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前田睦生の感情移入

【湘南ダービー】湘南競輪純愛組 ヨーヘーとケータロー、そしてコーヘー

2021/09/29 (水) 12:00 8

騎馬に担がれる松坂洋平

湘南の若大将

 9月30日〜10月3日の日程で平塚競輪開設71周年記念「湘南ダービー(GIII)」が開催される。
“湘南”…聞くだけでオシャレでさわやかな風が吹き抜ける。「ちゃららちゃんちゃちゃちゃんちゃら、ちゃんちゃちゃ。……。アゥ!!」。サザンオールスターズの希望の轍のイントロが心地よい。

 長い髪をなびかせるような趣だが、この湘南ダービーは修行僧のように過酷な戦いがある。爆裂の魂の風が吹き荒れる。今シリーズは外的要因として台風が近づいていることもあるが、まずは影響が大きく出ないことを祈る。このバンクに吹くのは、“競輪選手の魂の風”だけでいい。

 松坂洋平(39歳・神奈川=89期)と桐山敬太郎(39歳・神奈=88期)が注目になる。S班4人、もちろん郡司浩平(31歳・神奈川=99期)もいるわけだが、郡司は「ハマ(横浜)」の男。もちろん強い責任感を胸に戦うが、洋平と敬太郎はガムシャラに攻める。
「平塚でしょ! 」。やるしかない。フルスロットルだ。

感動の池突入!

池に落とされた松坂洋平

 2011年大会では松坂が優勝している。豪雨の中、怒涛のまくりを決めて1着ゴール。戦前に「優勝したら池に落としますから」という地元選手たちの話もあり、追いかけていたら、みんなで騎馬を組んでバンク内の池へドッボーン!!
落とされて腹でも壊しやしないかと心配したものだが「洋平なら大丈夫」と誰もが口を揃えていたのを思い出す。

 地元勢の喜びようはハンパじゃなかった。それは松坂が神奈川のため、南関のために数え切れないほど貢献していたからでもある。それは桐山にしても同じ。桐山の競輪に対する考え方、覚悟、深さは競輪界でも屈指と言える。

 ラインで戦う、ラインを生かすことが体に、心に沁みついている。ともするとラインを生かす一歩先の走りをするくらいだ。その意味で7車立ては向いてないともいえるので、成績が安定しないことはある。ただ調子自体は取り戻しているので、ぜひ、この9車立ての地元記念で輝いてほしい。

まだまだこれからの男たち

湘南の若大将・桐山敬太郎

 2人は同い年で、神奈川にはこの世代が多い。来年40歳になるわけだが、築いてきた濃い競輪観を共有している。この世代がむき出しの競輪観を武器に、新世代をせめぎ合うのがこれからの見どころの一つと思う。

 昔はある意味、画一的な競輪観が情勢を占めていた。今や、いろんな競輪観が共存し、それぞれの競輪観で戦っていくことが面白味をまた生み出している。

まっすぐ突っ走れ!

まっすぐ生きていく

 松坂が優勝した時のこと。
すでに大ベテランとなっていた先輩記者と一緒に池に落とすシーンを撮影に行った。あまりの豪雨で行かない記者もいたほど。しかし、その先輩はいいシーンを撮ろうと、雨に打たれてもお構いなしだった。無理する年齢じゃないのに…。

 私もズボンがビショビショになったので、記者席に帰ったら脱いで干し、パンツ姿で原稿を書いたのを思い出す。肌寒い5月。帰りに「風邪ひかないようにな」と駅前の居酒屋で焼酎のお湯割りを飲ませてくれた。2人で一升瓶を空けたせいか、気づいたら東京駅で寝ていた。

 棚町文弥さん…。
もう亡くなって4年も経ってしまったが、もっとずっと一緒に競輪を楽しみたかったと何度も何度も思っている。また平塚記念(湘南ダービー)を取材に行けることを、棚町さんに捧げたい。
競輪を愛し、競輪選手を、競輪ファンを愛していた棚町さんの背中をまっすぐ追いかけるよ。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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