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“あの頃”の神山雄一郎と吉岡稔真 S班制度導入前の「東西両横綱時代」

アプリ限定 2025/06/12 (木) 18:00 32

2025年6月17日、東と西に分かれて勝ち上がり戦を行うGI戦「高松宮記念杯競輪」が開幕します。GI開催を記念して“東西対決”にまつわる読み物をお届けしたい!という編集部の願いを叶えてくれたのが、スポーツ紙初の女性競輪担当記者・秋田麻子氏。東と西、西と東ーー。今回は平成初期、神山雄一郎氏と吉岡稔真氏のライバル関係が創った「東西両横綱時代」を振り返ります。令和時代とは異なる雰囲気の平成競輪の景色をぜひお楽しみください。(構成・netkeirin編集部 文・サンケイスポーツ秋田麻子記者)

競輪場には時代とともに熱き戦いの記憶が刻まれていく(写真提供:チャリ・ロト)

「東の神山、西の吉岡」の起こり

「東西両横綱」とはもちろん相撲用語で、最高位の力士である横綱が2人いる状態のことを指すという。スポーツ新聞の記事はなぜか相撲、将棋用語を使うことが多い。例えば「優勝に王手」とか負けたら「土がつく」とか。明瞭な理由はわからないが、わかりやすいし、臨場感が増すからだろうか。

 1992年3月に吉岡稔真氏(以下敬称略)がデビュー3年目という当時、史上最速で日本選手権競輪を優勝した。その年の6月、競輪を知らない人でも知っている輪界随一の著名人・中野浩一氏が引退し、『フラワーラインVS九州ライン』の争いが沈静化する。

 そして吉岡時代の幕開けかと思われたが、翌1993年9月、神山雄一郎氏(以下敬称略)がオールスター競輪を制覇し、2人がタイトルホルダーになったことで「東の神山、西の吉岡」の東西両横綱時代へ本格的に突入した。

東の横綱は神山雄一郎、現・日本競輪選手養成所所長

「神山派? 吉岡派?」

 平成初旬は特別競輪(GI)も今より少なく、GIIもない。記念は3日制の前、後節開催で、神山と吉岡が同シリーズにあっせんされることはまずなかった。2人の直接対決は多くても10回未満。それがまた両横綱時代が盛り上がった要因だろう。競輪客は競輪場ではもちろん、駅前の酒場で「神山の方が強い」「いや吉岡だ」と“どっちが強いか論争”を展開していた。

 記者席でもほぼ同じだったが、競輪客と違うのは、2人にジカで接することはできるという点で、論点が「強い」だけではなかったことか。

 優等生でいつも笑顔、誰にでも気さくに対応する神山。にらみつけるような鋭い眼光で笑顔を見せない吉岡。「君は神山派? 吉岡派?」と聞いて回る先輩もいたが、少々、神山派のほうが多かった気がする。

 ベテラン記者ならいざしらず、若手ペーペー記者からすれば近寄ることすら難しい吉岡ではなく、何でも応えてくれる神山派になってしまうのは当然の流れだろう。

両横綱の話で夜通し盛り上がれた時代

 相撲では同じ横綱でも「東」のほうが上位とみなされる。神山と吉岡はたまたま東、西日本の登録だっただけで、どちらが上かは個人の感想になる。

 私は当時、「どちら派?」とたずねられても答えが出せなかったが、どちらの格が上かと聞かれれば「吉岡」と答えていたと思う。理由は「キャッチフレーズ」だ。吉岡は当時、爆発的に人気のあった自動車レースのフォーミュラ1をなぞらえ、「F1先行」と呼ばれていた(名づけ親は某スポーツ新聞の記者らしい)。

 中野浩一氏の「世界のナカノ」、滝澤正光氏の「怪物」、井上茂徳氏の「鬼脚」など、超一流選手にはそれを象徴する異名が存在していた。

 神山は今でこそ、その功績からレジェンドと表されるが、当時は残念ながらキャッチフレーズらしいものはなかった。それは神山がすべてにおいてバランスよく完璧で、突出した部分がなかったせいなのかもしれない。

 いずれにせよ、神山と吉岡の話だけで夜通し楽しめるような時代だった。

「F1先行」の異名で通っていた吉岡稔真(写真:日刊スポーツ/アフロ)

S級S班制度の導入とともに“戦国時代”へ

 平成初期が「東西両横綱時代」だとしたら、現在は「戦国時代」なのだろうか。

 S級S班制度が導入され、横綱格の選手が増え、さらにビッグレースも増えて群雄割拠している。そんな中でも勝ち上がりが東西に分かれる高松宮記念杯競輪は新鮮さをもたらす大会だ。

 今年は古性優作と脇本雄太が交代でビッグを優勝し、近畿勢がリード気配のところ、日本選手権競輪では吉田拓矢が優勝して風向きも変わった。

 古性の牙城を東日本勢が崩しにかかる。

現代競輪の“横綱格”古性優作、地元岸和田GIでライバルたちが襲い掛かる(撮影:北山宏一)

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