2022/02/03 (木) 12:00 5
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は静岡競輪「たちあおい賞争奪戦(GIII)」に出場する山崎芳仁選手を解説する。
⚫︎山崎芳仁
公式プロフィールでは身長174cm、体重は85kg。データ上はかなりのガッチリ体型だが、実際は数字ほど大きく見えない。言うなれば「身が詰まっている」という事。アスリートとしては理想型だ。
そもそも身長体重が同じでも、見た目の大きさは選手によって大きく異なる。体脂肪と筋肉の比率、骨の太さ、関節の大小など、多くの要素が左右する。
ただ、風圧が1番の敵となる競輪選手にとって、体積が小さい方が圧倒的有利である。当たり前のことだ。空気抵抗が少ない以外にも、利点は山ほどある。
山崎選手は僕の一歳年下の同世代(42歳)なのだが、いまだに自力基本で110点前後をキープ。間違いなく我々同世代の中ではトップランナーであり、時代を切り開いてきた。
山崎選手の印象的な話で、ギア比率が3.57〜3.64が主流の時代、ギア比率を4.00にしていたエピソードがある。要するに「超重たいが踏みこなせば超伸びる」仕様だ。
山崎選手がそのギア比を使い出した当初、我々ライバル達は懐疑的だった。いまだかつてそんな大ギアを踏みこなせたレーサーはいなかったから、当たり前だ。
それが蓋を開けてみるとどうだ?
彼が積み重ねたビッグタイトルは優に10回を超えGI勝利は9回。付いた異名は「4回転モンスター」。緻密な位置取りであったり、横(競り)は好まなかったが、逆にそれが怖かった。
間違いなく7番手から勢いをつけ、とてつもないスピードで捲くってくるからだ。何度、彼の高速捲くりに屈したか…。苦い思い出ばかりが蘇る。
時代を作った彼も42歳になった。ナショナルチームを中心とするスピードレーサーや、110期以降のニュージェネレーション達には、さすがにスピード負けする姿が多くなってきた。
しかし彼には、グランドスラム(全冠制覇)の偉業が目の前に迫っている。残された栄冠はダービー(全日本選手権)のみだ。
実際は困難な6日間が予測されるが、自然と応援してしまう。それもそのはず。彼は我々世代のヒーローなのだから。
余談だが、山ちゃん(山崎選手)が4.00の大ギアで旋風を巻き起こす前にも、実は4.00を踏んでいた選手が居た。
僕の同期、親友の濱田浩司(愛媛81期)だ。しかしながらまったく結果が出せなかった…。まったくもってだ。
それから山ちゃんが4.00のギアを乗りこなし、タイトルを量産。山崎選手が大きな見出しになっている新聞を見ながら、「しんぺー…本当は俺の方が早いけん…」と、寂しそうに呟いた彼の後ろ姿を忘れはしない。
するとしばらくした頃、ある新聞の超小さいコラムで、ハマちゃんが取り上げられていた。
見てみるとそこには「4回転ハムスター」と書かれていた。
…………………………。
良かったね!ハマちゃん!異名付いたよ!
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
斡旋された自力SS級は平原康多選手、郡司浩平選手、清水裕人選手の3名。
その中でも平原選手は前回4連勝と波に乗っている。しかし、これらの勝利はこれは全てマーク戦からの戦歴だ。今開催は、関東勢の勢力不足感があり、自力で動くレースも多くなりそうだ。
そんな中、安定してハイレベルなレースを続けているのが郡司選手である。今節は、同地区の深谷知広選手もいて、南関東勢がシリーズを引っ張りそうな予感だ。
若手機動力タイプが少なく、あっと驚く勝ち上がりなどは見られそうにない。ここは強者達がしっかりとレースを引っ張るだろう。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。