2021/09/05 (日) 12:00 3
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は向日町競輪場で開催されている平安賞の決勝レース展望です。
【平安賞】が行われている向日町競輪場は、400バンクかつ、軽さもあって走りやすいバンクなのですが、それでいながら捲りが効きづらい傾向も見られます。
ただ、今大会の脇本選手に関しては、そのデータは全く当てはまらないようです。準決勝の11レースでも7番手から一気に捲っていき、上がりタイムは11秒フラットの一番時計。今大会のメンバーならば、どの位置からでも、一気に捲ってしまうのではといった印象さえも受けます。
そう考えると、脇本選手に対抗できるだけの力を持っている、新田選手の失格はとても残念でした。S級S班では佐藤選手が決勝に進んできたのとは対照的に、松浦選手は準決勝で敗退。S級S班の2人が脇本選手に対抗するには、何人の味方を決勝に乗せられるのかがポイントになると見ていただけに、決勝の並びを見ると、更に脇本選手が完全優勝に近づいたと言えそうです。
決勝の並びですが、その脇本選手の後ろに、村上(博)選手が付ける近畿ライン。大石選手-内藤選手-田中選手の南関東ライン。そして、眞杉選手の後ろは北日本の佐藤選手-大森選手となり、瓜生選手は単騎を選択しました。
決勝では脇本選手の力をラインの結束力で止めて欲しいところですが、この3日間を見ていると、それも難しそうです。後続どころか、番手の選手も引き離している脇本選手ですが、決勝で後ろを回る村上(博)選手はダッシュ力がいいので、脇本選手の仕掛けにタイミングを合わせられるようなら、離されずに付いて行けるはずです。
ただ、スタートで誰も出なかった場合、脇本選手が前を取らざるを得ない可能性もあります。そうなると中団が南関東ラインで、その後ろに控えた眞杉選手が、そこから抑えて先行に入ると見ています。
今大会の脇本選手は、どのレースも引いてから一気に捲っていくので、南関東ラインは後方から中段に押し出される形となりますが、だからといって、大石選手は眞杉選手ともがき合うようなことはしないはずです。
先行する形となった眞杉選手の後ろを固めた佐藤選手が、捲ってきた大石選手のブロックに入ると思いますが、更にその上を脇本選手が一気に捲り切ってしまうのでしょう。
そうなると2着、3着争いが焦点となってきます。脇本選手の番手を回る村上(博)選手は勿論のこと、今大会の眞杉選手は調子が良く、その後ろに付けている佐藤選手が2着候補に浮上してきます。
調子のいい選手としては、単騎を選択した瓜生選手にも注目しています。脇本選手が勝利した準決勝の11レースでも、持ち前のスピードを生かした走りで2着となっていましたし、準決勝と同じように脇本選手が後続を引き離すようならば、車券圏内に入ってきそうです。
今大会は、脇本選手の強さをまざまざと見せつけられています。それでも「打倒脇本!」と考えている選手が若手から出てくれば、競輪は更に面白く、そして盛り上がってくるはずです。
その意味でも眞杉選手には、この決勝で脇本選手に勝負を挑んでいくようなレースを見せてもらいたいです。また眞杉選手のような若手の自力型の選手たちは、まずは脇本選手を目標にして練習を重ね、そして、レースで対戦する機会があれば、真っ向勝負をしてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。