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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士のGI回顧】感謝の心とともに来年のリベンジを誓う! 今はチャンピオンユニフォームで走る広島記念に向かって

2024/11/29 (金) 18:00 9

競輪祭は“ラスト1枚の切符”をかけて猛攻を繰り広げた(撮影:北山宏一)

 netkeirinをご覧のみなさん、こんにちは松浦悠士です。今回はグランプリ出場へラストチャンスを懸けて臨んだ競輪祭を振り返ります。残念ながらグランプリ出場には届きませんでしたが、その一点をめがけて走ったこと、ここまでやってきたことに対して後悔はありません。それでは詳細を報告しながら、振り返っていきたいと思います。

気持ちはひとつだけ「獲るしかない」

 “獲るしかない”という思いだけを胸に競輪祭へ入りました。直前の四日市記念で良くなっている状態を感じてはいましたが、GIで結果が出ていないため、調子については「走ってみなくてはわからない」と表現していました。

 いよいよスタートした一次予選、1走目は雄吾が目標でした。最終的に雄吾が先頭に出てくれましたが、僕に関しては1センターから2コーナーにかけての判断が正しかったかどうかわからないです。

 後ろは見ていませんでしたが、お客さんの歓声で窓場君が仕掛けたことを察知しました。スピードを合わせなければ止められないので、ある程度踏みながらけん制する感じでしたが、雄吾の横まで行き過ぎてしまった感があり、これが自分の中では納得できない反省ポイントです。

 しかし、あれくらい踏んでいかないと止めれなかった可能性もあるし、振り幅もかなり行っていたので、難しかったです。なおかつ、自分の想定よりも自転車が進んだ感覚もあって、位置関係も図りにくいものがありました。出来る限りのことはやろうとしましたが、今振り返ればもう少しやりようがあったかなと考えているシーンになっています。

気分良く誕生日を迎えられた

 普段の長丁場開催は「2走して休み、残り3走」を理想としていますが、今回は2走目が2日目でも3日目でもどちらでも構わないって気持ちがありました。それにしても2走目の太我の走りはすごかったです。レースは太我も2着条件でしたし、僕自身そこに意識もありましたから、スタートの位置だけ決めておいて、仕掛けのタイミングなどはすべて彼に任せていました。首尾よく3番手に入り、スッと行けてしまった走りは「強い」のひとことに尽きます。“感性で”走った太我のレース内容は完璧だったのではと感じています。

2走目の広島ワンツーを演出した後輩・町田太我(写真提供:チャリ・ロト)

 僕自身の状態も良くて、踏んだ感触も申し分なかったですし、ピンピンで勝ち上がりダイヤモンドレースに進めたのは本当に大きい意味がありました。張り詰めていた気持ちに余裕も生まれましたし、何より一次予選は2走とも窓場君がいましたし、2走目には小原君だっていました。そんな強敵を相手に勝ち切れているのですから、確かな自信も得られました。競輪祭の3日目が僕の34回目の誕生日でしたが、気分良く歳を重ねられました。あのワンツーは嬉しかったですね。

連勝でダイヤモンドレースへ進出し安堵の表情を浮かべていた(写真提供:チャリ・ロト)

お客さんの雰囲気にも助けられ、流れはどんどん勢いを増す

 4日目のダイヤモンドレースは単騎戦でしたが、関東ラインが前受けならば駆けるか粘るかのどちらかだろうと思っていたので、動きを任せた上で、ある程度その近くにはいたいと考えて走りました。僕の前には郡司君がいましたが、1車だけ前にいるくらいなら、と許容範囲でしたね。レースは踏み合いになり、浮いていた新山君の外を行こうかと踏みかけたのですが、僕は過去に同じような判断で失敗したことが多々あるため、一回待ってみようと判断しました。

 仕掛けられる余裕は感じていたので最終バック付近で仕掛けようとしましたが、タイミングが合わなくて一旦やめたところで、古性君が外に来ていました。すぐに「外は無理だなぁ」って感じましたし、もう内しかないと迷いなく走れましたね。あのメンバーの中で勝ちに行き、しっかり勝っての3連勝。自信を持って準決勝に向かうことができました。

 今までは準決勝が確定している優秀競走は力勝負にこだわっていました。本当ならば力勝負に行き、力で勝てるのがベストですけど、こういうレースの進め方も良いかもしれないと振り返っています。

快進撃の3連勝、錚々たるメンバー構成の中でレースを読み切った(撮影:北山宏一)

 そして準決勝、目標は犬伏君。競輪祭2節前の京王閣記念準決勝で連係したとき、作戦段階で仕掛けるポイントを決めておき、僕は「こう走るだろう」という予測ありきで追走をしてたんです。でも実際のレースでは作戦通りに行かず、ということがありました。そのことも影響して、今回は犬伏君自身が行きたいタイミングで仕掛ける作戦でした。レースのシナリオを決めておくと、その通りにならないと厳しくなります。任せると決めれば追走に専念しやすいといった判断でした。

 それにしてもあれだけの距離の車間を切って一気に行けるのは脇本さんか犬伏君だけだと思います。僕は一切の余裕がなく、追走がギリギリでした。そこに余裕が欲しいんですよね。出切ってから犬伏君もキツそうになり、付け切ってからやっと僕には余裕が生まれた感じです。結果はワンツー。強い走りをしてくれましたし、決勝を考えると大きなワンツーです。GI準決勝という舞台でのワンツーは相当に難しいこと。本当に嬉しい気持ちでした。

観衆の目の前でド迫力のワンツー、犬伏湧也と揃って決勝へ(撮影:北山宏一)

「決勝がスタートライン」と言い続けて、その決勝まで4連勝で辿り着けました。自分の今場所に懸ける思いを感じてくれて、会場のお客さんもすごく雰囲気を作ってくれました。あの空間、僕もすごく昂っていました。「決勝は絶対にチャンスがある」と思い込んでレースに臨めました。結果はすでに出ていますが、決勝を走る前の僕は“獲れる気”しか感じていませんでした。

4連勝の勢いとスタンドの声援、“獲るしかない”の空気が自信に変わっていく(撮影:北山宏一)

決勝で感じた悔しさ「もっと脚力があれば」

 決勝の作戦は「突っ張るか、粘るか」でした。もしも引くことになったとしても、最終ホームまでに行かなければ、と話はしていました。やっぱり近畿がうまかったですし、打鐘で犬伏君が行きかけてやめた際に僕と荒井さんはバックを入れる形になってしまいました。ここでバックを踏んだのは痛かったですね…。あれがなければ、その後のレースにもあのタイムにも対応できたと思うだけに、勝敗を分けた致命的なポイントだと思います。

突っ張りか飛びつきを狙っていた決勝(撮影:北山宏一)

 でも、その辺も含めて寺崎君がうまかったと思います。強い選手が前に2人いるわけですし、3番手にはヨコが強い村上博幸さん。ラインの総合力はきわめて高いです。近畿勢がラインとしてしっかりと戦って、僕たちはラインとして機能していなかった。この点に差があったことは事実ですね。

 でも結局自分に脚力があれば、しっかり付いていって抜けるんだってことに尽きます。1コーナーの仕掛けの時点でかなりキツかったし、脇本さんと犬伏君は先に内外線間に行って、僕は博幸さんと並走になりました。あそこで超えるスピードがあれば、アタマまでは厳しくとも中割で2着というのはあったと思います。

 そして、あの展開ならば犬伏君には優勝して欲しかったんですが、寺崎君も上手だったし、無理矢理っぽく出て行った割に脇本さんは最後まで踏んで押し切ってしまうんだから…。“負けたなぁ”って思いの中で、ただただ悔しさを感じる一戦でした。

グランプリ出場まで“あと1歩”のゴールシーンだった(撮影:北山宏一)

お客さんへの感謝とともにチャンピオンユニフォームを着て精一杯やる

 シリーズを終えて感じているのは、ここまで来ることができたことに対する“感謝”です。雄吾や太我、犬伏君のおかげで決勝の舞台に立つことができたということ。そして、応援してくれたお客さんの声や期待してくださる気持ちもハッキリと感じました。それらすべてが自分を奮い立たせてくれたんです。「ありがたいなぁ…!」と決勝を走る前から感じていました。いつでもこういう応援をもらえたらなって思ったりもしました(笑)。優勝はできませんでしたが、素晴らしい開催だったと思っています。本当にありがとうございました!

シリーズ中、何度もスタンドを見上げていた(撮影:北山宏一)

 グランプリに出られないのは仕方ないことです。自分のできることはやりましたし、過去に戻れるわけでもない。自分の中ではその場面、その場面でやるべきことを真剣にやってきたつもりです。これでダメならしょうがないと悔いなく受け止めています。そして、今考えていることは「来年のグランプリを獲ること」、「残りの記念開催で良い走りを届けたいということ」です。

 大垣記念も地元広島記念もまだチャンピオンユニフォームを着て走るわけですから、少しでもいいところを見てもらいたい。今年は全然いいところを見せることができませんでしたから。今は乗り方を意識してケガをする前の状態に戻せていると思います。精一杯頑張りますので、応援をよろしくお願いします。

 来年は必ずリベンジしてグランプリに出ます。復活する姿を見てもらいたいです。そして! 今年のグランプリは裕友に獲って欲しい!

松浦悠士の2024年はまだ終わらない(撮影:北山宏一)

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

ーーこの1年、ケガに悩まされ苦しい時間を過ごしていたと思います。そういう時期を乗り越えて上昇する姿を見ているのでファンは信じています。松浦選手が“次に目指すもの”はなんでしょうか?

 グランドスラムが目標なので、まだ獲れていない全日本選抜競輪、高松宮記念杯競輪、寛仁親王牌の3つを獲りたいですね。

ーー京王閣記念で123期の西田優大選手と連係がありました。西田選手が「松浦さんがいろいろと教えてくれて」とコメントしていましたが、GⅢに上がりたての若い選手にどんな「教え」をするのでしょうか?精神面ですか?戦術面ですか?

 これは両方ですね。京王閣の時は「とりあえず逃げとけばいい」みたいな考えはしない方がいい、そんな事を伝えました。2人でしっかり勝ち上がることが大事になるからです。今後上のステージで戦っていくために、どうやって勝ち上がっていくか、勝っていくか。それらを思えば「自分の武器は何か」を把握する必要があります。

 西田君だったら先行が武器だと思いますから、航続距離がどれくらいなのか自分で理解しておくと良いと思いました。ラインとして戦った時に幅も広がるし、意識することで航続距離も伸びていく。相手が来ていないのに強引に踏んで最後持たなくなっても意味がないと思うんです。西田君にはそのあたりのことを伝えました。

ーー松浦選手に感謝していることがあり、どうしても伝えたいことがあります。手紙はどこに送れば確実に受け取ってもらえるのでしょうか?

 ありがとうございます! 広島支部の選手会に送ってもらえれば確実に受け取れると思います!

◆日本競輪選手会広島支部
〒734-0011 広島県広島市南区宇品海岸3丁目328-532

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松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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