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【ドラマチック激闘譜2025】ザ・競輪事件!記者が選ぶ「賛否両論レース」ベスト3

アプリ限定 2025/12/08 (月) 18:00 20

今年も残すところあとわずかーー。グランプリ出場予定選手も決まり、競輪界は一気に年末の雰囲気へ。2025年の激闘を振り返るべく、今回は“現場”を知る競輪記者の記憶に残る“賛否両論”レースをお届けする(企画・構成 netkeirin編集部)。

“賛否両論”レース・ベスト3
町田洋一記者

 フリーの競輪記者として長く現場にいると、皆が賞賛する完璧なレースより、むしろ賛否が割れる“問題作”のほうが、なぜか心に残る。

 ただ、我々の書いた記事が切り抜かれ、悪意ある形でSNSに流れるのを見ると、胸が痛む。レース内容の良し悪しは、選手本人にも厳しく伝えるが、こちらは常に選手ファースト。彼らの葛藤や矜持があるから、我々の仕事が成り立っている。

 年間、現場で生観戦するレースは膨大だ。休みの日も“ギャン中”で、朝のモーニングからデー、ナイター、ミッドまでスマホを叩いているので、見るレース量はさらに増える。そんな中から、あえて「ベスト3」を挙げてみたい。

1 福井競輪「共同通信社杯競輪」決勝

“近畿の伝説の話し合い”第2章

特別競輪で初決勝進出を果たした小森貴大(撮影:北山宏一)

 あの長い話し合いの“続編”となった一戦。発端は、小森貴大が「同県だから寺崎浩平の番手を回りたい」と主張したことだった。しかし近畿は甘い地区ではない。他地区なら回れていたかもしれないが、近畿では通らない。

 寺崎-小森、古性優作-南修二で別線、さらに、点数以上の存在感があり、うるさ型の三谷将太がどっちかの3番手…そんな声も現実的にあったが、結局は近畿5車が、ひとつにまとまった。

 並びが決まったあと、小森が「僕の考えが浅はかでした。すみません」と頭を下げたのが印象的。実際は5番手で良い仕事をしており、評価は少しだけ上がった。

 古性の「正解がないから難しい」という言葉は忘れられない。競輪界の頂点に立つ男でも、人間が走る競輪だから常に葛藤がある。

古性優作は「難しい」と決断を説明した(撮影:北山宏一)

2 岸和田競輪「高松宮記念杯」準決勝

諸橋愛の哲学、本物の勝負師

諸橋愛(写真提供:チャリ・ロト)

 前受けの松井宏佑を、諸橋愛が外から“ふた”した一戦。昔は“カンナ削り”は暗黙の了解で御法度だった。しかし今は、堂々と戦術の一つになっている。

 後に本人に聞くと「これが初めてじゃない。他の強い自力選手にも何度もやっている」と涼しい顔。周囲が何を言おうと動じないーー、これぞ本物の勝負師だ。

 結果は、小林泰正が逃げて末木浩二が1着。松井マークの郡司浩平が2着、諸橋が3着。諸橋にすれば、松井が前受けで突っ張られたら、自分たちにチャンスがないと判断したわけだ。

 このレースはネットでも選手間でも賛否が真っ二つ。“競輪の価値観”そのものを問うレースだった。

3 西武園競輪「ゴールド・ウイング賞」二次予選

突っ張り先行への”禁じ手”はどこなのか

徹底先行で勝負し続ける新山響平(写真提供:チャリ・ロト)

 新山響平-佐藤慎太郎の突っ張り先行に対し、赤板で青木瑞樹が内から抜けようとしたレース。先行選手を攻略するなら“外から叩くのが流儀”。そこから外れた動きに、意見が分かれた形だ。

 突っ張り先行に対して、別線の選手も、あの手この手で揺さぶってくる。それだけ新山の突っ張りは脅威と言う事だ。

 競輪は、技術や脚力だけでは割り切れない。選手の矜持、地区の論理、暗黙の了解、勝負勘、そして時代の変化。そのすべてが、レースの裏側でせめぎ合っている。

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