2024/09/29 (日) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は青森競輪場で開催されている善知鳥杯争奪戦の決勝レース展望です。
この時期の青森競輪場は朝晩が涼しく、他の都府県と比べても過ごしやすくなりました。ただ、【善知鳥杯争奪戦】の結果を見ると、上がりタイムは思ったよりも出ていません。
これも寒くなった分、空気を重く感じている選手が多いのでしょう。今は夏場に比べると、空気の感覚がだいぶ変わってくる時期でもあります。その時に台頭してくるのが、眞杉選手のような地脚のある選手たちです。【善知鳥杯争奪戦】で眞杉選手は初日の特選から3連勝。3日間共に上がりタイムも優秀です。ただ、決勝で北日本勢が4車で結束したとなると、さすがの眞杉選手と言えども、かなりの難敵となってきます。
その北日本勢の並びは⑥高橋選手-①新山選手-⑤守澤選手-⑨永澤選手となりました。同じく4車が勝ち上がってきた関東勢ですが、②森田選手-⑦宿口選手の埼玉ライン、③眞杉選手-⑧長島選手の栃木ラインで別線を選択しました。そして④佐々木選手は単騎戦となります。
1番車の新山選手がスタートを取るのが濃厚となっただけに、前を任された高橋選手は突っ張り先行から、新山選手の番手捲りを引き出すような走りをしてくるはずです。
順当に北日本ラインが前受けをしたのなら、車番的にその後ろは埼玉ライン、そして栃木ライン。単騎の佐々木選手は仕掛けていったラインの後ろを回っていきそうです。
この展開となれば、後方から眞杉選手が抑えに行くものの、高橋選手が突っ張っていった際に、地脚型の眞杉選手は無理をせずに、一度引いてから、次のチャンスをうかがっていきます。
こうなると、次に仕掛けていくのは森田選手となりますが、その時点で目一杯踏んでいる高橋選手の後ろから新山選手が発進。そのまま森田選手の追撃を振り切れたのならば、後ろを回っている守澤選手とのゴール前勝負となるのでしょうが、ここで怖いのが北日本ラインと埼玉ラインが叩き合い、ラインが短くなった時に、その後ろで脚を溜めている眞杉選手です。
先ほども書いたように、眞杉選手はダッシュというよりも地脚のある選手。長くいい脚を使えるだけに、直線の長い青森の400バンクならば逆転の目も出てきます。
実は北日本ラインの先頭を任された高橋選手も、眞杉選手と同じ地脚型の選手です。ちょっとでも流れを緩めたのならば準決勝と同じく、ダッシュのいい森田選手に交わされる可能性も出てきます。
新山選手は思っていたタイミングよりも、早めに動き出すかもしれませんが、そうなれば、ますます後方から捲ってくる眞杉選手が有利となっていきます。
高橋選手はさすがに二の轍は踏まないと見て、◎は新山選手で○が守澤選手と、北日本ラインでの上位独占を本線と見ますが、それを展開次第でひっくり返せるのが△の眞杉選手。×は森田選手に回します。
一昨年の競輪祭以来、優勝の無い新山選手ですが、徹底先行へのこだわりがあるからこそ選手やファンからの信頼を集めている一方で、優勝が難しくもなっています。
まだ横の動きができるのならば、レースに合わせる形で戦法も広がってくるのでしょうが、今回は前を任せた高橋選手が引っ張ってくれたのならば、いつもの徹底先行に近い形で先頭に立てるはずです。
競輪祭から優勝が無かったことで、自分の中でもかなり焦りはあったかと思います。それでも、しっかりと自分のレースはできていましたし、最高のお膳立てができた地元記念で、これまでの鬱憤を晴らすかのような走りを見せてもらいたいです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。