閉じる
松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士のGI回顧】2025年後半戦へ! S級S班の“格”に相応しい走りができるように

2025/06/29 (日) 18:00 11

松浦悠士(写真提供:公財JKA)

 netkeirinをご覧のみなさん、松浦悠士です。オールスターのファン投票ありがとうございました。僕は最終結果9位となり、6年連続でドリームレースに選出いただきました。この結果には感謝しかありません。中間発表で上位になっていた時点で、すごく嬉しかったです。レースで良い所を見せられていないのに、こんなに応援してもらえるとは思っていませんでした。“まだまだ自分も諦めたらいけない”という言い方はおかしいかもしれませんが、応援してくれる人達の期待に応えられるようにしていかなくては、という思いです。

好感触あったが準備不足は否めない落車後

 それでは今月は高松宮記念杯を振り返っていきます。宇都宮記念の落車で肋骨を骨折して、別府記念を欠場。復帰戦という形で宮記念杯に入りました。ケガの痛みはなくなっており、感覚自体も良かったように思います。ただ開催まで日数が空きましたし、練習も万全にはできなかったので、そういった部分では落車の影響を感じるシリーズでした。

 初日と3日目は良い感覚をうまくレースで活かすことができませんでした。3日目に関しては初日に感じた課題に対応しようと反省を踏まえた結果、それが失敗してしまった感も…。アップの段階だったりフォームだったりは悪くなく、むしろ良かったかなとも振り返っています。4日目も5日目も良い感覚の中で走れていました。それでは順を追って書いていきたいと思います。

コンディションは良くとも実戦で活かせるかは別物(撮影:北山宏一)

宇都宮の落車シーンがフラッシュバック

 シリーズ初日は海也との連係でした。海也はしっかりと力を出してくれましたし、自分が連係を決めきれなかった点には課題を感じています。海也の独特な踏み出しのタイミングや加速の仕方はなかなか対応が難しいものがあります。ここに対応していかなければいけませんし、難しいとは言っていられません。今後も連係はあると思うので、しっかりと対応していかなくてはと考えています。

 2日目はレースがなく、迎えたシリーズ3日目。2走目は犬伏君との連係でした。初日の反省を踏まえて、離れないように出脚の方に意識した乗り方に変えました。体を大きく使って、よりダッシュに振ったような走りで臨みました。ただ、(絡まれると表現するよりは)大きい牽制があって…。体を大きく使っている分、大きく避けることになってしまいました。

 宇都宮の落車がフラッシュバックしてしまったこともあり、反応し過ぎてしまった形ですね…。口が空いてしまったので、それを詰めるのにだいぶ脚を使うことになってしまいました。すごくもったいなかったですね。

体を大きく使う走法の中でけん制を回避した結果、かなり外まで膨らんでしまった ※松浦悠士は黄・5番車(撮影:北山宏一)

雄吾と2走続けての連係、嬉しいワンツーも

 4日目の二次予選は雄吾との連係でした。赤板過ぎには落車が発生し、僕の方に向かって落ちてくる位置関係になってしまい、落ち着いて回避する必要がありました。雄吾も行くタイミングはあったと思いますが、アクシデントで変な感じになってしまったのだと思います。僕目線では詰めていった勢いでそのまま行っていれば行けたように感じましたが、このタイミングや判断は雄吾本人の感覚もあるので何とも言えません。

 僕自身、苦しい展開になったのでコースを探す必要に迫られましたが、チャンスはあったものの、選択したコースが間違いでした。園田さんが1回だけ内を空けていたので、最内を行けていればアタマまであったと思いますし、浅井さんのコースを行っていれば…とも思っています。待って、待ってで行くのか? 最内に狙いを定めて行くかのどちらかでしたね。

赤・3番車が松浦悠士、最終局面では外のコースを選択していった(撮影:北山宏一)

 5日目も雄吾との連係でしたが、前日のレースもあったので、ここはしっかりと主導権を奪い、決めてくれましたね。僕も余裕があって、車間を空けながらレースを良く把握できていたと思います。道場君が止まりそうな気配だったので、牽制していくことはあまり考えず、フェイントを入れながらの対応にしました。小原さんや三谷将太さんをしっかりとケアしないと、という予測できていましたし、手応えがありましたね。雄吾もタレることなく踏めていましたし、前日を払拭するワンツーを決められて良かったです。

別線と思惑が交錯するも噛み合わず

 最終日、5走目は自力戦でした。「眞杉君を後ろに置きたい」という思惑は対戦相手の菅田さんも僕もお互いに持ってはいましたが、考えが微妙にズレていた部分がありましたね。菅田さんは併走させて駆けたかったみたいですし、僕はといえばフタをしてから駆けたかった。ちょっと作戦を決め過ぎてしまっていたため、臨機応変には走れませんでした。

 一度中団を取れていたので、しっかりこだわってその位置を確保するべきでした。脚力も足りませんでしたが、自分のペースミスも響いてしまいました。眞杉君を出させて4番手でも勝負になったと思いますし、菅田さんから突っ張る雰囲気を感じた時点で、しっかり4番手を取りにいくといった判断も正解だった気がしています。

別線の考えや動きを予測して戦略を立てている(撮影:北山宏一)

 シリーズ全体を振り返ると、自力という面ではまだまだ足りなかったなと感じています。ただ、走りながら状態が上がっていく感覚は持てましたし、競走じゃなければ気づけないような気づきもありました。その中で、自分の感覚的には4日目、5日目と良い感覚で走れていたので、まずはその状態で戦えるように準備していきたいと思います。

後半戦はS級S班!格に相応しい走りがしたい

 今年も前半戦が終わりましたが、まだまだですね…。落車や怪我もありましたが、宇都宮の2日目のレースなどには手応えを感じています。あのレースはペダルが壊れた中で、しっかり行き切れていましたし、あの状態で走ることができればしっかり戦える気がしています。ただ、その好感触を得た宇都宮で落車して肋骨を折っているので、なかなかうまくいきません…。

 でも7月からはS級S班に戻っての競走がはじまります。情けないレースが続いていますし、早くS班に相応しいレースができるようにという思いで臨みたいです。繰り上がってのS班選出ということもあり、気を張り過ぎずに楽しみたい自分もいますし、今はワクワクするような気持ちがあります。ちなみにS班選出の発表があったのは6月10日なんですが、この日は広島競輪場の新スタンドがオープンした日です。嬉しいことが重なった日になりましたし、早く地元広島でお客さんの前で走りたいですね。

7月からは赤パンを履いた松浦悠士が走る(撮影:北山宏一)

 それでは、今月のコラムはここまでにします。来月は「サテライト一宮」でトークショーを行いますので、お時間のある方はぜひ遊びに来てください。また、時期は未定なのですが、近いうちにTシャツとタオルの販売を予定しています。詳細は詰めている段階ですが、まずは100枚限定で、お届けすることになりそうです。そちらも続報をお楽しみに!

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

ーー落車で復帰する際に、走りやバンクに対してトラウマのような感情は芽生えないのでしょうか?

 トラウマというわけではないのですが、今回振り返った高松宮記念杯の3日目のようなことはあります。宇都宮のアクシデントと場所もけん制の仕方も似ていたのもあって、フラッシュバックがして、大きく避け過ぎてしまったんですよね。トラウマという言葉は当てはまらないのですが、まったく影響がないわけはありません…。

ーー天候と自転車について質問です。雨の日にタイヤを変えたり、天気によって自転車のパーツなどは変えたりしますか?

 基本は変えないですね。昔は雨用のタイヤもあったみたいですけど、今はありませんし、天候でタイヤを変えている選手はいないのではないかと思います。車輪を変えるくらいなら、そういう選手はいるかもしれませんが、僕は晴れていても雨でも変えないですね。

ーー松浦選手が水泳出身の選手だと知りました。水泳をやっていたことで自転車に活かせたことはありますか?

 これはあります。ペース配分とか自分の体力ゲージみたいなものを想像できるのはあります。力の調節やペダリングに活かせている気もしますね。肩甲骨の柔らかさも、おそらくは水泳をやっていたからだと思います。

上半身、肩回りの可動域の広さとしなやかさは水泳に起因するものなのかもしれない(撮影:北山宏一)

【SNSはこちら】
松浦悠士X

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

バックナンバーを見る

質問募集

このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。
あなたからコラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。

松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2019年の競輪祭でGI初優勝を飾り、翌2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し優勝、自身2つ目のGIタイトルを獲得した。その翌年2021年には日本選手権競輪を“有言実行”で優勝。3つ目のGIタイトルを獲得し、グランドスラムへの意識を高めた。2023年はGI優勝こそなかったが、賞金順位でKEIRINグランプリの出場権利を獲得。広島カラーを象徴する3番車で挑んだ大一番は最終直線で渾身の差し切り勝ちを決め、見事グランプリ王者となった。チャンピオンとして臨んだ2024年は度重なる怪我に苛まれてS班の座を明け渡すことになったが、グランドスラムを目指す気持ちには一点の曇りなし。中国地区の大エースとしてさらなる飛躍を目論む。

閉じる

松浦悠士コラム一覧

新着コラム

ニュース&コラムを探す

検索する
投票