アプリ限定 2025/04/29 (火) 18:00 4
“最高峰のGI”と称される日本選手権競輪(以下ダービー)。今年で第79回を数えるダービーではこれまで多くの名勝負が生まれ、競輪ファンの心に感動のシーンが刻まれていることだろう。今回は「忘れられぬダービーの記憶」と題して、7名の競輪記者によるダービー決勝回顧をお届けする。(構成:netkeirin編集部)
前年は新型コロナウィルスの影響の為に開催中止となっていた競輪ダービー。皆がマスクをし、手指消毒。食事も黙食。テレビではコロナ関連のニュースしか流れず、連日、患者数が発表されていた。この開催も当初は入場制限を行った上でとなっていたが、東京都に緊急事態宣言が出され、無観客で行われた。
また、東京オリンピックを控えた脇本雄太、新田祐大、深谷知広、松井宏佑が欠場。いつもとは違う重々しい雰囲気の中での開催となったが、一流選手たちは日々練習を積み重ね、すばらしいパフォーマンスを見せてくれた。郡司浩平は小倉競輪祭・川崎全日本選抜と連続で制覇し、GI3連覇が懸かっていた。そして松浦悠士はこの年、GIIIを9場所優出し、岸和田・高松・広島in玉野・武雄と4つの記念を獲っての参戦だった。
【決勝戦メンバー】
①平原康多
②郡司浩平
③松浦悠士
④武藤龍生
⑤浅井康太
⑥松岡健介
⑦清水裕友
⑧眞杉匠
⑨佐藤慎太郎
【初手の並び】
⇐⑦③・⑥・⑤・⑧①④・②⑨
赤板で郡司が関東勢にフタする形で追い上げる。ジャン過ぎで郡司が前に踏み込むが前受けをした清水が突っ張り、郡司は3番手に居た松岡の所に降りて好位を確保。最終バックでは松浦が車間を少し空けて後ろを牽制。最終3コーナーから郡司が捲り追い込みをかけると松浦が外に張りながら前に踏む。直線では郡司マークの佐藤も内から踏み込み、ゴールは3車横並びの接戦に。長い写真判定の末、優勝は松浦、2着に郡司、3着は佐藤。
決定発表後に松浦と清水が『よしっ』とハイタッチを交わしたのが印象的だった。この頃の松浦悠士と清水裕友は『中国ゴールデンコンビ』と言われており、開催地・メンバーの組み合わせ・本人の調子等で前後を入れ替わり、結果を出してきた。レース後の松浦のコメントでも「僕たちは流れの中で出し惜しみはしない。上手くレースの流れに乗るって事を頭に入れているので。失敗する時もありますけど、お互いの信頼関係があればこそだと思います」と戦友・清水との信頼関係を口にしていた。
この年の3月に行われた松阪ウィナーズカップでは松浦が前回りだった。捲り上げ番手を取り切り先捲り、直線で清水が鋭く抜け出して優勝。この二人の強みは、両者とも何でもできるオールラウンダーであること。逃げ・捲り・イン粘り・外からの追い上げ全てができるから安心して任せられる。
勿論、得意不得意があるのでメンバー次第で展開を想定し前後を考える。松浦がダービー初制覇を成し遂げられたのは戦友・清水と一緒に決勝に勝ち上がれたことが大きい。上のクラスで戦うには一人の力では限界がある。ましてやダービーは6日間と長丁場。信頼できる戦友と共にラインを組み、自分よりも能力の高い選手に打ち勝つ。これぞ競輪の醍醐味なのではと思う。高いレベルで『阿吽の呼吸』を見せた中国ゴールデンコンビ。この松浦の優勝が印象に残っている。
(協力:公益財団法人JKA 提供:京王閣競輪場)
netkeirin取材スタッフ
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