2024/10/02 (水) 12:00 39
熊本競輪場で開催される周年記念が、熊本競輪場に帰ってくる。長い8年間があった。10月3日に開幕する大阪・関西万博協賛「開設74周年記念 火の国杯争奪戦(GIII)」が、やっと熊本に帰ってきた。2016年の震災から8年が経った。
誰よりも長い8年間だったのは中川誠一郎(45歳・熊本=85期)だろう。熊本再開について、誰よりも発信し続けてきた。7月にそれがかなったわけだが、もちろんゴールではない。いや、7月に結果を残せなかった分、今回の記念ではより求められるものがある。
「ここの競輪場では…。実はあんまり良くなくて…」
2016年の震災の前、熊本で走った時の成績は良くはない。苦しい結果に沈んだことも多い。だが、今回はそんなことは言っていられない。
熊本記念が久留米で代替開催されていた時、2017年10月のことだ。初日特選で中川は深谷知広(34歳・静岡=96期)と連係した。垂涎のタッグ。深谷がバックからまくったところを中川が差し切ってのワンツーだった。
11秒1のまくりを10秒9で差し切った。
熊本記念だからこそ、の力を何度も発揮してきた。さすがに年齢は重ねてしまったものの、今回の記念前の合同練習では「やっぱり誠一郎さんのタイムがすごかった」という。格別の思いがあれば、くぐってきた修羅場の数も違う。
修羅場において引くことも多い選手、という印象が強いかもしれないが、極限の修羅場で発揮する力は抜群だともいえる。怖い時が、時々ある。
震災後すぐの2016年10月の時には準決で脇本雄太(35歳・福井=94期)と連係している。最終ホームのところでは内から飛び付かれそうになったが、渾身の思いで叩き込んで守り切った。その時の脇本の11秒1のまくりはさすがに差せなかったものの、普段は見せない気合を見せていた。
その大会を制した時の感動は言うまでもないが、2018年大会の決勝の感動も大きかった。後方に置かれ、最終4角手前の時点で6番手。無理か…と思いきや、真っ白い奇跡が大外を突き抜けた。この大会だけは…。
中川誠一郎という熊本にとって唯一無二のかけがえのない存在。今回の4日間、その走りに酔いしれたい。そして、これから…。10年、20年とはさすがに言えない年齢だが、まず約1年半後。2026年2月に熊本での開催が決まっている「全日本選抜競輪(GI)」でも…。絶対に活躍してほしいと願い、祈るのみだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。