2021/10/24 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は弥彦競輪場で開催されている寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントの決勝レース展望です。
今年の【寛仁親王牌】は高配当が続出しています。それは先に行われた、全プロトラック競技に出場した選手から選抜されることとの兼ね合いもあります。
全プロトラック競技の出場選手は自力型の若い選手が多く、レースごとにラインも多く作られます。また、新人戦の様に次々と発進していくので流れも速くなりがちです。
展開を考えていても、その通りには行かないほどに出入りが激しく、それでいながら弥彦バンクは直線も長いので、ゴール前は激戦となっているのでしょう。
準決勝でも5万車券が飛び出しましたが、その中でも新山選手や菅田選手など、北日本の選手たちの調子の良さが目立っていました。
決勝の並びは好調選手の多い北日本ラインが、新山選手-新田選手-菅田選手-大槻選手が4車で並び、関東ラインが吉田選手-平原選手-諸橋選手。単騎は山田選手、野原選手となりますが、実質的に二分戦と見ていいでしょう。
この並びで先行するのは新山選手だと思います。番手を回る新田選手ですが、【共同通信社杯】の決勝では、新山選手が先行したにもかかわらず、動き出しが遅れたことで、優勝した山口(拳)選手の捲りを許すことになりました。
今回はその時のリベンジを果たす舞台でもあり、新山選手が前回と同様にしっかりと駆けてくれたのなら、番手から自分のタイミングで動き出していくと思います。
しかも新山選手だけでなく、新田選手もスタートが物凄く速いので、車番が悪くとも、北日本ラインで前受けができるポジションを取っていけるはず。そうなると、新山選手の突っ張り先行も考えられそうです。
一方、関東ラインの前を任された吉田選手ですが、最近は地元に若い選手が出てきたからか、番手を回ることも多くなってきました。この決勝でも捨て身の先行を見せることは考えづらいと思います。
しかも、踏み出しのスピードや持久力は、新山選手の方が上ですし、もし、吉田選手が北日本ラインの横で粘ったとしても、新田選手が動き出していったのならば、付いて行けるのは難しいでしょう。
関東ラインの番手を回る平原選手、そして地元の意地を見せたい諸橋選手ですが、それも、吉田選手の仕掛けと言えそうです。むしろ、北日本ラインの3番手を回る菅田選手にチャンスがあると見ています。
菅田選手は高い能力はありながらも、一時はスランプに陥っていました。ただ、今大会の走りにも証明されているように、かなり調子が上がってきた感があります。
捲っていった時のスピードも速く、準決勝でも新田選手の先行とも言っていいホームからのカマシを、ゴール直前で抜き去っていきました。この決勝でも直線の長い弥彦のバンクを生かして、準決勝の再現が見られるかもしれません。
単騎での山田選手も、車番的には北日本ラインの後ろからレースを進めていけるはず。新田選手の踏み出しにタイミングを合わせていけるようなら、充分に車券に絡んできそうです。
大荒れの【寛仁親王牌】ですが、この決勝は北日本ラインが主導権を握った結果、固く収まると見ています。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。