2021/10/28 (木) 12:00 6
加藤慎平の「筋肉診断」。今回は防府競輪「周防国府杯争奪戦(GIII)」に出場する町田太我選手を解説する。
⚫︎町田太我
身長181cm、体重は79kgと超大型新人の名に相応しい体型を持っている。現状、体の線は細いものの、逆に言えばまだまだ伸び代がある。弱冠21歳と、まだまだデカくなる可能性を秘めており、彼の未来は非常に明るい。
高身長の選手は手足が長いか、胴が長いタイプの2種類に別れるが、町田選手は前者だ。長い四肢に付随できるしなやかな筋肉量も多く、遺伝的素質に恵まれている。骨格と言うのは努力ではどうにもならないので、こればかりは神から与えられたギフトだ。
町田選手のストロングポイントは大きく2点ある。1つは高いトップスピード、もう1つは誰よりも長くモガキ切る事が出来るところだ。打鐘(ジャン)から全力でガマシを打ち、隊列を1本棒にしたままゴールまで逃げ込みを図る戦法で、ここまで競走得点を上げてきた。
これは実に理想的な戦術だ。ライバル選手にも「町田とモガキ合ってしまえば自分が潰れてしまう。町田の先行には付き合ってられない」という先入観やプレッシャーを与えているのだ。現状、この戦法を正攻法から潰す事が出来るのは脇本雄太選手ぐらいだ。それほどまでに、彼の強さは傑出している。
言うなれば、対戦前から相手よりアドバンテージを得ている。実に分かりやすく、ライバル選手の心をへし折りながら、彼は上り詰めている段階だ。
町田選手は同期の山口拳矢選手と比べられがちだ。各種メディアでは出世争いなどが取り沙汰されるが、本質的にはどうでも良い話題だろう。
まず学年が5つ離れており同世代では無い。野球でいうと、山口選手が大卒ルーキーで、町田選手は高卒ルーキーといったところだ。山口選手は即戦力を求められているのに対して、町田選手は伸び代と成長力が期待される立場だ。比べる事自体がナンセンスといっても良い。
余談だが、彼の公式プロフィールのニックネーム欄には「ウッディ」と「にしこりけい」と書かれてある。「にしこりけい」とは当然テニスプレイヤーの錦織圭さんの事だ。
町田の特徴的な風貌は確かに両者に似ている。ただ、よく考えてみれば、町田選手のことを「にしこりけい」とは呼ぶのはキツいと思う(苦笑)。100歩譲ってアニメキャラクターの「ウッディ」は呼べるだろうが…。
せめて、「マチこりけい」とか「ニセこりけい」とか考えなかったのだろうか。体格や筋肉など、アスリートにとっての資質溢れる彼に足りない物は少ないが、笑いのセンスがある友人は足りなかったようだ…。
⚫︎本レースで注目すべき選手は…?
松浦悠士、清水裕友、町田太我選手がいる中国勢に死角は無い。4日間、間違いなく人気を集めるだろうが、対抗しうる選手も数名居る。
まずは新田祐大選手だろう。爆発的な捲くりは輪界随一。33バンクと小回りなだけに仕掛け所がシビアになるが、スピード能力は互角と言える。
そして何と言っても吉田拓矢選手だろう。先日行われた寛仁親王杯(GI)で決勝戦に進出し、見せ場たっぷりのレースを演出した。彼のストロングポイントは、トップクラスの縦足に加え、横の動きにも対応出来る柔軟性。マークする諸橋愛選手との総合力は中国ラインにとっても驚異となるだろう。
加藤慎平
Kato Shimpei
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々な媒体で解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。自他ともに認める筋トレマニアであり、所有するトレーニング施設では競輪選手をはじめとするアスリートのパーソナルトレーニングを務める。