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「S級S班のイメージ見えてきてる」“令和の怪物”寺崎浩平が初タイトルに現実味/日本選手権競輪スペシャルインタビュー

アプリ限定 2025/04/27 (日) 12:00 13

初タイトルに期待のかかる寺崎浩平。早期卒業「第一号」として注目を集めた男は、当時史上2人目となる無傷の18連勝でS級へ特進。S級最速で優勝を飾ると『令和の怪物』として、その期待は更に高まった。あれから5年ーー。今年最初の全日本選抜競輪(豊橋)で準優勝、もはやGI制覇は時間の問題か。確かな手応えを胸に、ダービーでは頂点へと突き進んでいくだろう。また、支えとなり力の源になっている妻・舞織の存在についても語ってくれた。(取材・文=アオケイ・八角あすか)

“令和の怪物”寺崎浩平、GI制覇は時間の問題か(撮影:北山宏一)

武雄で7年9か月ぶりにバンクレコード更新! 同タイミングで大先輩も…?

ーーまずは前走・武雄記念をふり返って、シリーズを通していかがでしたか?

寺崎 脚の状態的には問題なかったけど、気持ちと体にちょっとズレがあって。あまり良くはなかったですね。

ーー気持ち的な部分とは?

寺崎 ウィナーズカップ(GII・伊東)から自転車を換えて、それが少し重たい自転車で。道中で重たく感じたりとか、出が良くない分、踏み遅れて行きどころを失うみたいな場面が多かった。自分が思っているよりもワンテンポ、ズレがありました。そのズレが思っていたよりも大きくて…。あとは花粉症もひどく、そこも重なってかウィナーズカップより、いい感覚ではなかったですね。

ーー最終日はバンクレコードを更新、今後に繋がる手応えは掴めましたか?

寺崎 セッティングをいじって、最終日は1回脚を使ってからでしたけど、スピードの乗り方は良かったですし、行くべきところで行ければ問題ないかなっていう手応えは掴めました。

ーーバンクレコード更新(※10秒6)については、どうでしょう?(テオ・ボスが17年7月15日に叩き出した10秒7のバンクレコードを7年9か月ぶりに更新)

寺崎 そこは素直に嬉しいですし、元々はスピードを活かした捲りが得意なタイプなので、初めて走るバンクで更新できたっていうのは自信になりました。

初めて走った武雄でバンクレコード更新!(撮影:北山宏一)

ーー先日は同じ福井の大先輩・脇本雄太選手も川崎記念(2日目)でバンクレコードを更新されていましたね。

寺崎 偶然というか、同じようなタイミングで更新してくるのが脇本さんらしいですね(笑)。

“脇本雄太の後ろ”から見た景色とは…

ーーさて、武雄記念から一週間弱、この間はダービーに向けて調整されていたと思います。仕上がりはどうですか?

寺崎 しっかりと追い込んで練習していました。福井で練習をして、2日間は(三谷)竜生さんや(三谷)将太さん、奈良勢が福井に練習に来てくれて、いい練習ができましたね。今回は直前に岸和田で合宿をやるっていうのはなかったです。

ーー今年のGI戦線、最初の全日本選抜競輪(豊橋)準優勝。タイトルまで、あと一歩というところまで来ました。

寺崎 今まで過去3度、GIでの決勝は全て9着(※)だったので、今年は「GIの決勝で確定板に載る」ことを1つの目標にしてやってきた中で、1つ目のGIで目標を達成できたっていうのは素直に嬉しかったです。正直、できるとは思っていなかったので。でも、最後に抜かれたのは単純に脚力不足だと思うので、しっかり練習しなきゃって感じでしたね。

※オールスター(22年・西武園)、寛仁親王牌(24年・弥彦)、競輪祭(24年・小倉)

全日本選抜競輪で讃えあう福井コンビ(撮影:北山宏一)

ーー続くウィナーズカップでも決勝入り(8着)。ここまでの成績をご自身でどう評価していますか?

寺崎 いい流れで来られていますし、今は自信を持ってレースに挑めている。いい流れが結果に結びついている感じですね。

ーー昨年の共同通信社杯(GII・宇都宮)の二次予選では脇本選手の番手を回る機会もありました。あのときの心境、経緯を教えてください。

寺崎 メンバーもメンバーで5着権利の勝ち上がり。あの時の自分の脚力、感覚だと前で発進するという形が多かったし、自信を持って勝負できる感じがなかった。勉強を兼ねて脇本さんの番手を回ってみたい気持ちもあったので、前をお願いする形になりました。

ーー今は自信を持って前で走れていますか?

寺崎 はい、そうですね。

ーー脇本選手の後ろから見えた景色ってどんな感じだったのでしょうか?

寺崎 展開上、内に包まれてしまった。カマシや捲りの展開で、どういう踏み上がりやペダリングなのかを体感したかったんですけど…。それでも、自転車に乗っている脇本さんのしなやかさ、無駄のない感じを体感することができて、自力選手としては理想形だなと感じました。

頼もしい味方は、倒さねばならない“最大のライバル”

“偉大すぎる存在”をいつか超えるために…(撮影:北山宏一)

ーーGIでは昨年の競輪祭で古性優作選手、今年の全日本選抜競輪では脇本選手がラインから優勝。お二人は頼もしい味方でもあり、寺崎選手がタイトルを獲るためには倒さないといけない最大のライバルかと思うんです。お二人は、どんな存在ですか?

寺崎 そうですね…本当に存在が偉大すぎて(苦笑)。やっぱり、輪界の自力トップの脇本さんと、何でもできてヨコの動きはトップの古性さんが同じ近畿にいることは刺激になっています。練習を一緒にさせてもらうことが昨年から多くなってきて、考えて乗っているなっていうのは間近で感じています。

ーーお二人それぞれから、どんなアドバイスを受けているんですか?

寺崎 レースの内容や乗り方だったり、心構えなどもアドバイスしてもらうことが多いので、それがようやく自分の中でレースに活かせている実感がありますね。

ーー古性選手はがウィナーズカップの際に、寺崎選手について「頭が良くて、自分のアドバイスをしっかりと考えて、それを体現できる能力がある」とお話されていました。

寺崎 古性さんは言語化がすごく上手いんです。自転車の乗り方って抽象的なイメージで教えてもらうことが多いんですけど、古性さんは的確で分かりやすい。走り方やセッティング、乗り方まで全部、的確に教えてもらっています。

ーー近畿勢全体で言うと、若手選手の勢いも感じます。脇本選手や古性選手に比べて、寺崎選手は若手選手と歳が近いと思うのですが、ご自身が担う役割ってどう考えていますか?

寺崎 そうですね、すごく難しい立ち位置というか…。僕も期こそ若いですけど、年齢的には31歳で、そんなに若くはないので。近畿は古性さんや脇本さんが突き抜けすぎているし、なかなか若手は2人の前を回るのは難しいというか。ちょっと萎縮してしまう部分もあるし、どうしても発進ってなると…。自分も勝つ競走をしないといけないんですけど、責任感もあるじゃないですか。僕もそういう経験をしていますし、古性さんも脇本さんも「自分の勝つ競走をしてくれ」とは言ってくれるけど、他のメンバーやラインも強いので、難しい部分もありますよね。

(撮影:北山宏一)

ーー近畿でGIの決勝に乗れる選手となると、寺崎選手が最年少。若手選手のレベルアップには、寺崎選手のアドバイスなどが今後はより求められていくのかなと。

寺崎 自分も走りで見せていきたいというか、お手本になれるような走りをしていかなきゃなっていう段階に来ていると思います。そういった立場であるってことを意識はしていますね。

究極の理想形はやっぱりあの男

ーー寺崎選手が考える「強さの定義」はありますか?

寺崎 同じレースを走る9人の中で『自分が一番強いと思っている選手』が僕の中では強いと思っています。メンタルもだし、技術なり脚力をレースで体現できる人がトップを獲れるのかなって。

ーー以前にヨコの対応を求めて、セッティングを試しているなんてお話もありましたが、究極の理想形ってありますか?

寺崎 理想形って言ったら古性さんですね。僕も何でもできる選手になりたい。

ーー脇本選手もヨコへの対応を求めて模索中のようですが、一緒に練習する時ってヨコの練習はされるんですか?

寺崎 ほぼほぼ、ないですね。レースで身につけるのが基本だと思いますし、あとは今の福井の練習グループだと、全員が“ド自力”なので。ヨコの動きや当たり方を教えてくれる選手がいない。岸和田に行って、古性さんや南(修二)さんにアドバイスをもらったり。奈良勢だと、将太さんですかね。

ーー岸和田に練習しに行って、大阪勢の雰囲気って寺崎選手から見てどんな感じですか?

寺崎 すごくいい雰囲気だと思いますし、福永(大智)や中釜(章成)とか頑張っている若手選手が多い。自分より年下の選手が出てきてくれて、嬉しいです。

ーー中釜選手は元気にやっていますか?(※全日本選抜競輪で暴走失格。現在はあっせん停止中)

寺崎 はい(笑)。それはもう全然、元気に練習をやっていますよ。パワーアップして戻って来てくれると思います!

全日本選抜競輪で暴走失格となった中釜の復活も楽しみだ!(撮影:北山宏一)

ナショナルチーム引退、早期卒業「第一号」

ーー話の時系列が戻ってしまいますが、早期卒業の第一号としてデビューされました。そこに関して、今、ふり返ってみて大変さはありましたか?

寺崎 同期が他にいない中で右も左も分からない状態で、卒業して一ヶ月もしないぐらいでデビューして準備もすごく大変でしたし、注目度って高いのか低いのかっても自分自身は分かっていなかった。当時は「18連勝してもらわないと困る」みたいな雰囲気もありましたね(苦笑)。

ーーナショナルチームに在籍(20〜23年)されていました。改めて、代表引退の決断に至った理由を教えてください。

寺崎 世界選手権(8月)の結果から、オリンピックポイント的にパリ五輪に出場できる可能性がほぼほぼなくなって、その時点でナショナルチームを続けても仕方がないなっていう思いが薄々あって。そんな中、オールスターで日本の競輪に参加して「楽しいな」と思えた。それが最大の理由ですね。

ーー寺崎選手が思う「競輪の楽しさ」ってどんなところですか?

寺崎 1着を取らないと楽しくないですが、競輪は個人競技だけど、チーム競技みたいな側面があり、そこに面白さがあります。自転車競技は個人戦だけど、競輪には「絆」があったりして、すごく楽しい。自分が熱くなれるものの1つですね。

ーー競輪に専念して良かったなと思いますか?

寺崎 純粋に今は思えています。

寺崎浩平にとって家族の存在はすごく大きい(撮影:北山宏一)

ーープライベートでは、舞織選手とご結婚(21年)。お子さんも誕生されたということで、ご家族の支えは大きいですか?

寺崎 家族の存在はすごく大きいですね。一家の大黒柱じゃないですけど、そういう自覚も芽生えましたし。子どもが生まれて成績が落ちる選手もいるって聞きますが、僕の場合は競技時代に子どもが生まれて、成績がすごく良くなりました。実際に競輪の方も良くなっているので、家族の存在はでかいですね。

ーー舞織選手も復帰されて結果を残されていますね。ご夫婦でレースの話はされますか?

寺崎 よくします。レースも一緒に見たり。練習も普段から一緒にしているので、苦しみとかを共有できるのはお互い大きいんじゃないですかね。

ーー支えてくれるご家族のためにも、タイトルを獲りたいですね。

寺崎 現実的にタイトルを獲れるような脚力は付いてきていると思うので、チャンスを掴むだけかなと思っています。

ーー迫るダービーに向けて、最後に意気込みをお願いします!

寺崎 名古屋は相性がめちゃくちゃいいし、まずは決勝にしっかり乗れるように。賞金も大きいので、賞金ランキングにおいても一番重要な大会になると思う。最近は本当に現実的に「S級S班」っていうイメージが見えてきている中で、しっかりと結果を出していきたいなと思います。

あとはチャンスを掴むだけ!(撮影:北山宏一)

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