証だ。

デビューから1年、山口の今年の目標とは?

 デビュー2期目となる今期の目標は明確だ。
「今期は積極的なレースを心掛けていきたい。宇都宮できっかけをつかめたし、6月までは積極策で戦っていきたい。次の期は戦法を使い分けて勝負していきたい。2年目、3年目に結果が付いてくればいいと思うので、今は賞金や競走得点のことを意識せず、目の前のレースで力を出し切ることをやっていきたい」と冷静に語る。

目標とする選手は奥井迪。2人にはパワフルな自力という共通点がある

 練習は静岡・伊豆のサイクルスポーツセンターで師匠(落合達彦)やガールズケイリンの先輩・鈴木奈央、久米詩と日々乗り込んでいるそうだ。サイクルスポーツセンターに冬季移動している渡辺一成(G1・3勝、北京・ロンドン・リオデジャネイロ、五輪3回出場)、川口大志(80期・引退)にもアドバイスをもらい、ぐんぐん成長している。

 陸上競技を断念する形で始まったガールズケイリン人生だが、山口は陸上時代よりも更に大きな夢をかなえるため一歩ずつ前へ進み、全力でペダルをこぎ続ける。

山口の持ち味である、ダイナミックな走りをガールズグランプリでも見たい!!

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すっぴんガールズに恋しました!

松本直

千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。

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