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四日市「東海情報」競輪予想屋人生27年の矜持「AIにはない人情がここにはある」

2025/04/20 (日) 12:00 6

1952年に誕生した霞ヶ浦競輪場は時を経て四日市競輪場へと姿を変えた。夜を彩るナイターの演出が“非日常”空間に灯りをともし、仕事帰りの若者や女性も足を運ぶ競輪場へと生まれ変わった。予想屋『東海情報』の白塚山照男氏は27年間、四日市競輪場で予想台に立ち続けてきた。競輪に生き、言葉で勝負するその姿の秘密に迫る。(取材日:2025年4月8日)

夜を彩るナイターの演出が“非日常”空間に灯りをともす四日市競輪場(四日市市提供)

ーーなぜ予想屋という道を選んだのですか?

 元々居酒屋を経営していたのですが、初代『東海情報』予想屋川口さんに誘われて迷うことなく弟子入りしました。川口さんは東海地区の予想組合「競輪情報組合」の会長。『東海情報』は四日市競輪場の一番良い場所で売ることが許されていて、とにかく繁盛していました。当時台は8台あって、華やかな時代で「この商売は良い」と思っていました。

ーー予想屋歴は何年になるのでしょうか?

 誘ってもらったのが27年前かな。その後3年間、川口さんのもとで修行をさせてもらっていたのですが、川口さんが年齢的に四日市競輪場まで通うのが大変になってきていて、自宅から近い「川越場外車券売場(三重郡川越町)」に専念されることになりましたね、それで僕が四日市競輪場の台をあずかることになったのです。なので、任されてからは24年ほどです。

ーー師匠から受けた影響は大きいですか?

 それはもちろん。いつまでも川口さんが師匠です。師匠の教えは今も心に刻んでいますよ。

「まず、台に立てば、五分の勝ブ(※師匠の教えで「負」いう漢字を使わないそう)」
「怯むな、侮るな、強気で行け」

「当たっても天狗になるな。謙虚になれ」
「当たりハズレは時の運」
「本線レースか穴レースかを見極めよ」
「頭を揃えて絞れ」
「当てに行く予想で勝ブせよ」

 この教えを来る日も来る日も徹底的に心と体に刻み込まれましたけど、師匠はとても優しい人でした。「きっといい日が来る」といつもにっこりと微笑んでくれたことが印象に残っていて、今でも時々その笑顔を思い出すことがあります。

ーー予想屋をやってみて、始める前と現在とでギャップを感じましたか?

 川口さんから予想屋の“いろは”をみっちりと教わっていましたから、ギャップを感じることはあまりなかったですね。ギャップではないですけど、予想屋になってから悔しい経験はたくさんしましたね。あと一点、二点多く買い目を出していたら当たってたということはいくらでもありました。買い目を増やせばもう少しは当たっていたと思うけど、「自分の目で勝ブ」するのが『東海情報』の予想なので。

ーー予想屋としてのやりがいはなんですか?

 やっぱりお客さんに当てていただくこと。それでご祝儀をもらえたら最高だよね。それ以外だと、自分の予想でオッズを下げたときかな。配当は安くなっちゃったけど、予想屋冥利に尽きる思い出でしたね。

ーー予想で特に重視していることはありますか?

 レースの選定と買い方ですね。本線なのか穴なのか。本線なら裏か表かどちらかを決めないといけない。両方買ったら儲からない。「穴なら頭一本で行け」というのが『東海情報』のレースの狙い方ですね。予想の組み立ては、番組の意図、選手の調子、能力で判断しています。

ーーなぜ4点買いなのですか?

 もともとは5点だったのですが、より儲けるために、さらに絞って4点にしました。師匠の教えの「頭は揃えよ」です。挫けるときもありましたけど、魂を込めた予想を出していきたいと思っています。

ーーどんな予想屋でありたいですか?

 ずっと「魂の予想屋」でありたいですね。プライドを持ち続けていきたい。今のスタイルを崩さずに10年、20年とやっていきたい。AIの時代になっているかもしれないけれど、四日市競輪場には人の優しさや人情がある。お客さんと人と人とのつながりを大事にしていきたい。自分には競輪予想しかありませんからね。

ーーズバリ「競輪予想」とは?

 お客さんを儲けさせるのが競輪予想。我々は話して、今はネットで予想の情報を提供する。4点なのでハズレが多いけど、競輪には動きがあって、ドラマがある。そして、難しい。この難しいギャンブルをみんなに知ってもらって、楽しんで儲けてもらうのが競輪予想かもしれません。

ーー最後に競輪ファンに伝えたいことがあればお願いします。

 これからもファンの皆様に寄り添い、笑顔になってもらえるよう、努力し、感謝して頑張ります。

競輪にはドラマがあるが、競輪予想屋にもドラマがある。42歳の時に命の灯が揺らぐような病に見舞われた白塚山氏。自分の命と真剣に向き合った経験が、今も心のどこかで灯り、予想屋としてのプライドや生き方を照らしてくれている。「今日のことは今日で忘れろ。当たらない方が多い。昨日のことは忘れろ、明日は明日の風が吹く」師匠の言葉そのままに、今日も白塚山氏は魂の予想を紡ぎ出していく。


【プロフィール】
東海情報
白塚山照男。62歳。四日市競輪場でただひとりの公認場立ち予想屋として活動中。最大の特徴は少点数での勝負車券。

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