アプリ限定 2025/04/30 (水) 12:00 3
“最高峰のGI”と称される日本選手権競輪(以下ダービー)。今年で第79回を数えるダービーではこれまで多くの名勝負が生まれ、競輪ファンの心に感動のシーンが刻まれていることだろう。今回は「忘れられぬダービーの記憶」と題して、7名の競輪記者によるダービー決勝回顧をお届けする。(構成:netkeirin編集部)
今年2本目のGIレース日本選手権競輪が名古屋競輪場で4月29日から行われる。毎年レベルの高い白熱したレースが行われているが、今回は2018年の王者である三谷竜生(奈良・101期)のレースをプレイバックする。
前年の2017年に京王閣競輪場で行われた日本選手権競輪で悲願の初タイトルを獲得した三谷竜生。優勝コメントでは「ダービー王として恥じないように」と決して慢心することなく緒を締めたが、その後は度重なる落車の影響で思ったような成績を残せずにいた。
そしてディフェンディングチャンピオンとして迎えた2018年の日本選手権。初日の特別選抜予選では現在、輪界屈指のオールラウンダーである古性優作とタッグを組んだ。道中は絡まれるシーンもあったが、しっかり凌ぎ切り、古性の捲りにピッタリ追走。最後は直線一気に踏み幸先よく白星を挙げた。レース後は「自分は付いて行っただけ。古性君が全てやってくれた」と古性を称えると共に「決勝に乗って優勝を目指したい」と少なからず連覇を意識したコメントを出していた。
二次予選では3番手確保から捲り追い込むも牽制を受けて4着も準決勝進出。準決勝では8番手からの捲りで前団をひと飲み。直線ではやや一杯となり3着だったが、辛くも決勝への切符をゲット。連覇達成への望みを何とか繋げた。
【決勝並び】
①浅井康太ー⑧香川雄介
③脇本雄太ー⑦三谷竜生ー⑨村上義弘ー⑤村上博幸
⑥山中秀将ー④和田健太郎
②新田祐大
近畿勢が大挙し、4人が決勝に勝ち上がる。別線勝負も少なからず考えられたが、ガッチリとスクラムを組み磐石の布陣を形成。しかし、前年度のグランプリ王者・浅井康太や、GI3連覇がかかっていた新田祐大などと他地区も強力な面々揃い。脇本雄太の後位という絶好のポジションだったが、三谷の前には大きな壁が立ち塞がった。
当時の脇本雄太はS級1班(同年のオールスター競輪で初タイトルを獲得し、翌年から初のS級S班)。番手は連覇のかかる三谷に加え、3番手4番手には長きに渡り近畿を支え続けていた村上義弘と村上博幸。後ろに貢献するメイチ駆けも当然考えられていた。
初手は後ろ攻めとなった近畿勢。脇本は赤板になっても斬りには行かずに打鐘目掛けての強烈なカマシ。この仕掛けについて脇本は「自分の中で最悪なのは飛び付かれてラインが崩れること。ラインを最大限に活かすにはあのタイミングでした」と別線の分断策を読んで4人でしっかり出切る仕掛けを取ったのは流石のひと言。
前受けを選択した浅井康太は脇本のスピードに対応できず、近畿勢との車間は大きく空いてしまい万事休す。新田祐大、山中秀将も為す術なく優勝争いは近畿の4人に絞られた。仕事をする必要もなく三谷が差し切り連覇達成。村上義弘が続く形で2着。逃げた脇本雄太は3着に残った。
好メンバーが揃ったGIの決勝でラインワンツースリーフォーまで決めた脇本雄太の凄さはもちろん、重圧もあった中で有言実行の連覇を達成した三谷。ダービー連覇は過去に横田隆雄、高倉登、松本勝明、小橋正義、山田裕仁、村上義弘しか達成しておらず、史上7人目となる快挙を成し遂げた。
「優勝は素直に嬉しい。去年は近畿勢が自分1人だったけど、今年はラインのおかげで獲ることができた。昨年のグランプリは悔しい結果。今年のグランプリは優勝を目指したい」と更なる飛躍を優勝インタビューで誓ったが、ここでも三谷は有言実行。この年のグランプリ王者に輝いたのだ。
今でもグレードレースの常連だが、近年はビッグヒットを打てていない。ただ、時折見せる“目の覚めるような捲り脚”は衰えていないように見える。出世が早かっただけに求めるレベルや期待はどうしても高くなってしまうが、競輪は年を重ねても進化できるスポーツ。再起を図る三谷にはこれからも要注目だ。
(協力:公益財団法人JKA 提供:平塚競輪場)
netkeirin取材スタッフ
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