アプリ限定 2024/06/01 (土) 18:00 17
netkeirin執筆陣でおなじみの東京スポーツ前田睦生記者が毎週厳選してきた「今週の競輪好プレー」。第3回は初のファン投票によって大賞を決定した。今回は新田祐大選手に大賞レースの裏話をインタビューした。新田祐大選手直筆サインのプレゼントもありますので、ぜひ最後までご覧ください。
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前田睦生記者(以下:前田) まずは第3回年間大賞受賞、おめでとうございます。今回は初のファン投票で選出しました。結果は圧倒的に2月の「春日賞争覇戦(GIII)」3日目12R S級 準決勝でした。このレースですが、金網に当たりそうになったという危険なシーンがあったんですけど、どのような状況だったか覚えていますか?
新田祐大選手(以下:新田) はい。嬉しいですね。あのレースは最初に自分がバックあたりから仕掛け、そのスピードが良かったため、先頭に立てばラインで決まるだろうと思いました。
しかし、突然目の前に2番車の嘉永(泰斗)君が現れて…彼は後ろを警戒して、牽制したんじゃなく、同じタイミングで抜こうとしていたんだと思うんです。その瞬間に前輪が浮いて、以前の落車のイメージが頭に浮かび、「これ終わった」と感じた。抜釘して4ヶ月ぐらいで、もうすぐでダービー復帰だなって思っていたのですが、思うようにはいかないなとも思いましたね。
前田 確かに、怪我もあった後そんなにも時間も経ってなくて…と思うと…。その後、立て直せたというか、金網が横に来て、前に8人いる状況になりましたけど?
新田 あの時は、自転車を急激に操作することは、スリップの可能性があったりと危険性がすごく高いと感じ、自転車が行きたい方向に行かせつつ、力を逃しながら金網にぶつからないよう願いました。結果的に金網と自転車の間が拳1つ分ぐらいのところで止まり、制御できたというか。そこから自分の位置も把握し、タイミングを考えずに仕掛け、力任せで行けるだけ行こうと思いました。
前田 ファンや選手、そして我々も、あの状態から捲りに行く姿に驚きました。「おー!これすごいぞ」と思ったら、そのまま1着まで走り抜く姿には、体のエネルギーの残り方などはまるでわからないが、圧倒されました。
新田 レース中、その瞬間は本当に火事場の馬鹿力みたいな感じだった。力任せで走り続けながら、残り半周ほどで近畿の2番手だった山田久徳選手と並走状態に。久徳君が前の選手を援護しつつ、車間を切りながら走っていました。体半分だけ出ちゃえば、「あとはなんとかねじ伏せてやる」という気持ちで行きながら、嘉永くんと久徳君の横を通過する場面をキーポイントとして注意しました。
意外と冷静に考えながらも力強くレースを走り抜けたので、多分細かくレース動画を見てもわかると思います。終わったあと、久徳君が「バックで締め込んで危ないですよー」と。いや、それはもう、すいませんと思いながら、嫌なところはすいませんがやりましたっていう感じでした。
前田 場内の声とかは聞こえました?
新田 歓声はすごかったですね。多分1番人気になっていたはずなので。ドンとぶつかられた瞬間は、自分がまずパニックになっている状態で、そこから金網にぶつからなかったことを機に今度は攻める体勢に入った時の、周りの空気感というか、音というか…。
入場者数で言ったらKEIRINグランプリなんか比にならないぐらい少ないとは思うんですけど、ちょっとKEIRINグランプリを彷彿とさせるようなどよめき。すごく体にも響くような感じはありました。音としては、動画としてすごくわかりやすい温度差というか、音量差が、この1つの映像でわかるのかもしれないかなと思います。
前田 本場で見ていた人たちは おそらく伝説の一戦が目の前にあるみたいな相当な衝撃だったと思います。実際再度レースを見てもらいましたが、客観的に見てどうですか?
新田 客観的に見たら「もっと安全に仕掛けろよ」とお客さんだったら思うでしょう(笑)。結果として僕1着、2着がラインは違うんですけど山田久徳くんで、3着に僕のラインの阿部(拓真)くん入りました。
前日のレース番組が出た時に、阿部くんが「前を回ってすごく頑張りたい」言ってくれていたんですけど、僕もすごく積極的に行きたい気持ちが強かったんで、その気持ちを組んだ上で、「ちょっと1回、準決勝は僕に力を出させてくれ」って伝えていた状況で走っていました。車券としても僕ー阿部の絡みでは売れていたはずなんですよ。久徳くんからももちろん売れていたと思うんですけど。そういう意味では 多分見ているお客さんは、あの瞬間は「何やってんだよ、おいおいおい」って思いながらも、危ないって思って本当のギャンブルをあの一瞬で楽しめたような感じはあったんじゃないかなと思います。
前田 一瞬車券外れた!という感覚に陥ってからの大逆転という…
新田 聞いてみたいですね。あの瞬間、(外れたと思って)車券をバッて、投げた人いるのか?って(笑)
前田 快進撃というか、あれはどんな気持ちが原動力でしたか?
新田 ぶつかった瞬間は自分への失望と怒りです。やっぱり競輪は対戦相手ありきものだっていうのはもちろん元にありますから。その中でのレースの動きとして、そこもちょっと考えておけば対応できたかもしれないのに、それに対応できてない自分がいたんだなっていう…少し過信しすぎている自分がいたなっていう気持ちですね。
前田 そういった原動力が湧き上がって、自転車を乗り続けられることもすごい…
新田 今回まではいかないですが、以前に同じような経験があって…。
競輪祭の時にスピードが出すぎて、コーナーでフレームがたわみすぎて、自転車が曲がっちゃったんです。当時後ろが山崎(芳仁)さんだったんですが、「もう捲りでいいから思いっきり行け」って言われて。思いっきり捲りに行ったら、スピードがありすぎて、コーナーで自転車寝かしたときに斜めに力が入って、自転車がたわむ角度で入っちゃったんです。そしたらもう自転車がバーンとバネにみたいに曲がって戻ってきて。その反動で自分が吹っ飛びそうになって、転びそうと思った瞬間に、後ろから「あぁぁぁ〜」って声が聞こえて(笑)。いまだに「お前、あれはやばかった」って山崎さんは言うんですけど(笑)。
前田 競輪祭の競輪があったからこそ、あそこから転ばずにまた戻せたのですね。また同じアクシデントがあったら、同じことができそうですか。
新田 いや、できないと思います。できるかできないかはわかんない、っていうのが多分正解だと思うんですけど…やろうと思ってやったわけではなかったですし。
あとは、仕掛けるタイミングとかも、先行してる選手を庇いながらいた久徳くんも、かなり車間を切り始めている時に僕は踏み込んでいるんで、タイミングとしては あれが1番捲りやすいタイミングなんですよ。久徳くんは、僕がもういないもんだと思っているから、 嘉永くんだけを見てればいいっていうことになるじゃないですか。それで嘉永君も多分僕がいないから、いい場所取れて車間を切り始めている。あの時期の嘉永君はまだ 仕掛けるタイミングとしては今ほど早くなかったと思うので、ちょっと見ていましたね。 全てのタイミングがあったから、今回は上手くいったのかなと思います。
前田 新田祐大しかできないだろうというような感覚ですよね。
新田 新田祐大だからこそ、 あんなレースになってしまったんですけど(笑)。
「オルフェーヴルみたい!普通なら落車してもおかしくないのにそこから一着になるのが信じられなかった」
新田 すごく話題になっていたのは、僕は賭け事もやんないし、競馬もやんないからわかんないですけど、競馬に例えて、「オルフェーヴルみたい」ってあって、どういうことだろうと思って見たんですよ。あれはコース離れてっちゃったんですよね?
前田 あれはオルフェーブルのシンプルなミスだったはず(笑)。これはオルフェーブルより価値高いですよ。荒くれ者というか、制御が効かない馬だったので、競馬ファンにも刺さるプレーだったかなと。
「現地で見ていたが、競走内容はもちろん、場内の驚きと歓声も凄かった」
新田 多分これは現場にいた人じゃないとわからないですよね。奈良競輪って、僕のイメージだとヤジが昔から凄い印象があって、なおかつ入場者数も少ない中でのあの音は、すごく独特の雰囲気だったなと。
前田 競輪って凄いんだぞってね。
新田 1番いいレースとして皆さんが投票してくれたりとか、見てくださっているということを実感できる受賞式になったので、大変嬉しく思います。僕としては、競輪でかっこいいことやってやろうとか、なんか競輪らしく横の動きで激しくぶつかって、とかっていうのよりも、自分の力をしっかり出して、悔いの残らないレースを、っていうのをテーマで常にやっています。今回レースとしては、悔いが残らない仕掛けができたと思いますし、しっかり最後まで諦めずに踏み切ったっていうことは、すごくよかったのかなと思うんです。
競輪を知らない人たちもあれを見て、最後まで諦めないで頑張り続けるっていう大切さっていうのを、映像からちょっとでも 感じてもらえたら、あの時、こけなくてよかったなと思います。これからも頑張ります。どうもありがとうございました。
(レース映像提供:公益財団法人JKA)
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netkeirin特派員
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