アプリ限定 2024/11/17 (日) 20:00 11
19日から小倉競輪場で開幕する「第66回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」。この大会の結果で年末のKEIRINグランプリ2024に出場する9名が決まる。“運命の大一番”を前に、現場を知る競輪記者の面々に、現在のグランプリ争いの状況と『最後の椅子』を奪う可能性がある選手について聞くと、順当な実力者からちょっと意外な顔ぶれまで、さまざまな選手の名前が挙がった。
まずはじめに、アオケイ・長谷川編集長に競輪祭直前のグランプリ出場権争いについて伺った。さらに長谷川編集長が妄想(!?)する、『圏外からひと捲り』しそうな選手とは…?
今年タイトルを獲っている古性優作、平原康多、郡司浩平、北井佑季は当確。賞金ランキング5位の清水裕友、6位の眞杉匠もここから4〜5人に抜かれることは考えにくく、出場決定と言っていいだろう。
ここで、ボーダー付近の獲得賞金状況と、競輪祭決勝の賞金をおさらいしておく。
賞金順位 | 競輪選手名 | 獲得賞金額 |
---|---|---|
7位 | 新山響平 | 87,354,274円 |
8位 | 脇本雄太 | 85,097,948円 |
9位 | 岩本俊介 | 76,839,274円 |
10位 | 深谷知広 | 71,814,548円 |
11位 | 吉田拓矢 | 68,936,274円 |
12位 | 窓場千加頼 | 68,719,000円 |
13位 | 佐藤慎太郎 | 65,055,600円 |
14位 | 和田真久留 | 58,809,200円 |
順位 | 賞金 |
---|---|
優勝 | 47,900,000円 |
2位 | 23,720,000円 |
3位 | 15,500,000円 |
4位 | 11,316,000円 |
5位 | 9,053,000円 |
四日市記念の優勝で脇本雄太を「捲って」7位になった新山響平、「捲られて」8位の脇本雄太も現時点ではかなり有利。
新山が漏れるケースは、圏外の選手が優勝、すぐ下にいる脇本や岩本俊介が決勝2着、決勝3着に入ったときくらいで、可能性としてはかなり低い。8位の脇本も新山同様有利な状況だが、本人はあくまで「タイトルを獲ってグランプリに」と思っているはずだし、自分のレースに集中する。
9位の岩本俊介は平原が優勝したダービーの決勝2着男。あのときは「このまま普通に走れば大丈夫」とみんなに言われていたが、その後は賞金を上積みできず、ギリギリの順位で最後のGIを迎えることとなった。
今年はとにかく古性の強さが際立った1年で、盟友の脇本がいてもいなくても、古性の優勝では? というのが全国のファンの一番人気。ただ今回のテーマは『グランプリ最後の椅子は!?』ということなので、選ぶのは当然圏外にいる選手。この男ならひょっとして…、という2人をピックアップしてみます。
ひとりめに挙げたいのは森田優弥。公式発表の身長は167センチで選手としては小柄だけど、「漢字の競輪」をさせたら競輪界でも十指に入る熱い男。もちろんガッツだけでは勝てないし脚もある。直前の熊本FIでは、らしさを全面に出した走りで好調をアピール。自分の力で獲るのはやや厳しい気もするが、ヨコを使いながらのゲリラ戦ならワンチャンあるかも。決勝に上がって大仲の眞杉の後ろを回れるようなことがあればチャンスは更に広がる。
もうひとり挙げるなら佐々木悠葵。森田が熱い競輪なら、佐々木はクールな競輪… と書いて、いやいや、違うなとすぐに思った。実際の佐々木は森田ほどではないがトリッキーでアグレッシブ。サーカスみたいな走りも苦にしない。つかみ所がなくて不思議ちゃんっぽいところもあるが、その「抜け具合」が逆にいい。周りがどう評価しているかは分からないけど、個人的には眞杉と同じくらい強いと思っている。親王牌の決勝戦では「あわや優勝」の場面も作ったし、SSの格上選手をまとめてやっつけるだけの力はある。
つぎに、町田洋一記者にここまでの戦況と競輪祭の傾向について寄稿いただいた。町田記者が『最後の椅子』本命に選んだのは…?
過去の競輪祭の決勝戦を振り返ると、2段駆けか、単騎の一撃が決まっている。グランプリに向けて最後の椅子を決める大会なので、特殊性もあり、2014年から2017年は武田豊樹と、平原康多の持ち回りで、グランプリに危なかった方が、優勝していた気がする。当時の武田と平原は前後を入れ替えても、連係が決まっていた。
その後、中国ゴールデンコンビが誕生して、松浦悠士と清水裕友も同じ戦いで結果を残す(最近は、清水裕友に松浦悠士が定番になっているが)。そして、昨年と3年前は眞杉匠と吉田拓矢が、それぞれ単騎で優勝している。
改めてグランプリ出場メンバーのおさらいをするが、タイトルを獲っている古性優作、平原康多、郡司浩平、北井佑季は確定。賞金で眞杉匠と清水裕友も問題ない。7位の新山響平と8位の脇本雄太も逃げ切るとみたい。
僕の考える最後の一枠は、賞金順位10位の深谷知広が郡司、北井、松井宏佑の手助けを得て、9位の岩本俊介を捲ってしまうケース。現状、この2人は500万円の差。あとは、願いを込めてになってしまうが、佐藤慎太郎が準優勝か決勝3位で、滑り込みセーフの場合。慎太郎先生は6500万円で13位だから、数字的には不可能ではない。
賞金で考える『最後の椅子』は先に記したが、誰が優勝するかと言えば、ナショナルチームの太田海也と中野慎詞の番手を回った選手だ。この2人が快速捲りを決めて、タイトル奪取もあるが、競輪的要素を踏まえれば“先行の番手”だ。ナショナルチームのメンバーが逃げれば、そうそう捲れない。
2段駆けが決まる条件は、機動型がダッシュタイプで、番手も器用さがあり、時にはシビアになれる選手だ。中野慎詞を使えれば新山響平、太田海也の番手になれば清水裕友、松浦悠士、犬伏湧也。犬伏は四国地区になるので、太田の番手を回れる権利が一番高いのは清水裕友か松浦悠士。もし、太田、清水、松浦が3人同乗すれば、グランプリのキップを持っていない松浦が太田の番手になる。
ここ最近の記事で「なんだかんだ、松浦はグランプリに乗ってくる!」と書いてきた。京王閣記念や四日市記念の走りを見ると、脚負けしていたのも事実。人の後ろなら何とかなっていたが、自力の時は普通のS1選手レベル。お世辞にも良いとは言えなかった。ただ、急激に良くなるのも「競輪あるある」。結論として、最後の椅子を手にするのは、太田海也の番手を回る松浦悠士とみたい。
さらに、中四国を主戦場とするアオケイ・梅田記者に『最後の椅子』を奪いそうな選手を聞いてみると、直近で強豪を軒並み倒したあの選手の名前が挙がった。
現在、賞金ランキング21位の犬伏湧也がグランプリに出るには競輪祭を獲るしかない。あとがなくなったこの状況だが、今年は地元記念を獲ったりと勝負強さがあり本人も諦めてはいない。
直前の京王閣記念でも新山響平、古性優作、南修二、新田祐大、小林泰正、木暮安由、眞杉匠と強豪揃いのメンバーだったが、単騎で大外を捲り追込み優勝し、改めて犬伏の強さを見せつけた。
最近の犬伏の走りはラインを大事にし、皆を連れ込めるように仕掛ける事が多い。もちろん相手もいる事なので常にできることではないが、先行を主戦法として戦っている。
師匠の小倉竜二からは『バック数20本を切ったら破門』と冗談交じりに言われているようだが、この数字を上のクラスで維持するのには相当な実力が無いと出来ない“離れ業”だ。誰が相手でも出切れるスピードと捲らせない持久力。元々、スプリンターの犬伏が先行し、逃げ残っているのは日々の練習を積み重ねて得た努力の賜物だろう。
小松島記念と直前の京王閣記念は共に捲り追込みでVを飾った。小松島記念では、師匠の小倉から「今回だけは地元だし、獲る走りでいい。狙え!」と話があったそうだ。
京王閣記念では単騎だった。ラインのない状況だったために自分だけ届く競走でよかった。デビューしたての頃の犬伏は捲りが多い選手だった。元々、それが得意な走りなのだ。
短い距離で一気にトップスピードまで上げて前団を飲み込む事ができる犬伏らしい走り。でも、上のクラスで戦うにはリスクが大きい。捲りは前の選手の牽制もあれば、事故に巻き込まれる可能性もある。勝ち上がりの段階で仲間となるラインのマーク陣がいなくなる事も多い。それを踏まえて師匠の小倉からこんこんと教えられ、成長し今に至る。
デビューして3年、ウェイトトレーニングを続け身体も一回り二回り大きくなりパワーアップした。日々のインターバルトレーニングで筋持久力もアップした。それによって戦法の幅が広がり、対戦相手はやりにくくなった。もう獲るしかない状況。勝ち上がりの段階ではできるだけ多くの仲間を連れ込み、決勝では獲る事に賭ける。下準備はできた。師匠と同じタイトル・競輪祭を獲ってグランプリに乗り込む!
選手たちを現場で追ってきた競輪記者たちが考える『最後の椅子』、いかがだっただろうか。何が起こるかわからないクライマックスの戦いが、ますます楽しみになったのでは!? 19日から始まる「競輪祭」、泣いても笑ってもこれで運命が決まる。熱い思いを乗せて走る選手たちの激闘から目が離せない!
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。