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ロスの超特急・坂本勉“超抜”レーダー

【坂本勉の超抜レーダー】“タテ脚プラスα”のスタイル! 今の時代にアジャストできる有望株

2025/08/04 (月) 10:00 6

“ロスの超特急”こと坂本勉氏が『究極に仕上がっている選手=超抜選手』を紹介する当コラム。坂本氏が太鼓判を押したくなる“超抜選手”をチェックして車券推理に役立てましょう!(構成・netkeirin編集部)

連載初回で取り上げた選手たちが躍動!

 netkeirinをご覧のみなさん、坂本勉です。暑い日が続いていますが、体調など崩されていないでしょうか?連載初回で取り上げた小川三士郎(徳島・125期)ですが、コラム掲載後の「中日スポーツ杯・オッズパークC(FI)」で完全優勝。3場所連続で完全優勝を達成したことで、S級2班へ特別昇級を決めています。

 小川はこの大会でも先行、捲りと“大きなレース”にこだわった走りを見せていました。S級初戦となる「第4回チャリロト杯(FI)」でも、初戦、2戦目と果敢にバックを取っています。大会でのS級初勝利とはなりませんでしたが、昇級しても“大きなレース”を見せていくことで、周りの選手から評価されていきます。それがS級での安定した活躍にも繋がっていくはずです。

小川三士郎

 そして、石原颯(香川・117期)もコラム掲載後の弥彦記念「ふるさとカップ(GIII)」で決勝に進んだだけでなく、「サマーナイトフェスティバル(GII)」でも2勝をあげています。石原は年齢的にもまだまだ強くなれますし、勢いも感じられるだけに、記念初優勝もそう遠くない時期に達成できる気がします。

石原颯(写真提供:チャリ・ロト)

気持ちの強さと器用さを兼備する小堀敢太

 今回もまずはA級の選手から紹介していきたいのですが、今のA級には素材のいい選手が揃っていますね。中でも注目しているのが、特別昇級がかかった富山競輪のFIを完全優勝し、7月30日付でA級からS級に昇級した小堀敢太(北海道・125期)です。結果だけでなく、レースの内容を見ても期待の持てる選手です。

 昨年デビューの小堀は、今年の2月にも特別昇級を決めています。その後も常に決勝に勝ち進んでいるように、今年に入ってからは「3着以下がない」という、非常に安定したレースを続けています。

小堀敢太(写真提供:チャリ・ロト)

 小堀の良さは“大きなレース”を見せることもでき、それでいて番手戦もこなす器用さを持ち合わせていることです。大学時代にケイリンやチームスプリントといった自転車競技を経験しているのも大きいと思います。

 その小堀と同じ北海道所属の125期であり、先にS級へと上がったのが、ナショナルチーム所属の中石湊(北海道・125期)となります。25歳の小堀よりも5歳若い中石ですが、ジュニア時代からナショナルチームに参加しており、養成所でもゴールデンキャップを獲得するエリート中のエリートです。

 この中石の存在は、小堀にとっても刺激となったに違いありません。自分もそうでしたが、同期にライバルと呼べる存在がいることで、「アイツには負けたくない!」という気持ちが生まれてきます。それでいながら小堀と中石は同じ地区だけに、ただのライバルには留まらないでしょう。同期であり同地区、最高の仲間ともなり得るわけです。

中石湊

 小堀が特別昇級を決めたシリーズですが、自分は解説の仕事があったため、現場でレースを見ていました。前受けして後ろから来た選手を突っ張り切ると、そのまま後続の選手を寄せ付けることなく逃げ切りを決めていました。

 普通、特別昇級がかかるレースですから、安全に勝ちに行きたいところでした。しかし“大きなレース”で決めたあたり、小堀の気持ちの強さを表しています。今後のS級では中石との連係もあり得るだけに、「北海道のゴールデンコンビ」として、地元に幾つものタイトルを持ってきてくれるのではと期待しています。

小堀敢太出走情報

開催場開催名シリーズ日程
西武園日刊スポーツ杯争奪戦(FI)8月4日〜6日

※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年8月4日)のものです。
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木村皆斗の“粘り込み”は敵の脅威になる 関東を代表する選手へ

 S級の選手は前回、石原颯とどちらを取り上げようか悩んだ木村皆斗(茨城・119期)を取り上げたいと思います。木村もまた、中石と同じように養成所時代にゴールデンキャップを獲得しており、デビューしてからも先行選手として活躍を続けてきました。

木村皆斗(撮影:北山宏一)

 木村は2023年に一度、S級に昇格を決めています。しばらくは関東ラインを牽引するような走りを見せていたのですが、競走得点が思うように上がらず、昨年末に降格してしまいました。

 その頃の木村は予選を勝ち上がれないような走りをしており、S級の壁を感じずにはいられなかったことでしょう。ただ、降級したことで吹っ切れたものがあったのかもしれません。今年の元旦に行われた取手競輪のA級戦から、特別昇級を決めた佐世保FIまで、「なにがなんでも先行していく」の強い気持ちを全面に出した走りを披露していました。

 S級に再昇格してからは、岸和田FIで完全優勝を決めます。「あの木村皆斗がこんなに強くなったのか!」と驚きました。特に自分がレース内容を高く評価しているのが、3月末に別府競輪で行われたたFI戦の決勝です。

 ここで木村は吉田拓矢と横山尚則を引きつれて、一気に先行体勢へと入りました。後ろから阿部英斗がかましにかかると、自ら横に車を持って行ってまでして、先行へのこだわりを見せました。結果は阿部に叩かれての7着とはなりました。

 このレースを見て「また関東地区から活きのいい先行選手が出てきた」と思わされましたね。今の関東地区は眞杉匠、吉田拓矢とタテ脚もありながら横の動きもできる選手が活躍しています。全国で見ても古性優作がそうですよね。総じて“自在型選手”が若手選手の目指すところにもなってきています。

関東地区ツートップの眞杉匠(左)と吉田拓矢

 そんな背景の中、木村のような徹底先行型で、ラインを残すような走りができる選手ならば、さらに自在型選手の長所を生かし切ることが可能です。木村の持ち味は先行した時の粘り込みです。これは他のラインからすると非常に厄介であり、しかも、毎回のように先行を見せているので、他の先行選手からしても苦手意識を持たれているはずです。

 こうした意識付けこそ、木村にとって有利に働きます。かましに行っても突っ張り切られるならば、最初から「捲りに構えよう」と思ってもらえます。そうなれば思うつぼというか、より楽に先行していけるのです。

 S級に上がってからは岸和田で優勝していますが、他のシリーズでもコンスタントに決勝へと進んでいます。ラインを組むことが多い関東の選手からしても、木村の後ろが優勝に近いと思っているはずであり、その信頼が重なっていくことで、より強固なラインを作り出していくでしょう。

 木村は地元取手で行われた「水戸黄門賞(GIII)」にも出走しており、その時は準決勝へ進出。先行を見せるも叩いた藤井侑吾や、後方から捲った松井宏佑のスピードに屈する形で、決勝進出を逃していました。本人も悔しかったと思いますが、特別競輪の決勝にも顔を出す選手たちとの力の違いを感じ取ったはずです。

地元記念は準決勝へ進むもGI決勝級のスピードの前に苦戦を強いられた木村皆斗(赤3番車 写真提供:チャリロト)

 しかし、A級に降級したときと同様に、「なにくそ!」との思いが木村をまだまだ強くします。記念競輪では眞杉や吉田を従えて先行していくだけでなく、そのまま押し切って優勝を決めるような走りができる選手になることを期待しています。

木村皆斗出走情報

開催場開催名シリーズ日程
千葉PIST68月3日〜4日
富山KEIRINライジングスターズ(FI)8月12日〜14日
取手サテライトしおさい鹿島杯(FI)8月20日〜22日

※上記出走情報はコラム公開日時点(2025年8月4日)のものです。
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ロスの超特急・坂本勉“超抜”レーダー

坂本勉

Tsutomu Sakamoto

●坂本勉(さかもと・つとむ) 1984年、ロサンゼルス五輪に出場し銅メダル獲得。日本の自転車競技史に初めてメダルをもたらし、“ロサンゼルスの超特急”の異名を持つ。2011年に競輪選手を引退したのち、自転車競技日本代表コーチに就任し、2014年にはヘッドコーチとして指導にあたる。また2021年東京五輪の男子ケイリン種目ではペーサーも務めた。自転車トラック競技の歴史を切り開いた第一人者であり、実績・キャリアともに唯一無二の存在。また、競輪選手としても華麗なる実績を誇り、1990年にKEIRINグランプリ、1989年と1991年にはオールスター競輪の覇者となった。現在は競輪、自転車競技、PIST6と多方面で解説者として活躍中。展開予想と買い目指南は非常にわかりやすく、初心者から玄人まで楽しめる丁寧な解説に定評がある。

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