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前田睦生の感情移入

【競輪と音楽】さまざまな場面で心に刻むファンファーレ、躍動と血流…未来の競輪はどうなるのか

2025/03/22 (土) 12:00 9

競輪にはさまざまな場面で音楽が流れ、思い出の一つに(撮影:北山宏一)

競輪に関する音楽

 競輪にはファンファーレがつきものであり、選手紹介や、いろんな場面で音楽が流される。装飾としての機能を果たしているわけだが、それもまた重要。心に残り、刻まれ、あの時代を、あの瞬間を、感じることになる。

 私は入場時にかかっていた「Way to the victory」が好きで、♪チャラララ、チャーチャッチャチャ〜、と流れてくると身も心も引き締まる。最近では使われなくなった曲だが、復刻版のシリーズのような形でもう一度、と思っている。

 しばらく前、川崎競輪場で「名人戦」が行われていた。ベテランを集め、当時の音楽で、という企画があり、その時は昭和の運動会のような音楽ばかりだった。「ああ、こんな時代があったんだ…」と体験したことのない空間に酔ったものだった。そのメンバーの中では。10年は前と思うが、倉岡慎太郎(57歳・熊本=59期)が若手自力の扱いだった。

 ボートレースのような名人戦とは違い、ラインの先頭を務める選手が必要なので(競輪では歳を取るとみんなほぼ追い込み型になる)、競輪では名人戦は行い難いものだが、あの時の開催はそれはそれで面白かった。

アジフライ

3月末で所長を退任する滝澤正光の歌も涙なくして聴けない

 競輪に関する歌、といえば友川カズキが究極だ。吉岡稔真氏(引退=65期)のことを歌った、絶唱した「空と手をつないだ男」(空のさかな、1999年)はぜひ聴いてほしい。緊張感が、曲の中で爆発している。

 滝澤正光氏(引退=43期)のことを歌った曲など、心に突き刺さるものがある。涙なくして聴けないのは「夢のラップもういっちょう」(ぜい肉な朝、1997年)だ。憧れゆく理由がそこかしこにある…。

 競輪を歌にしよう、とか、競輪を広める何かを音楽で、といった発想からではなく、内からほとばしる思いが音楽になった。それが友川カズキの曲だ。「心優しきろくでなし」(空のさかな)を聞いていなければ、私は競輪場には行っていない。

 現代の人たちに聴いてほしい、と強く思う。

ファイトマネーと三本ローラーの詩

村上義弘氏の選曲は「あしたのジョー」だった(photo by Shimajoe)

 競輪選手が歌ったものもあり、近年では(それでもちょっと前だが)「ファイトマネー」(仲山桂、引退=66期の作曲)が強烈だった。山口幸二氏(引退=62期)、山内卓也(48歳・愛知=77期)、加藤慎平氏(引退=81期)、吉田敏洋(45歳・愛知=85期)が熱唱する傑作だ。「湿度100パーセントの」から始まる歌詞は、毛が逆立つ。

 また古くは「三本ローラーの詩」(添田広福、引退=49期)がある。夢道場、というグループを作り、山崎芳仁(45歳・福島=88期)や佐藤慎太郎(48歳・福島=78期)の師匠にあたる。衝撃のエピソードが慎太郎の著書「限界?気のせいだよ!」(2025年、発行:株式会社KADOKAWA)に記されているので、こちらを読んでほしい。

 現在ではガールズケイリンのテーマ的な曲などもあり、抽出的にイメージを与える感じもある。だいぶ前には、選手それぞれが「自分の好きな曲を」と登場時にビッグレースの時に選ぶ企画があり、村上義弘氏(引退=73期)が「あしたのジョー」だった時は全身が震えた。そして、弟の博幸(45歳・京都=86期)が選んだのがドラゴンクエストの「ロトのテーマ」だった時には鼻血が出た。

 公営競技、ということでショーアップに遅れがちな一面を持つ競輪だが、もうそんな時代ではない。かつて挑戦されてきたこともある。競輪には音楽が合う。躍動的な時間、空間を作る、新しい時代になる必要がある。

躍動的な時間、空間を作る、新しい時代になる必要がある(撮影:北山宏一)


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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