2024/09/16 (月) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は宇都宮競輪場で開催されている共同通信社杯競輪の決勝レース展望です。
【共同通信社杯競輪】は「若手の登竜門」とも言われているように、ビッグレースの中でも、若手選手に一定数(25名)の優先出走権が与えられています。
選出された若手選手たちにとっては、名前を売る絶好のチャンスともなっており、必然的に主導権争いは激しくなります。
そこに自動番組編成だけでなく、あまり走り慣れていない、宇都宮競輪場の500バンクでの開催ということもあってか、仕掛けのタイミングを見誤る若手選手も見受けられました。
ただ、経験のあるベテラン選手たちにとっても、力勝負だけでなく、タイムも求められる500バンクは厳しい条件とも言えます。
見なし直線が長いとは言えども、実力のある選手が後方に置かれる展開となってしまった場合、力を発揮できないまま敗れてしまうレースも見受けられました。
特に今大会は予想が難しいレースが続いていますが、その中でもSS班の古性選手、深谷選手、眞杉選手。そして来年のSS班を確定させている郡司選手が、一次予選から安定感のある走りで、決勝へと勝ち上がってきました。
並びは関東ラインが①眞杉選手-⑥恩田選手、近畿ラインが②古性選手-⑤南選手、南関東ラインが③郡司選手-⑨深谷選手。そして、九州ラインは④山崎選手-⑧北津留選手-⑦荒井選手と、4分戦の中では唯一の3車となりました。
注目すべきは南関東ラインで郡司選手が、深谷選手の前で自力とコメントしたことであり、また、九州ラインは得点上位かつ、山崎選手とは同じ長崎の荒井選手が、3番手となったことでしょうか。
南関東ラインでいうと、既にGIを勝っている郡司選手が、今大会の連覇かつ、賞金面でのグランプリ出場を目指す深谷選手の援護を図りたいという意図が感じられます。
また、九州ラインの並びについては、自力の2人を前に並べたのと、荒井選手としては今大会の準決勝を含めて、北津留選手には普段から前で駆けてもらっているのも関係しているのでしょう。
ただ、郡司選手や山崎選手だけでなく、他のラインを見ても、徹底先行型の選手が見受けられません。準決勝では先行した眞杉選手ですが、地元の大会ということで先行するよりも、位置取りを固めてからの捲りを狙ってくるはずであり、古性選手もまた、位置取りにこだわるレースをしてくるはずです。
となれば、3車と言うラインの厚みを生かしての山崎選手か、深谷選手の番手捲りを引き出す展開に持ち込みたい、郡司選手のどちらかが先行してくるのではないかと見ています。
九州ラインとしては、前受けからの山崎選手の突っ張り先行が理想だったのですが、車番的にそれは難しくなりました。
順当にいけば、関東ライン、近畿ライン、南関東ラインの並びとなり、後方7番手から九州ラインが発進。ただ、抑えたラインの先行はなかなか難しいので、そこを郡司選手が叩いて先行に入る可能性は高いと見ています。
山崎選手が抑えに行った時、眞杉選手は一度突っ張り気味にいった後に、九州ラインを前に出させて、その4番手を狙っていく可能性もあります。他のラインも山崎選手と眞杉選手の動きを見てから、作戦を変えてきそうなだけに、ジャンの攻防が決勝の見どころとなってくるでしょう。
自分の展開予想としては、山崎選手が眞杉選手の前に出たところを、郡司選手が強引に叩いて行く。その後ろには古性選手が入っているはずです。
こうなると、タテ脚勝負で並んでいる九州ラインにとっては、苦しい展開となります。郡司選手に前に出られた後で、古性選手に横の動きをされてしまうと、ラインが後方に追いやられてしまうからです。
ゴール前では郡司選手の番手から捲っていく◎深谷選手と、その後ろにいる〇古性選手の一騎打ちが濃厚です。怖いのは後方から捲りに構えてくる△眞杉選手でしょう。また、前の2人が動けなかったとしても自分で活路を見い出せる、×荒井選手も車券に絡んできそうです。
結果としてはSS班3人での決着も充分にありえるでしょう。その3人の現在の賞金ランキングですが、ランキング1位かつ、GIを勝利してグランプリ出場を決めている古性選手とは対照的に、眞杉選手は11位、深谷選手は13位となっています。
2人にとって優勝賞金の2700万円は、一気に9位以内へランクインできるだけに、願っても無いチャンスが訪れたのかもしれません。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。