アプリ限定 2025/12/07 (日) 12:00 25
12月15日に5周年を迎えるnetkeirin。読者の皆様への感謝を込めた記念企画として「3名の敏腕競輪記者による座談会」シリーズをお届け!今回は“2025年の競輪トップ戦線”について徹底討論。12月30日に平塚競輪場で行われる『KEIRINグランプリ2025』を前に、激闘の舞台裏を知る3名によって熱い討論が交わされた。(取材日:11月30日)
松本直記者(デイリースポーツ、以下松本) まずは2025年の振り返りからしていきましょう。G1が6回、G2が3回ありましたが、脇本雄太がG1で2勝、あとはそれぞれ違う選手が勝ってという1年でしたね。
松井律記者(日刊スポーツ、以下松井) 前半が順当、後半が荒れたっていうG1戦線だったね。
前田睦生記者(東京スポーツ、以下前田) 嘉永泰斗と阿部拓真のサプライズがあって、近畿で全部終わり! という感じではなかったから、面白くなって良かった感はありましたね。やっぱり競輪って難しいんだなって感じでしたけど。
松本 最初のG1は脇本が全日本選抜でグランプリスラムを達成。残していたタイトルを獲りましたね。
前田 身体の状態を考えてもラストチャンスじゃないですけど、『絶対に決めて到達する』という目標をワッキーと寺崎中心に近畿勢が決めてね。
松井 総なめすると思ったね。今年の近畿はすごかった。
松本 律さんは(井上)茂徳さんだったり、滝澤(正光)さん、神山(雄一郎)さんがグランドスラムを獲った時代も知っていますからね。新田祐大も獲りましたしね。脇本はグランプリまで含めた全冠制覇というのはどう思いますか?
松井 時代が違うというか…。昔はグランドスラムっていうのは一握りではあるけど、そこまですごいという感じはなかった。今は自転車も変わったし、昔は4つだったG1も増えたし、戦国時代というか…今の方が大変だと思うんだよな。
松本 脇本のグランプリスラムから始まって、次のダービーは眞杉(匠)と吉田(拓矢)のゴール前勝負で、吉田が勝つというレース。
松井 ヨシタクはすごくG1に縁がある選手だと思う。宿口陽一に平原康多とこれまでいっぱい勝たせてきている。今回、阿部拓真(宮城・107期)まで勝たせて。
前田 ラインから優勝者を出すって観点ではやっぱりワッキーが多いけど、実は吉田も結構後ろに獲らせているんですよね。
松井 眞杉の初優勝もヨシタクが暴走を取られた西武園だったしね(2023年西武園オールスター)。そんな行きっぷりのいいイメージはないんだけど、大事なところで勝負してくれる選手という印象はあるよね。
前田 犬伏(湧也)にしてもそうですが、上の方で戦っていると失敗ばかりが目立って、良いところが忘れ去られていくっていうのはありますよね。ちょっとかわいそうですけど。
松井 今年はS級S班の入れ替えがあったじゃない。ドーピングがあって犬伏が繰り上がったり、平原の引退で松浦が繰り上がったり。でもグランプリに乗ってない選手のSSって言われてもピンとこなかった。2人とも最後までSS感がないまま一年終わっちゃったという感じがあるな。
松本 手島慶介さんが亡くなった年に岡部芳幸が繰り上がったとき以来の出来事でしたね。
前田 でも犬伏からすれば経験できない貴重な一年だったでしょうね。去年の競輪祭も怒られてヘコむ一年になるかと思ったら「頑張りなさいよ」っていう感じでSSに繰り上がって…。頑張ったけど、寛仁親王牌で大きな失敗しちゃったし…。
松井 弥彦の親王牌でもあったじゃない。チャンスの時に獲れそうで獲れないのが現状の犬伏なんだよな。
松本 スケール感というかね。
前田 もっと大きくなりなさいということなんでしょうね。名前の犬伏には「大」という漢字が2つも入っているんだから。
松井 オグリューが「あれは猫伏や」なんて言ってたけどね(笑)
前田 どんどん“虎伏”になってくれればいいですけどね…あれ?来年は寅年じゃなくて午年か。“馬伏”はちょっとよくわからないな(笑)
松本 高松宮記念杯競輪は脇本がけれん味のない番手まくりで再び優勝。
松井 いや、あれは強かった。
松本 全日本選抜もそうなんだろうけど、僕はこれが寺崎浩平のオールスターの優勝につながったと思いましたね。あと高松宮記念杯では、古性優作と南修二の恩師・郡山久二さんが亡くなったという出来事がありましたね。
松井 あれは古性も南も辛かっただろうね。
松本 そんな中で次のG1のオールスターで寺崎が優勝。寺崎は競技タイプの選手かと思った時期もあったけど、ここ数年の近畿の引っ張り方というのは…。
松井 それに寺崎は確実に勝ち上がってたじゃない。気がつけば必ず準決勝や決勝に乗っている。すごい選手だよね。
松本 準決勝から決勝までの時間がない中で、オールスターのあの並び(近畿4車連係)が出て、「こう来たか」という。
松井 近畿の中でも割と早い方じゃない?免許皆伝というか…昔の近畿はなかなか順番が回ってこない選手が多くて苦労していたイメージ。
松本 古性の初タイトルも30歳だったから同じくらいかな?
松井 じゃあ今はそのくらいになっているのか。
松本 寺崎は近年で積むスピードが早かったから妥当かなという感じ。それをモノにした寺崎もさすがだなと思うけど。
前田 寺崎は本当に強い。ナショナル勢を含めても、みんなが『寺崎は強い』って言いますしね。
松井 早期卒業っていう看板も重圧になっていただろうけど、全部跳ね除けて開花したよね。
松本 オールスターが終わって大体グランプリのメンバーもわかってきたところで、10月と11月に続けてG1初優出のニュースターたちが一発で獲っちゃいましたね。
前田 オールスター終わったくらいの頃は賞金の面で言うと、深谷知広と新山響平はやっぱり行けるんじゃないかという感じがありましたけど…。
松井 そのあとから急にすごいことになってきたもんね。
松本 まずは寛仁親王牌の嘉永泰斗。(九州生まれの)前田くんにとってはね。
前田 誠ちゃん(中川誠一郎)以来で九州勢からは6年ぶり。嘉永、嘉永と言い続けてはいたものの、九州から優勝者が出るということは半分以上難しいんじゃないかと思ってました。しかも親王牌は1人だったし。嘉永は、ワッキーや寺崎とかと個人レベルで比べるとまだ劣っているとは思う。でも、“G1制覇”を成し遂げたことに関しては漏らしそうでした。
松本 漏らさなかった?(笑)
前田 漏らしはしなかったです。
松本 S級に昇級したての嘉永って、北津留(翼)の先行に乗って番手から優勝したことが賛否両論あったりしましたよね。親王杯は犬伏の先行一車のメンバーだったけど勝負にいって、3番手(吉田-恩田の後ろの位置)を自分の力で取り切ったというのは大きかったと思いますね。
松井 やっぱりスター性がある選手だよね。記念獲ったのも割と早かったし。
前田 最初は同い年の上田尭弥にばーっと先を行かれていて、骨折のアクシデントもあれば早期追い抜きもあった。嘉永自身、才能があると言われていた選手ではないので、叩き上げ中の叩き上げ。普段は優しい顔しているけど、レースに挑む時はほんとうに怖い顔するし…。(嘉永のG1初制覇は)嬉しい。でも本人も言っていたけど、やっぱり2026年は地元熊本G1全日本選抜がありますからね。
松井 これだよね。再開した熊本で久しぶりのG1。地元のSS選手が誕生したってのは大きい。
松本 赤パンがいるといないとじゃ違いますからね。
松井 熊本ってのもすごいよね。熊本震災の後も誠ちゃんが勝ったしね。
前田 2016年ですね…。
松井 うん。やっぱり選手の地域への思いが二割増、三割増になるのかね。
前田 彼らには阿蘇のマグマのようなものが渦巻いているのかもしれないです。
松本 で、最後の競輪祭。賞金面では深谷や新山、松本貴治が注目されていた中、G1準決勝、決勝に初めてのったという阿部拓真が一発で勝ってしまった。それも一番最低人気の車券だったんですよね。
松井 504番目だもんね。すごいよね。
前田 漫画。
松本 まさに漫画だよね。阿部拓真とは5月の宇都宮記念の時に、「S級点とれますかね?」という話していて。で、決勝で2着に入って「競輪祭の権利もとれたし大丈夫だね」なんて話をしていたくらいなので…そんな選手がまさかタイトルを獲ってしまうなんてね。競輪は何があるかわからないっていうけど、あれはもう荒井崇博にとって絶好の展開だったじゃない。
松井 ちょっと荒井ちゃん脚は三角だったよね。もう獲ったと思ったけどね。
前田 ああいう形になって踏み負けるのは本当に誰もが見たことがない。いままで“勝ち切れる”っていう選手でしたけど…。悪魔が阿部拓真のコースを開けたと思うくらい、嘘?としか思えないゴールシーンでした。
松井 滑らかだったよね〜。荒井ちゃんの後ろにすっと入ったのは。
松本 松本が逃げた時にはもう荒井がモノにすると思ったけど…。ただ、阿部拓真は素質があると言われていたよね。大学でももともと自転車をやっていたし。107期が競輪祭を獲ったのは3人目かな。
前田 107期は粒揃いでしたね。でもその中でも特殊。新山、吉田はガツんと自力先行でかっこいいけど、阿部拓真は泥臭い。すぐ位置取りばっかりするし、怪しい動きするし。でも車券からは外せない選手だったりで。
松井 落車と失格も多い選手だしね。良くいえば昔の古性のような節もあるよね。あんまり先行しない選手だと目標いた方が助かるっていう選手が多い中、割と前を回ることも嫌がらないし。見ていてワクワクする。
前田 “競輪”をする選手ですよね。
松本 九州勢の優勝も久しぶりだったけど、宮城勢の優勝っていうのも菅田順和さん以来なんだよね。菅田順和さんを知らないって人も少なくないよね。
前田 晩年は取材していて、コンコルドっていう愛称で親しまれていましたって話はしていましたけど…菅田和宏のお父ちゃんですよね。
松本 ビデオとか本とかでしか見たことのない存在だったよね。宮城勢でまさか、菅田壱道や和田圭よりも先に獲るなんてね。
松井 競輪祭の決勝で印象的だったのが、菅田壱道がすごい興奮して阿部拓真を祝福していたシーン。バンバンバン!ってこう叩いてさ。東北は菅田壱道と小松崎大地がいつか恵まれてほしいってのは思っていたんだけど、先に阿部拓真が獲って。俺はなんとなく新山の後ろから壱道が獲るっていうのを想像していたから…。こんな展開で後輩に先を越されたんだけど、あんなに素直に喜んで祝福できる壱道に感動したね。
前田 壱道は名古屋ダービーが最高のチャンスで掴めなかった部分もあってそれを阿部拓真に乗せてじゃないですけど…。
松井 阿部拓真が壱道の仇をとったわけじゃないけど、やっぱり壱道には自分で獲ってて欲しい。
松本 阿部拓真が獲ったことで宮城勢は「俺が次は!」という気持ちにもなるだろうし。
前田 そういえば、保科千春の予言があって。大槻寛徳とか和田圭、阿部力也とか、宮城勢がポコンポコンと決勝に乗っていた流れがあるので、「世代的にそろそろ保科千春の番なんじゃないですか?」って保科に言ったら「阿部拓真ですよ」って夏頃に予言してたのをいま思い出しました(笑)
松本 でも阿部力也もそうですよね。今年のダービーを盛り上げたのは阿部力也だなと。
松井 あ〜そうだね〜。
松本 阿部拓真がSSになったことで、番組も恵まれて宮城勢が人気になる可能性もあるよね。
松井 阿部力也で思い出したけど、今年って深谷、眞杉、古性とか、トップどころが色々な交流を持って合宿をやっていたよね。阿部力也も冬季移動でずっと大阪に行っていたし。そういうのも昔と違うなと思うよね。
前田 netkeirinの取材で古性のところに行ったら、南(修二)、松村(友和)もいる中で普通に阿部力也がいて、あれ!?ってなりました(笑)
松井 競輪祭二予で阿部力也と同じ組だった南修二が「あれ、阿部力也は俺たちの3番手だよな?」ってギャグかましてて(笑)中野慎詞もいるのに。そのあとに古性優作もまったくおんなじことを言ってた(笑)で、阿部もまたメンバー見て「番組、空気読めよ」って。俺をここに入れるなよ!と(笑)
一同 (笑)
前田 しかも古性は阿部をどかしましたしね。
松本 S級トップクラスはいざ走り出せば、一切妥協がないよね。
松井 力也は終わってからめっちゃ悔しそうだった。
松本 南修二も共同通信社杯競輪の優勝、オールスター3着でグランプリに乗りましたね。グランプリ9人の中に南がいるっていうのは近畿にとっても大きいし、“競輪”をやっている選手が入ってきたっていうのは大きいよね。
前田 でも他の選手が南と同じ道を追いかけるっていうのはハードルが高いと思います。「44歳でグランプリ出場か、よし俺も!」っていうのは南の走りを追いかけてではちょっと…、とにかく近年の闘いぶりはすごいです。
松本 南の競輪は深すぎるよね。
松井 横に暴れるイメージだったのが、縦に特化したじゃない。それに南って同期の出世をいっぱい見送ってきた。山ちゃん(山崎芳仁)とか武田(豊樹)とか。“花の88期”ってすごい選手がいっぱいいる。そんな中で“一番の遅咲き”と言っていいタイミングで結果を出した。そんな南に、同期の渡邉一成が「競輪は横より縦だ」って言われたらしくて衝撃を受けてたよ。「俺もっと縦も頑張んなきゃな」って言ってたけど(笑)
前田 昔、大阪の若手といえばド先行の乾準一(引退=85期)がいましたよね。南修二はその頃、自力で行っても時々勝てるか勝てないかの選手だった。そこから追い込みに変わって、「横通れませんよ」って感じで。
松井 中は割れませんよ、横を通るなら落ちる覚悟できてねという感じでね。
前田 その形を作り上げてこれって…もちろん落車も失格も多かったし、怪我も苦労もあっただろうけど本人は口にしないし。この道のりは真似できないと思います。
松井 一切口にしないし、人のせいにしないよね。裏では言ってるのかもしれないけど、俺たちは一切見せてもらえないよね(笑) 宮杯の敗者戦で南が和田真久留-岩本俊介の上を捲ったじゃん。あのときに南の完成形をみたというか、本当にこういう闘い方になったんだなと思ったね。
松本 大阪勢自体、失格が少なくなりましたよね。
松井 イナショーは今年前半までやばかったけどね(笑)
松本 失格をするとあっせんが止まる。そうするとG1に出る機会が減る。古性も南も稲川も、そういうのが多かった。だけど南はここ数年失格とかあっせん止まったとか記憶にないですよね。
松井 ここ2〜3年、記憶にないな。昔はお寺の常連だったけどね。
松本 どこかのタイミングで、G1に出るチャンスを自分で無碍にしちゃうことには思うところがあったのかもしれないですね。あとは縦への意識なのか…。
前田 古性は、“違反点をつけずにレースのすべての仕事をする”という究極でより高いところを見ていますよね。
松井 去年の競輪祭で寺崎を守って1回やっちゃったけどね。
前田 それと、今年の福井の共同通信社杯競輪決勝ですね。横を止めないといけない局面になった時、やっぱりリミッターが外れる瞬間はあるんでしょうね。
松井 古性と眞杉は今年一つもG1獲れなかったっていうのはちょっと意外だったよね。特に古性は最低でも一つは絶対に獲る選手だと思っていたから。
松本 2人ともG2は勝ってるんだけどね。
前田 でもグランプリに向けての賞金1位は古性。そんなことあるんですね(笑)
松井 G1獲らずに賞金1位って…(笑)しかもオールスターの時なんか骨折で肩がぶらぶらになったまま走ってさ。あの状態でも決勝2着とかさ…。
前田 玉野で落車しちゃってね。「腱が全部切れてる」って言ってましたね。でも、復帰したオールスターはいま振り返っても一体なんだったんだろうって思います。絶対に走れる状態になかったはずの身体で、最終的に準優勝。いや…いまでも無理だったはずとしか思えない。
松本 本人も「状態は悪かった」って言っていたしね。
松井 車も出てなかったしね。絶対に悪かったはず。
前田 ずっと青ざめて肩を冷やしていましたし。
松本 でも渾身のSを決めたことがね。
松井 いやすごいよ…あれで2着来ちゃうんだからほんとに。
前田 だからまだ古性優作という選手の底は見えていないんだろうなという感じはします。
松本 眞杉匠はね、年間を通してコンスタントに賞金を積み上げたんだろうけど…。
松井 今年の眞杉は物足りなかった。残念。本人も出力の部分で悩んでいたのか…。
前田 先行して、記念の二次予選で押し切れないとかもありましたね。
松井 去年は明確に怪我があった。でも今年はエンジンがかかりきらないまま一年が経っちゃった感じがする。ただ、要所要所で結果を出しているからグランプリは乗れたけど、眞杉っぽくはなかったな。
前田 気持ち先行になりすぎたのかなって感じが若干しますね。焦っているのか…。
松井 関東を自分が引っ張っていかなければいけないっていう足枷もあるかもしれない。
前田 もうちょっと冷静に、眞杉匠らしくいられれば。ダービーの決勝戦が審議になったでしょう。もしかしたら失格かもしれないという動きにも見えて。でも準優勝。その時点でほぼグランプリが見えたとこっちは思っちゃうわけですけど、セーフになってよかったとか抜きにして、吉田に抜かれて優勝できなかったことをめちゃくちゃ怒ってたのが印象的でした。
松本 ヨシタクを振り切らなきゃいけなかったと。
松井 やっぱり眞杉とヨシタクはドラマがあるじゃない。眞杉のG1初優勝の西武園とかさ。だから眞杉が前を回ったら引っ張ってヨシタクに獲らせるんじゃないかってこっちは邪推しちゃうよね。でもそんなこともなくて、眞杉は常に勝ちに行ってるんだよね。
前田 スピードも良かったはずなんですけどね…。前のめりになりすぎたのかな。
松井 一つ原因として挙げるなら、やっぱり平原の引退は関係してるんじゃないかな。急に関東のエースとして色々なものを背負わされたというか。眞杉が主導してヨシタクとかと合宿をやったりするようになったじゃない。今までは距離があったけど、ここにきて密になったよね。
前田 福田稔希とか後輩が出てきたりもして、平原がいなくなったことで一気に眞杉が伝えないといけない立場になりましたよね。いろいろと考えることが増えたのかなって。
松本 やりたいことをやっているだけで良かったのが、後輩のことも気にしつつやらなければいけなくなった。管理職じゃないけど。眞杉ならそれも乗り越えられる選手だと思いますけどね。
松井 やっぱり古性と眞杉が元気じゃなきゃ競輪つまんない。古性と南の間に眞杉が入っていった去年の共同通信社杯決勝(宇都宮)とか、古性が眞杉を止めた今年のウィナーズカップ決勝(伊東温泉)とか。あれくらい競輪センスのある2人じゃないと名勝負は見られない。
松本 ノンタイトルでも2人ともグランプリに乗った。あとは郡司浩平もそうだよね。記念の勝ち方がとにかくすごかった。4日制のG3になってから記念を一年で6回も獲るっていうのはなかなかすごいことだと思う。
前田 過去に浅井康太くらいかな…。4日制のG3を複数回勝つっていうのはすごい。しかも「郡司は勝つんでしょ」という視線がある中で勝っちゃうから。まあでもこの一年間はもどかしかったんでしょうね。南関全体に言えることですけど。
松井 やっぱり北井(佑季)の件が、南関の盛り上がりに欠けた一因だったよね。空気が重くなったよね。北井は来年A級からリスタートだけど。
松本 郡司に関してはG1で失格を2回しちゃっていたから、競輪祭で失格すればグランプリ出場権利を失う可能性もあった。その中で競輪祭のレースから感じさせなかったよね。
前田 事故点とかなくてもあの6日間だったんでしょうねという走りでした。
松本『南関が自分一人にならないように』っていう走りをしていたんじゃないかと思うけどね。
松井 松井宏佑とは、小田原記念と競輪祭で前後を変えたりしていて、郡司の伝えたいものが見えたけど、松井が汲み取るにはまだ早かったよね(笑) 脚力はあるんだけど、競輪力が追いついてなかった感じがした。
前田 本当に郡司はそこを松井に求めていますよね。松井も競輪祭決勝で最後にぶっとんできて、頑張ってはいたけど…(笑)
松井 脚はある(笑) 郡司と深谷が2人抜けた存在で、そこに松井とかが乗ることができれば南関王国だったけど、今年はうまくいかなかったね。
前田 これからの2、3年で松井がランクを上げることができればね。
松本 競輪祭の準決勝も、郡司としてはゴール前勝負に持ち込みたかったんだろうね。
松井 そうそう。結局決勝で郡司残せれば、松井にはチャンスがあった。
松本 郡司の意図と松井の感じ方が違ったのかなと思った。
松井 決勝で松本貴治が逃げたけどあれは腹を括っただけで、本当は逃げたいわけじゃなかった。でももし、郡司と松井で乗ることができていたら、郡司は確実に後ろを取っていい先行ができたはずだから、かなり確率は高かったよね。
松本 本当に競輪の奥深さがあったよね。そこで松井が車間を開ける覚悟と度胸と技術があればね…。
前田 競輪力ですね。
松井 でも松井は才能があるから。しかも恵まれてるじゃない。獲れなかったけど、競輪祭決勝で深谷に引っ張ってもらったり、郡司の後ろ回ったりとか、誰もが簡単にできない経験をしているから、大化けの可能性はあるよね。してほしいしね。あと松井は可愛い。
前田 可愛い!来年は平塚ダービーがあるから期待したいです。小田原記念での郡司からの「俺たち変わろうよ」っていうメッセージをモノにするタイミングが来るかどうか、楽しみです。
松井 小田原から競輪祭の流れに関しては本当に、郡司は松井を育てたかったんだと思うよ。
前田 郡司はその責任が自分にあるっていうのを強く感じています。なんだかんだ深谷とか岩本は年上だから、『自分がやらないと』って思っているんじゃないですかね。
松井 流れに逆らわず、一番綺麗な仕掛けをする選手だよね。後ろを連れて引っ張ることもできるし、勝つこともできるし。
松本 すごくわかりやすいレースをしてくれるから、お客さんにとっては車券を買いやすい選手だと思いますね。
※文中敬称略
netkeirin編集部
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