アプリ限定 2024/06/09 (日) 18:00 26
岸和田競輪場で6月11〜13日に行われる「第2回パールカップ」。見どころや出場選手の近況を、デイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。
ガールズケイリン2024年・第2弾のGI「第2回・パールカップ」が高松宮記念杯競輪の前半戦、6月11日から13日の日程で開催される。優勝者にはガールズグランプリ2024(12月29日・静岡)の出場権と賞金540万円(副賞込み)が与えられる。
パールカップの特徴は予選、準決勝では東西分かれて勝ち上がりを争う点。主な選考基準は2023年10月から2024年3月までの競走得点で、東西上位14人ずつが選ばれている。
なお、パリ五輪出場メンバーに選ばれた太田りゆ、佐藤水菜とリザーブの梅川風子は4月GI・オールガールズクラシック(以下AGC)に続き、パリ五輪に向けて競技に集中しているため不在だ。
まずは東日本地区(北日本、関東、南関東)の展望から。
石井寛子がパールカップ初優勝へ気合が入っている。昨年はデビュー以来10年出続けていたガールズグランプリ出場を逃してしまった。その悔しさが今年の快進撃の原動力になっている。ここまで優勝回数は9回とハイピッチ。直前の大宮はモーニング、中1日の追加で精彩を欠いたが、パールカップにはきっちり間に合わせてくるはずだ。
岸和田バンクは優勝3回と得意にしていたが、昨年のパールカップは体調が整わず7、6、1着と大敗、昨年11月にも決勝5着と近況の戦歴はイマイチ。しかし石井寛子の強みは調整力と修正力だ。きっちり立て直して自身初のGI制覇で、ガールズグランプリ出場権をつかみにいく。
久米詩は昨年のパールカップで準優勝と大会相性がいい。今年の前半戦は安定していたが、3月コレクション(取手)5着、4月向日町で落車、同月久留米AGCは決勝6着と少々物足りない戦歴に。5月は自転車競技大会に出場したためガールズケイリン参加はなかったが、6月の岐阜ではきっちり優勝といい流れを取り戻した。
今年のガールズグランプリは静岡開催。地元勢として、そして自分自身も2年連続の出場に向けて、パールカップ制覇を狙っている。
小林莉子は巻き返しに燃えている。昨年のパールカップ決勝は最終1角で落車して終わっているだけに、リベンジの思いは誰よりも強い。今年は1月名古屋から3月伊東まで6場所連続Vと優勝を量産した。
しかし、今年前半戦の集大成で臨んだ4月久留米AGCの決勝はスタートけん制。小林は誘導員を追いかけて前受けからのレースを強いられ、7着に終わった。小林の得意な形で勝負できなかった悔しさは強いはずで、パールカップでは得意の自在戦で優勝だけを取りにいきたい。
尾崎睦も好調モード。昨年は1、2月が違反点のペナルティであっせんしない処置となりリズムに乗れない時期が続いたが、11月のGI・競輪祭女子王座戦で決勝進出を果たすと、視界が開けた。今年に入り4月久留米AGCでも決勝進出。直前の小倉でも豪快なまくりで制して7回目の優勝をつかんだ。
いま養成所にいる弟子の存在も大きい。言葉ではなく、レースで魅せる尾崎がGI初優勝へ全力でアタックする。
石井貴子(千葉)がビッグレースに帰ってきた。昨年春、練習中に落車。左鎖骨、ろっ骨、肩甲骨を骨折した。7月の前橋から復帰すると、コツコツ結果を積み重ねてGI出場権を勝ち取った。
ここ数年は落車によるケガが多く、なかなか結果を残すことはできていないが、コレクションは4回優勝、フェスティバルは1回優勝と数々の実績を残してきた存在。精度の高い追走からの差し勝負は健在。復活をアピールする3日間になるはずで、追いかけてみたい存在だ。
飯田風音のポテンシャルは前記の選手に引けを取らない。位置取りに淡泊な一面はあるが、自分のタイミングで踏み込んだときのパワーは目立っている。
5月小田原から6月別府まで4場所連続優勝と結果もついてきた。GI戦では準決が壁になっているが、パールカップでは打ち破りたい。
続いて、西日本地区(中部、近畿、中四国、九州)の展望へ。
中心になるのは児玉碧衣。今年は1月の高松、立川、岐阜と3場所連続完全優勝と好スタートを切ったが、2月に入ると体調不良、メンタルの不調が立て続けに襲いかかり、3場所連続で欠場した。復帰戦の3月別府、同月取手のコレクションは児玉碧衣らしさを感じるレースを披露することはできなかった。
しかしこの敗戦、屈辱が児玉碧衣の復活への原動力になった。4月に入ると大目標の地元GIに向けてエンジン点火。松山、玉野とロングスパートを敢行して完全優勝。万全の状態で迎えた地元久留米のAGCは自慢のダッシュ力を遺憾なく発揮して3連勝し、オールガールズクラシック初優勝を達成した。
その後も小倉、西武園としっかり完全優勝。パールカップ連覇へ向けて視界良好だ。ナショナルチーム不在なら、主役の座は渡さない。
坂口楓華はAGCの悔しさを全力でぶつけてくる。2回目の出場となった昨年末のガールズグランプリは何もできず終わってしまった。今年は年頭からスタートダッシュ。優勝を量産していくと、3月のコレクションは好位確保からまくり一撃でビッグレース初制覇を果たした。
勢いに乗ってGI優勝を狙っていった久留米は準決で敗退と、悔しい結果に終わった。気持ちを新たに切り替えた5月は3場所連続完全優勝とムードは上向き。岸和田は1月に3連勝と結果を残しているバンク。打倒・児玉碧衣の一番手として、気合を入れてGI初優勝を目指す。
山原さくらは高いレベルで安定している。今年もここまで優勝6回とコンスタントに結果を出しているが、不安点はGIとの相性の悪さ。昨年6月のパールカップ(岸和田)、昨年10月のAGC(松戸)、同年11月競輪祭女子王座戦(小倉)、今年4月のAGC(久留米)と決勝進出が一度もない。
潜在能力はガールズレーサーの中でも屈指の存在。豪快に攻めてGI初の決勝行きを決めたい。
小林優香は2月高松の落車からリズムがよくない。復帰後優勝は2回しているが小林優香らしい豪快な動きが見られていない。
岸和田は小林優香のデビューの地。圧倒的なパワーで後続をちぎった思い出のバンク。思い切りよく攻めることができたときは完全復活のタイミングだ。
地元近畿地区からは3人が参加する。吉川美穂は今年も安定している。3月コレクション、4月AGCと連続で準優勝。シルバーコレクター脱却へ狙うは表彰台の頂点だ。
日野未来も侮れない。4月のAGCで準決敗退。以降はパールカップに向けて先行勝負で挑んでいる。着実に航続距離が伸びているだけに、パールカップであっと驚く逃げ切り優勝も十分ある。
柳原真緒は試行錯誤が続いている。2022年のグランプリを優勝したときの勢いはないが、パンチ力は魅力。岸和田とのバンク相性もいいだけに、ノーマークのときには侮れない存在となる。
當銘直美の今年の目標は「GIの決勝に乗ること」。4月のAGCでは準決3着で惜しくも決勝進出はならず。當銘の持ち味はマーク戦。自力選手がそろうビッグレースでは追走技術が生きるはず。ターゲットを的確に選択して、初のGI決勝進出へ食い下がる。
竹野百香は124期からただ1人の選出。デビュー当時から地脚を生かした先行勝負で結果を積み重ねてきた。このパールカップは挑戦者の立場。上位陣が後方でけん制しあう流れになれば、自慢の先行力を発揮して大波乱を演出することもありそうだ。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。