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前田睦生の感情移入

【泗水杯争奪戦】“ムカデ男”柴崎淳と“忍者”坂口晃輔が主役の座を狙う

2021/11/05 (金) 12:00 8

2008年大会優勝直後の柴崎淳

1000年に一度の悲劇

 四日市競輪場で11月6日からナイター「泗水杯争奪戦(GIII)」が行われる。主役は当然、浅井康太(37歳・三重=90期)だ。S班は郡司浩平(31歳・神奈川=99期)と和田健太郎(40歳・千葉=87期)に佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)の3人。しかし、いわずもがな浅井はS班相当の選手。地元であれば、主役に違いない。

 今回は少し、違う方面から主役の座を狙う男がいる。“ムカデ男”…。

 2008年、2009年大会を連覇。2019年にも優勝を果たしている柴崎淳(35歳・三重=91期)。浅井よりも出世は早かったが、待望のGIまでは届いていない。ちょっくら、運がない男。

 10月14日、悲劇は突然訪れた。前橋のナイター「ドームスーパーナイトレース(GIII)」の初日。特選を前にアップ中だった。

「痛って〜!ムカデに刺された!」。

取材のためにエレベーターで1階に降り、扉が開いた瞬間、苦痛に顔をゆがめた柴崎がいた。

選手生活約40年の萩原操「あらへんよ(笑)」

レジェンド・萩原操

 シューズの中にムカデがいて、刺されたという。「ドームっすよ」。確かに近代的な前橋のドームでムカデとは、誰も想像できない。右足の親指付近は腫れ上がり、レース直前の欠場となった。診断書には「右足親指ムカデ咬傷」と書いてあった。

 病院に向かう時、同県の大先輩・萩原操(58歳・三重=51期)が付き添っていた。デビューは1983年9月、あらゆる歴史を経験している。「ムカデに刺されて欠場って、あるんですか? 」と聞いてみたら「あらへんよ(笑)」と苦笑していた。

 すさまじく痛そうで、開催にも大きな影響の出る事故。笑ってはいけない、笑えないレベルのものだったが、どうにも笑うしかないほどだった。「ツイてない」とこぼして去っていったあっちゃんの背中はすすけていた。。

好プレーで取り上げたかったが…

坂口晃輔は10年前と変わらない風貌

 その柴崎は万全ではないと思うが、ここまで落ちたら上がるしかない。一気に主役に返り咲くのを期待するしかない。また浅井、柴崎、という偉大な2人の背を追う156センチの男にも注目しよう。坂口晃輔(33歳・三重=95期)…忍者だ。

 小柄な体で忍び込む。やや影の存在のイメージもあるが、もはやマーク屋として確立されている。

 弥彦で開催された寬仁親王牌の最終日。谷口遼平(27歳・三重=103期)に前を任せ、3着だった。が、このレース好プレーのコーナーで取り上げようか迷った素晴らしい走りだった。着順そのものが…で回避してしまったが、取り上げた方が良かったのかなと思っている。

 打鐘で谷口が先頭に立ち、カマしてくる中川誠一郎(42歳・熊本=85期)を1角で大きくブロック。中川は止まらず、後ろの園田匠(40歳・福岡=87期)を2角でブロック。内に入ってきた太田竜馬(25歳・徳島=109期)を締め込む。中川が押し切り、援護を受けた谷口が2着だった。

 宿口陽一(37歳・埼玉=91期)の好プレーで取り上げた時も感じたが、坂口は本物。なかなか手が届かない記念優勝があってもおかしくない。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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