2021/10/17 (日) 15:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は前橋競輪場で開催されているドームスーパーナイトレースの決勝レース展望です。
【ドームスーパーナイトレース】が行われている前橋競輪場は屋内特有の軽さがある一方で、小回りの33バンクらしく、各選手の仕掛けが早くなる傾向があります。
また、スタートの位置が重要だったり、最終バックで後方に置かれると巻き返すのが難しくなるなど、展開次第では競走得点の上位選手でも油断ならないバンクです。
しかも、今大会はS級S班の選手が軒並み【寛仁親王牌】に参加していることもあり、誰が勝ってもおかしくないメンバー構成となりました。
その中で頭一つ抜けている存在が、【高松宮記念杯競輪】を優勝した宿口選手です。競走得点も抜けていますし、タイトルを取ったからか、その後のレースぶりにも余裕が見られるようになりました。
決勝のメンバーが決まった時、最初は後輩でもある阿部選手に前を任せるのではと思っていました。それでも自分から前を走ると言い出したのは、3番手の武藤選手も引き連れて、決勝では先行していくという気持ちの表れなのではと思います。
他に先行しそうな選手が、準決勝と同様に久米選手、友定選手とラインを形成する山田選手です。準決勝でも先行しながら上がりタイムは9秒7と、スピードに乗った走りを見せていました。
ただ、本人もコメントで話していたように、抑え先行は苦手なようなので、決勝でも前受けをしてから一度引いて、そこから仕掛けていくのではと見ています。
もし、山田選手に先行されてしまうと、単騎の3人も山田選手-久米選手-友定選手の後ろを選択していくはずですので、宿口選手は7番手からのレースを強いられることにもなります。そうなると、いくら宿口選手でも厳しいと思いますし、ここは山田選手よりも早めに動いてくると思います。
この展開となった時に、優勝に近づくのが宿口選手の番手を回る阿部選手です。今大会は3日間を通して1着で来ているように好調ですし、タイミングを見て宿口選手の番手から発進。その後ろで武藤選手が露払いをするようなレースになるのではないでしょうか。
スタートを山田選手が取ったとしても、宿口選手は1番車の利を生かして、道中は4、5番手からレースを進めていくはずです。そこから抑え先行に入ったのならば、単騎の選手は全員が埼玉ラインの後ろを付いていくはず。この展開となると、逆に山田選手が苦しくなります。
しかも、小回りの33バンクでコースも軽いとなれば、後輩2人のために早めに仕掛けたとしても、宿口選手ならそのまま残してしまうことも考えられます。番手の阿部選手と裏表で車券を狙いたくなりますが、山田選手が先行していく展開も考慮して、後ろを回る久米選手の組み合わせも穴狙いとして抑えておくべきでしょう。
単騎の3人で注目しているのは、2番車に入ったことで、埼玉ラインの後ろでレースを進められそうな齋藤選手です。準決勝でもベテランらしい落ち着いた捌きを見せていましたし、この決勝でも三連単の相手として車券に入れておきたいところです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。