2025/03/26 (水) 12:00 17
前橋競輪の「第12回施設整備等協賛競輪in前橋 桜花爛漫!まえばし春風賞(GIII)」が3月27〜30日に開催される。いわゆる“裏記念”“裏GIII”と呼ばれるものだが、メンバーは豪華。四日市ナイターGIIIを優勝した和田真久留(34歳・神奈川=99期)や、荒井崇博(46歳・長崎=82期)、小倉竜二(48歳・徳島=77期)、そして山崎芳仁(45歳・福島=88期)といった強力ベテランの名前もある。
中でも注目は柴崎淳(38歳・三重=91期)だ。前橋の柴崎といえば、有名で愛される(本人にとってはたまったものではないだろうが)逸話がある。ムカデに、やられた。2021年10月の前橋GIII、初日特選に備えてのウォーミングアップの時だった。
「痛って〜〜!!」
絶叫が管理棟の入り口に響いた。ちょうど私は取材に降りるエレベーターから出たところだった。ドアが開くと、苦痛に顔をゆがませたあっちゃんが「ムカデ…」と叫びながら医務室に向かっていった。
そのシリーズの柴崎は優勝候補の有力選手で、賞金や点数を稼ぐ大チャンスだった。それをムカデによって奪われた。今回、取り返すしかない。
しかしその後も落車による大ケガ、そして重度の腰痛と天才はアクシデントに襲われ続けている。2月豊橋の全日本選抜競輪(GI)を前にして、勝負のGIを前にして、ヒトメタニューモウイルスに感染し「死ぬかと思いました」と悲劇を語った。
なんとか地元の四日市ナイターGIIIには間に合い、らしい脚色を披露していた。決勝には乗れなかったものの、ここからまたやれる、を感じさせた。何より「山内卓也さんに紹介してもらったところで、原因がわかったんです」ーー。
腰痛のダメージは重く、体はボロボロ。治療しても良くはならず、付き合っていくしかない。という状態だったが「胸の所の骨でした。そこが動いていないから」と体の芯の部分に腰痛につながる不具合があったのだ。
現在の体も分析してもらい(コマネチのポーズを取りながら)「ここにちょっとだけ筋肉があるんですが、それが異様に俺は強いらしいんです。その筋肉だけで走っているそうで。だから、全身を使えたらどうなることかと!」。両太ももの付け根をさすりながら、笑顔を見せていた。
四日市から時間はあまりないが、それでも上積みがあるだろう。「もうええでしょう!」と嘆くムカデの物語は、今回優勝することで華やかに散らすしかない。悲劇の天才が、高速バンクで復活の雄たけびを上げる。
X(旧 Twitter)でも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のXはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。