アプリ限定 2025/05/06 (火) 12:00 26
名古屋競輪場で「第79回日本選手権競輪(GI)」が開催された。5月4日の決勝。吉田拓矢(29歳・茨城=107期)が眞杉匠(26歳・栃木=113期)のまくりをかわして優勝を手にした。2021年11月小倉「競輪祭(GI)」から遠ざかっていたGI優勝があった。
「1回やっているんで、自分。あの空気はちょっと…」
眞杉との思い出がある。2023年8月西武園「オールスター競輪(GI)」決勝は吉田が駆けて眞杉が番手まくりでV。しかし吉田は暴走で失格となり、長期の斡旋停止を受ける事態になった。眞杉の優勝だったが、その場はゾワゾワと…、う〜ん、後味が…。で、素直には喜んで振り返れないレースとなってしまった。
今回は眞杉の動きが審議となったが、最終4角付近では新山響平(31歳・青森=107期)と菅田壱道(38歳・宮城=91期)も外に動いていることから、一方的、著しいものとは判定されずにセーフだった。眞杉が外帯線を切っているので、アウトかも、と誰もが感じるような動きだったのは事実。ただし、規定に沿っての判定がすべて。眞杉はセーフでこの2着賞金は大きな意味を持つことになる。
タクヤはやっと全開で喜ぶことができた。2月豊橋「全日本選抜競輪(GI)」でも決勝で連係し、悔しい思いもあった。ついに、大きな笑顔を披露してくれた。眞杉としても「あのオールスターがあって今の自分があるので」と噛みしめていた。
審議については、今回のダービーでは4日目の二次予選10Rで清水裕友(30歳・山口=105期)の走りも話題に上がった。3角から2センターにかけて、まくってきた小林泰正(30歳・群馬=113期)をブロックしたところ、小林の後ろにいた雨谷一樹(35歳・栃木=96期)が落車してしまった。
この時、雨谷は小林の後輪に対し、前輪を内に差した形で落車している。外に差しての落車ならば、清水の動きによってあおりを受けて落車し、清水の動きによって落車が起きて失格という判定につながることが多い。内に差しているケースは、雨谷の動きもあって、でブロックした選手(清水)がセーフと判定される流れも、外から見ていると考えうる。そうしたケースもあった。
レースを見ていた選手たちも「パッと見はアウトだけど、雨谷が内に差しているので、その動きをどう見るかですね」と即座に話していた。このレースでは清水の一方的な動き、という判定で失格となった。ルールはルールなので失格だが、現役選手、また元選手たちが「あの清水の動きはすごい」と感嘆していたことは記しておきたい。
どんなレースでも当然、失格となったことは良くないことだ。だが、太田海也(26歳・岡山=121期)と寺崎浩平(31歳・福井=117期)が踏み合い、太田が内から突っ張り切るところを丁寧に外から追い上げ、寺崎をキメ、まくってきた小林を止め、太田を差し切っている、その走りは…。
称賛することは…違う…のか…と思うので、とにかくただ清水が必ず取り返す時が来ることを信じていると書きたい。
“車番”も積み重ねだ。率直に言って、松井宏佑(32歳・神奈川=113期)と岩本俊介(41歳・千葉=94期)の7番5番のラインは決勝の戦いにおいて不利だった。現行のルールにおいては、戦術が限られるのは間違いない。
だが、言い訳はできない。古性優作(34歳・大阪=100期)のようにグランプリを勝ったことで1番車を年間で走れる地位を得たことも事実。スタンディングを得意とする北日本勢も、武器を持っていたのが事実。ルールに対して、結果につなげる積み重ねがある。2人も「車番は厳しかったけど」も言い訳はなし。そこで対応しようとし、できなかったことが実力と、唇を噛んでいた。
目の前のただの一戦ではない。長く競輪選手として戦ってきて、決勝に向かってきたことが最後につながる。ざっくり見れば、北日本の前受けに対し、南関が抵抗し、サラ脚の眞杉のチャンスがあり、それに乗ったタクヤがモノにした。そう簡単に言うことはできる。
でも、そうじゃない。関東の2人が積み上げてきたものがあって、それをファンは知っていて、感動があった。名古屋バンクが発した、歓喜の叫びがあった。
X(旧 Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のXはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。