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吉井秀仁の妄想先取りレース実況

【高松宮記念杯競輪予想】2025年のGI戦線は一筋縄に行かない 競輪の原点「勝った者が強い」を何度も見るだろう

2025/06/17 (火) 08:00 3

脇本雄太が“爆発力”なら古性優作は“完成度”

 2025年のGI戦線、その火ぶたが切って落とされたのはまだ冬の余韻が残る2月の全日本選抜競輪。そこで、いきなりこの男がやってくれた。脇本雄太である。寺崎浩平のまくりを差し切り文句なしの優勝。これで「グランプリスラム」達成。全日本選抜、日本選手権、オールスター、寛仁親王牌、競輪祭、そしてグランプリを全部獲った。将棋で言えば全冠制覇。野球で言えばトリプルスリー+沢村賞ぐらいのインパクト。まさに競輪界の歴史にひとつの金字塔を打ち立てた。

 続く3月のウィナーズカップ。存在感を放ったのが、同じ近畿の古性優作。ここも寺崎浩平に前を任せてラインを活かし、仲間を信じ、自分の仕事もきっちりこなした。いわば「職人芸」みたいなレース運び。脇本が“爆発力”なら、古性は“完成度”。近畿の競輪はこの二人を軸に、完成形の様相を呈している。しかもこの二人、「バチバチのライバル」というよりも、むしろ呼吸が合っている。阿吽の連携、言葉はなくても動きで通じ合うみたいな空気感が画面越しにでも伝わってくる。

近畿一強に割って入った関東の“誇り”

“近畿一強”のムードに待ったをかけたのが、5月の日本選手権競輪。ここでひと際光ったのが吉田拓矢。眞杉匠の怒涛のまくりは「心・技・体」、すべての力を振り絞ったような猛チャージ。それを完璧に捉えて差し切ったのが吉田。積み重ねてきた“信頼”が、あの一瞬に結実した感じだった。

 この勝利、単に「一勝」では終わらない重みがある。それまで続いていた近畿の流れを止めたという意味でも、そして関東勢としての“誇り”を示したという意味でも一石を投じたね。競輪って結局、個人戦でありながら時に『ラインの力、絆の力』。日本選手権競輪決勝のレースには、はっきりとそれが現れていた。

 改めて思う。2025年、今年の競輪はどうやら一筋縄ではいかない。圧倒的王者がいて、盤石のラインを誇る近畿がいて、それを真正面から揺さぶる新たな勢力がいる。“強い者が勝つ”ではなく“勝った者が強い”。競輪の原点を今年は何度も見させてくれそうな気がする。

波乱要素が強い宮記念杯、マーク追い込み陣を考察せよ

 伝統の東西対抗戦はオール予選スタートだ。日頃は特選スタートのS班といえ、うかうかしていられない。とりわけマーク陣は番組次第でやりづらいところも出てくるかも。割り切っての“プロの走り”が必要になるよね。そこにファンは魅了させられ、熱い声援を送ってくれるってもんだ。そうなると波乱を含む要素が生まれ、穴党ファンにはたまらないご馳走になる。東西の新勢力から狙うもよし、ベテラン選手のいぶし銀の走りを期待するもよし。

 このシリーズ、ホントに妄想枠は悩むよ。今回は自力型を挙げずにマーク追い込み陣にスポットをあてる。まずは東からピックアップする。阿部力也、我らの竹内智彦、成田和也、武藤龍生、小原太樹、松谷秀幸。西は村上博幸、三谷将太、南修二、村田雅一、椎木尾拓哉だ。この追い込み陣を妄想枠で挙げておく。予想の際には一考してもらいたいね。

初日4Rの中心はダービー王・吉田拓矢で間違いないが

 さあ、初日の推奨妄想レースは4Rで行くべ。まずは並びを整理しておく。⑦中野慎詞-③阿部力也-⑧竹内智彦、②吉田拓矢-⑨吉澤純平、④菊池岳仁-⑥寺沼拓摩、⑤根田空史-①和田健太郎の細切れ戦だ。この細切れの構成は簡単には読ませてくれない。ただ、中心はやっぱりダービー王・吉田拓矢だろう。位置取りのセンスも良く、展開を自分で作れるタイプだ。

 初手は阿部力也がスタートを取り、中野慎詞が前受けから。ヨシタクがここを追う。菊池がこの後へ(⇐⑦③⑧・②⑨・④⑥・⑤①)。勝負どころで根田が押さえ、ヨシタクが切る。そこを菊池が仕掛け、ヨシタクがまくり、マークに入る吉澤との②=⑨が本線。そして中野慎詞のダッシュ力はピカイチ。一気に仕掛ければ、番手の阿部力也との⑦=③が浮上してくる。まあここまでを本線にしとくかね。

 さてと、さらに妄想展開へと話を移して行くべ。面白いのは我らが竹内智彦だ。中野慎詞が一気に出切ってしまえば東北3番手でじっと脚をため虎視眈々とチャンスを狙う。番手の阿部はまくってくるヨシタクを牽制するべ。そうなれば竹内の強襲劇が·····!

 このパターンがハマれば、東北ラインにヨシタクを入れ③⑦⑧②ボックス。いや待てよ。竹内-全-全の出しどころじゃねえか? いや、初日からリスク有り過ぎか?しくじったら長〜い1日になっちまうし···。思案しどころか!

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吉井秀仁

Yoshii Hidehito

千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。

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