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前田睦生の感情移入

【ひろしまピースカップ】松浦悠士、KEIRINグランプリ前に“走る”と決めたファンへの思い

2021/12/08 (水) 12:00 14

松浦悠士は広島の親分

師走を駆け抜ける広島の親分

 待ちに待った時が、来た。
 広島に所属する選手としての二律背反。むせび泣く自己矛盾が、ここにアウフヘーベンされる。松浦悠士(31歳・広島=98期)が、9〜12日の4日間、広島競輪場で開催される開設69周年記念「ひろしまピースカップ(GIII)」を戦い抜く。例年より早めとはいえ、KEIRINグランプリを直後に控える身と言っていい。

「親分、こ、ここは、あっしらに任せてつかぁさい! 」

 大事な身に何かあったら取り返しがつかない。周りの人間はそう思うだろう。

 しかし、決断したのは松浦。「走ります」。鉄火場に駒が躍る、白い布の上。その決意は、降り積もる雪をすべて溶かしていく。取り囲むすべての人たちの心に、火をともす。

 KEIRINグランプリ出場が決まってしまうと、日程的に広島記念は走れない…。そんな思いをした後の、今シリーズがある。

どうしても地元ファンの前で

松浦悠士は広島カープも大好き

  3月に開催された玉野記念(瀬戸の王子杯争奪戦)の代替開催は無観客。2018年12月に悲願の優勝。翌年4月にFIを走って以来の広島競輪の舞台。

 広島記念がKEIRINグランプリ直前にあることで、公務欠場となるケースがあった。しかし、走りたい。そしてコロナ禍…。長いこと広島のファンの前で走れてない。松浦の苦しみは、どこかにたまっていた。

 胸に光る金バッジ…ではなく、赤く輝くS班のパンツをまとっての戦いだ。現地のファンこそ、はっきり書くが、松浦がともすれば“中途半端”と言われるような走りをしていた時代もあった。その男が、今やピカピカの堂々たる格調高い選手になった。

「おう、ワシや! 」「お勤め、ご苦労さんでした! 」

 というわけではないだろうが、ともに過ごすことができなかった時間をやっと一緒にできる。松浦の底知れぬ笑顔が、すでに浮かんでくる。

しかし、鬼になる

「弾はまだ…」。残るのです

 そんな舞台だが、松浦に求められているのは完全優勝。4日間、勝つことによってこそ、今回の出走の意味は成立する。本人もそれを知り尽くしている中でのシリーズ。刮目して、できれば現地で見てほしい。

 燃え尽きるほどの4日間になると思う。しかし、松浦には優勝インタビューの最後にこう言ってほしい。
「弾(たま)はまだ、残っとるがよ…」。最後の一発はKEIRINグランプリのため。広島で打ち尽くした拳銃には、おそらく何も残っていないだろう。

 だがその弾倉には、ファンの声と思いが詰まる。詰め込まれる。作り上げた物理的な弾ではない。広島の象徴としての弾、一発。その弾を生み出すための4日間。松浦に送られる声援の一つひとつが、彼の血液となる。

 ぜひ、心からのご声援を…。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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