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【netkeirin5周年 名作の裏側】平原康多、「最後の言葉」を届けた日 ーー嵐のような反響が映し出した、輪界のプリンスとファンの絆

アプリ限定 2025/12/08 (月) 12:00 8

 2024年5月、悲願のダービー制覇で再びS級S班へ。そのわずか一年後、平原康多はトップのままバンクを降りた。現役時代の連載コラム『平原康多の勝ちペダル』は、輪界のスターが飾らない素顔でつづった戦いの軌跡。ファンの「ありがとう」とともに幕を閉じた物語を、担当編集の言葉から紐解く。

多くのファンに愛された平原康多さんのコラムは、現役引退とともに幕を閉じた(撮影:北山宏一)

ーー人気の高かった平原康多さんの現役時代の連載コラム『平原康多の勝ちペダル』は、「ダービー制覇」「引退報告」「武田豊樹選手との対談」がとりわけ読者からの反響が大きかったです。

 はい、編集を担当した立場としても、どれも大きな印象が残っています。

ーー第45回「悲願だったダービー王に! ずっと見ていてくれたファンの姿に堪えきれなかった涙」は、平原さんの「日本選手権(GI)」制覇から2日後の公開というスピードでした。

 2024年5月5日に平原さんが「日本選手権競輪(GI)」を制して、そこから2日後の夕方に公開というスピード作業でした。現場からよい写真も届いたことで、読者のみなさんにいち早く平原さんの喜びの声をお届けすることができました。

悲願のダービー制覇に目を潤ませる(撮影:北山宏一)

ーー平原さんが涙を浮かべているトップの写真が印象的でした。

 平原さんは、普段涙を見せないイメージがあったので、あえて1枚目にこの写真を選びました。また、カメラマンさんがレース後の様子も追いかけてくれたので、決勝でラインを組んだ武藤龍生選手や吉田拓矢選手の素晴らしい3ショットを入れることができました。

ラインを組んだ武藤龍生選手(オレンジ)、吉田拓矢選手(青)と健闘を称え合う(写真提供:チャリ・ロト)

 この回の最後には、平原さんがバンクでお辞儀をしている写真を選びました。「日本選手権競輪(GI)」という念願のタイトルを取って、いろんな思いが溢れているように見えたんです。コラムでは「ははは」って笑ったり、いつもの穏やかな平原さんが決勝のレースを振り返ってくれていますが、あのお辞儀の姿には、コラムの言葉だけでは伝えきれない思いがにじんでいるように感じました。

強い印象を残したバンクでのお辞儀姿(撮影:北山宏一)

ーー第54回のタイトルは「平原康多が電撃告白、『ダービーを最後に引退します』」とあり、ネットケイリン最大ともいえる反響を呼びました。

 平原さんはこのコラムを出す前、およそ3カ月のあいだ連載をお休みされていました。久しぶりの再開となった当コラムでは、ケガや落車に苦しんできた平原さんが、悩みながらも引退を決断したことを語ってくれました。その思いをまっすぐに読者へ届けたい、そんな気持ちを込めて、このタイトルをつけました。

 突然の引退発表だったこともあり、「これまでコラムを読んでくださっていた読者の方々には、平原さんに届けたい思いがあるのでは」と思い、記事の最後に“平原さんへのメッセージ”を送れるバナーを設置しました。

 公開後は想像以上の反響で、数日間ひっきりなしにメッセージが届いたんです。あまりの多さに、通常業務に支障が出るほどでした(笑)。

引退を表明した平原さんへ、ファンから熱いメッセージが殺到(撮影:北山宏一)

 どのメッセージも「ありがとう」「お疲れさま」といった温かい言葉ばかりで、「こんなにも多くのファンが平原さんに熱い思いを抱いていたんだ」と、改めてその存在の大きさを感じました。

 後日、そのメッセージを平原さんにお渡ししたところ、「ゆっくり読ませてもらいます」と言ってくださって。担当編集者として、ファンと選手をつなぐ役割を果たせたように思います。

ーー特別編では、同じ関東地区のレジェンド・武田豊樹選手との対談を行いました。

 平原さんの現役選手としてのコラム「勝ちペダル」が、引退報告という形で突然終わってしまい、ファンの方々にとっては少し唐突だったかなと思ったんです。せっかく長く続けてくださった連載だったので、「きちんと最終回として届けたい」という気持ちがありました。

特別編では武田豊樹選手(右)と対談(撮影:北山宏一)

 そこで考えたのが、「最後に見たい2人」としての共演企画です。ともに全盛期にタッグを組み、関東の一時代を築いた平原さんと武田選手。コラムの最終回としてふさわしいのは、やはり武田選手しかいないーーそう考え、ゲストとして登場していただくことにしました。

ーー関東のレジェンドが揃った現場の様子は?

 カメラマンさんが昔のレース写真をスライドショーで流してくれて、2人とも懐かしそうに笑っていました。撮影の雰囲気もとても和やかで、現場全体が温かい空気に包まれていました。

過去のレース映像を懐かしそうに見入る2人(撮影:北山宏一)

 そして、2人が並んだ瞬間に「やっぱりこの2人が揃うと、すごいオーラですね!」と驚いているスタッフもいました(笑)。

 取材の中で特に印象に残っているのは、武田選手が平原さんにかけた「よく頑張ったな」という言葉です。「お疲れさま」ではなく「よく頑張った」という言葉を選んだのは、同じ競輪選手として、お互いにしか分からない苦難や葛藤を理解しているからこその言葉だと思いました。

ケガや落車の苦しみとともにあった戦いの軌跡(撮影:北山宏一)

 さらに、武田選手の「逃げたんじゃなくて、やり切ったんだな」という一言も、とても深く胸に残っています。

ーーこの他にも平原さんのコラムで改めて推したい回は?

 武藤龍生選手との対談(2024年12月)もすごく雰囲気が良くて、2人の関係性が伝わる内容になっています。それから、2022年12月のグランプリ前に行った奥井迪選手との対談もぜひ読んでもらいたいです。

ーー平原さんの新しいコラムも始まる予定です。

 来年のスタートを目指して、平原さんと準備を進めています。バンクを降りた平原さんが、これまでとは違う新しい世界を見せてくれると思います。ぜひ楽しみにしていてください!

平原康多さんの新しいコラムをお楽しみに!(撮影:北山宏一)

編集後記

 引退報告のコラム公開後に寄せられた、無数の「ありがとう」と「お疲れさま」。

 それは、平原康多という選手がファンにどれほど深く愛されていたか、そしてファンと選手をつなぐ“言葉の力”を、あらためて感じさせる出来事でした。

 新たに始まるコラムでは、バンクを降りた平原さんがどんな視点で競輪の魅力を伝えてくれるのか。楽しみに待ちたいと思います。

▼コラムを読む
【第45回】悲願だったダービー王に! ずっと見ていてくれたファンの姿に堪えきれなかった涙

【第54回】平原康多が電撃告白、「ダービーを最後に引退します」

【平原康多×武田豊樹(前編)】“関東は1つ”の歴史を動かしたゴールデンタッグーー強く並んだ2本のペダル

【平原康多×武田豊樹(後編)】師弟の絆、未来への想い、そして引退の真実ーー競輪界へ託したバトン


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