2021/11/27 (土) 12:00 13
当コラムを依頼され、昨年の12月に書き始めてからもうすぐ1年になる。基本路線は、競輪を知らない人に“競輪ってどんなもの”を伝える形…と考えてきたが、客観的また解説的に書くのはやはり少なくなってしまった。
どこかに意地があって、誰が書いても同じ、というようなコラムにはしたくなかった。まあ評判が悪ければ、私みたいなもんに依頼したnetkeirinが悪いんよ、という気持ちを胸に少々開き直って書いてきた。若干、ボロボロになりながら。ここで一度、原点に返って、素朴に思われることをKEIRINグランプリ前に書いてみたい。
現状は、好き勝手に書かせてもらっているnetkeirinのみなさまに感謝しつつ、「私は私です」としか言いようがない。読者のみなさまには、東スポの記者ってこんな感じだと思ってもらえればありがたい。
自由なんですよ。責任の上に成立する自由ではあるんですけどね。それは実は、結構な責任ですけど…。
「KEIRINグランプリ2021」を前にみんなが思うことがあるだろう。
「誰が勝つの? 」。こう返させてもらう。「それを考えるのが楽しいのが、競輪なんです」。1年間戦って、どれほどの苦しい思いをしたのか、想像を超えるような争いの末に出揃った9人。どんなレースになるのか…を思うだけでも興奮できる。競輪。無論、この1年だけでなく、その前がある。先もある。
ラインって何? 9人で争うレースなので、全員が1人ずつ戦っていると、誰かの動きを利用した方が勝ちにつながると、創生期から“バレ”ていた。風の動き、見えない空気、風圧との戦いがすご過ぎる。そこからある程度、露骨に並ぶことがラインにつながってきた。勝ち上がり制度(3着まで)などもあり、例えば3人で最後の最後まではまとまっていた方がいいというのは、最低限の算数を覚えるように覚えていい。
ラインの面白いところは、例えば複数でやるチームスポーツで、チームメイトがしょうもないプレーばかりしていたら、頭にきますよね。信頼を失いますよね。自分のことばっかり考えていたりしたら。
その逆で、自分には及ばないような熱い、時に冷静な、または涙が出るような献身的なプレーをする仲間がいたら…。心が動きますよね。数え切れないほどの競輪選手たちが心を震わせてきた。競輪はそんな歴史がある。
誰が、勝つか。その思いは9人に等しくない。その関係性が、推理を生む。究極の心理戦。ファンにとっては生身であり、紙面の上にいる文字上の選手たちであり、Webで動画やネットを見て、声を聞いて、表情を見て、いろんな存在の仕方をしていると思う。取材記者は、そうした姿をよりファンに近づけられれば、という目的で存在している。
レースを見るだけではわからないこともある。このコラムであったり、日々の原稿であったり、インタビュー動画だったり、伝える仕事も重要だと思っている。「こう見てほしい」という主観が強いのが私。世の中にはいろんな記事、仕事があるので、このKEIRINグランプリを前にいろんなものに触れてほしいと思う。
「シンタロウ(佐藤慎太郎、45歳・福島=78期)は郡司(浩平、31歳・神奈川=99期)に付けるの? 守澤(太志、35歳・秋田=96期)が番手じゃないの? 古性(優作、30歳・大阪=100期)にはいかないの? 」。
色んな疑問を持って、色々と調べてほしい。あふれ過ぎているかもしれないものが、現在は目の前にある。競輪祭の後、KEIRINグランプリまでの1ヶ月間はファンにとって特別な時間。どうぞその時間を楽しんでください。
結局、漠然と自分の手でつかめ、自分のスタイル! で書いてしまうが、それがこのコラムです。
ただ、1つだけ今回のKEIRINグランプリの真実を書くとすれば「平原に勝ってほしい」という思いが充満したレースになるということだ。
平原康多(39歳・埼玉=87期)。一年前に帰るが、この男について、レース前にたくさんのことを知って、レースを見てほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。