閉じる
ロスの超特急・坂本勉“超抜”レーダー

【坂本勉の超抜レーダー】ラインを活かせる高橋舜、アクシデントにも強い“サラブレッド”山崎歩夢

2025/10/04 (土) 18:00 13

“ロスの超特急”こと坂本勉氏が『究極に仕上がっている選手=超抜選手』を紹介する当コラム。坂本氏が太鼓判を押したくなる“超抜選手”をチェックして車券推理に役立てましょう!(構成・netkeirin編集部)

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。10月20日から23日まで青森競輪場で開催されていた「みちのく記念善知鳥杯争奪戦」では、連日に渡って解説の仕事をさせてもらいました。

 これまでの青森記念は、東京のスタジオからの中継だったのですが、今回は競輪場内のスタジオに場所を移しており、より臨場感のある中継になったのではないかと思います。初日以外は天気にも恵まれ、開催が週末と秋分の日と重なったこともあり、多くのファンのみなさんに競輪場まで足を運んでもらえました。

快晴の青森競輪(写真提供:チャリ・ロト)

 今大会は年末の「KEIRINグランプリ」で賞金争いを繰り広げているメンバーが揃い、決勝も緊張感のあるレースでしたね。勝ったのは郡司、2位は新山で3位は南となりました。

 現在賞金ランキング9位の新山は優勝しての賞金アップを図りたかったはずです。ただ、現時点で自分より下の順位にいる選手に勝たれるのではなく、上の順位にいる郡司が優勝したのは幸いだったといえます。新山としては残る2つの特別競輪で、賞金アップを図るだけでなく、“勝つレース”をしてグランプリ出場を果たして欲しいと思っています。

高橋舜|ラインを機能させる“臨機応変”な走りができる

 今回はA級、S級共に125期の選手を取り上げていきたいと思います。これまでも小堀敢太(北海道)や谷内健太(京都)の名前を挙げてきましたが、125期はレースを見ていても目を引く選手が揃っていますね。

 開催中の函館FIで完全優勝を果たした高橋舜(宮城)もまた、逸材揃いの125期となります。高橋のいいところは、ほとんどのレースで「スタートで前を取って突っ張り先行」といった、非常に分かりやすい走りを見せる点です。しかも、高橋は捲りに回っても勝てるレースができる強みがあります。

高橋舜

 函館FIでは予選が突っ張り先行での逃げ切り。二次予選では3番手に下げての捲りで勝利をあげています。そして、決勝ではスタートを取った中部勢に突っ張られ、5番手からのレースになるも、最終バックで前の選手を捉えていくと、そのまま後続との差を広げていくような非常に強いレースを見せました。

 高橋は前大会の名古屋FIでも完全優勝を果たしています。一次予選と準決勝は突っ張り先行を見せながらも、決勝では6番手からの捲りで勝利しており、メンバーや展開を見て臨機応変な走りを惜しみなく披露していましたね。名古屋、函館と捲りでも勝っていますが、予選から徹底先行を見せられるのが強さです。他の選手から「アイツを後ろに置こう」と警戒されるようになっています。

 また高橋のような選手は番組を組む主催者としても有難い存在です。高橋の後ろにはラインができやすくなり、どんなレースでも展開が向いてくるのです。最近の若手選手は前に行く脚があるにも関わらず、後ろに引いてからダッシュでカマしていくような走りを数多く目にします。また、こうした若手選手の番手にいる追込選手が加速についていけずに離れてしまう姿もよく目にします。

 追込選手が離れてしまっては番手の仕事ができず、ラインとしては機能しなくなります。結果として他の選手が捲って来るときに援護が受けられなくなるわけです。高橋も捲りを繰り出せるようなダッシュはありながらも、突っ張り先行をした時に結果を残せているのは、後ろにいる追込選手の良さを引き出すような走りができているからです。

ラインを機能させる走りを選択できる強みがある

 高橋は学生時代にオムニアムやポイントレースといった持久系の自転車競技で結果を出してきた「地脚」タイプの選手です。スピードを持続できる走りが持ち味で、番手の選手としても高橋の先行には付いていきやすいのは間違いありません。

 これはロードレースで活躍してきた同じ125期の谷内健太も同様で、高橋も競技を通して持久力を磨いてきただけでなく、競輪の練習でスピードが増してきたことにより、「地脚」のある先行選手として能力を開花させています。

 高橋はこれで6連勝とS級への特別昇班が見えてきました。S級に入ってからも今の走りを貫ければ通用するはずであり、番組編成でもいい追込選手を後ろに付けてもらえるでしょう。このコラムで取り上げたA級の選手は軒並み特別昇級を果たしているだけに、高橋もその流れに続いてほしいと思います。

高橋舜出走情報

開催場開催名シリーズ日程
弥彦週間実話賞(FII)10月12日〜14日
小松島屋島杯&高松盆栽杯(FI)10月20日〜22日

※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年10月4日)のものです。
※アプリをインストールの上、データベース内の選手ページにてお気に入り登録(☆をタップ)しておくと出走確定情報が通知されるので便利です

山崎歩夢|アクシデント乗り越えるたびに強くなる“サラブレッド”

 続いてS級で紹介する125期の選手は山崎歩夢(福島)です。「今さら山崎を取り上げるのか!」と思われた方もいるかもしれませんが、他の125期の選手たちもA級、S級と魅力的な選手揃いだったため、このタイミングになってしまいました。

山崎歩夢(写真提供:チャリ・ロト)

 山崎のお父さんは、46歳となった今でもS級で活躍を続ける山崎芳仁(福島・88期)。いわば山崎は競輪界のサラブレッドです。高校時代にはジュニアのナショナルチームにも選ばれ、アジア選手権のケイリン競技で優勝。その後の世界選手権でも4位となっています。

 一方で同じ125期には中石湊がいます。中石は高校2年の頃にインターハイ1kmタイムトライアルで優勝すると、山崎もケイリン競技で頭角を現しました。高校時代からのライバル関係をそのままに養成所に入った2人ですが、中石は在所中にナショナルチーム入りし、アジアトラック選手権などで活躍します。

 山崎は競技での華やかな成績よりも競輪選手としての道を選びました。在所中にはゴールデンキャップを獲得するも、卒業記念レースでは初戦で落車し欠場。その後、地元いわき平でのFIIでは先頭誘導員早期追い抜きで失格、3か月間のあっせん停止処分となるなどアクシデントが続きました。

 ただ、山崎の強みはこうした挫折を乗り越えて成長していく点にあります。斡旋停止明けの競輪ルーキーシリーズプラスで優勝し、今年に入ってからはA級2班、S級1班と立て続けに特別昇班も果たしています。

ルーキーシリーズプラスではポテンシャルをいかんなく発揮(写真提供:チャリ・ロト)

 山崎の持ち味はズバリ「徹底先行」です。その姿は新山響平の若い頃と重なります。新山もA級時代から勝ちにこだわらず徹底先行で名を上げ、今では競輪界の第一人者と認められる存在となりました。

 山崎は川崎のFI決勝で落車し膝を痛めましたが、記念競輪「瑞峰立山賞争奪戦」の最終日には突っ張り先行で勝利し、S級の強豪相手にも通用する力があることを証明しました。さらに「オールスター競輪」では推薦枠で出場が決定。

 父・山崎芳仁とのGI親子出場が実現し、GI初戦の一次予選でいきなり初勝利。この時のインパクトは大きく、誰もが「今後どこまで強くなるのだろう」と感じたはずです。準々決勝では落車し欠場となってしまいましたが、存在感を示したシリーズだったと言えるでしょう。

準々決勝は落車で9着も存在感を示したオールスター競輪(撮影:北山宏一)

 しかし準々決勝で落車し欠場。その後の小倉FIではS級初優勝を完全優勝で飾ります。決勝は叩き先行の真鍋智寛の番手に追い上げて入り、絶好の形から勝利しました。これは「山崎を先行させたら捲れない」というプレッシャーがもたらした展開でした。

 ただ「みちのく記念善知鳥杯争奪戦」では特選で落車し再びアクシデント。現在は欠場中ですが、山崎は困難を乗り越えるたびに強くなるタイプです。父子での競輪選手としての物語だけでなく、学生時代からの実績を背景に、挫折を経てGI出走に至った姿には逞しさを感じます。

 来年1月には地元いわき平で記念競輪「いわき金杯争奪戦」が開催されます。そこで初優勝を果たす姿が期待されます。父・山崎芳仁もまだまだ健在で、決勝で息子の番手を回り、ゴール前勝負に持ち込む--そんなドラマティックな光景を見てみたくなります。

偉大な父と“地元ドラマ”を刻む可能性は十分にある

山崎歩夢出走情報

開催場開催名シリーズ日程
大宮サンケイスポーツ杯(FI)10月12日〜14日
岸和田サテライト湖南コスモスカップ(FI)10月24日〜26日

※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年10月4日)のものです。
※アプリをインストールの上、データベース内の選手ページにてお気に入り登録(☆をタップ)しておくと出走確定情報が通知されるので便利です

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

ロスの超特急・坂本勉“超抜”レーダー

坂本勉

Tsutomu Sakamoto

●坂本勉(さかもと・つとむ) 1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

閉じる

坂本勉コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票