2024/03/11 (月) 12:00 23
netkeirinをご覧の皆さんこんにちは、金子貴志です。今回は久しぶりに確定板に載ったことを書いていきたいと思います。
2月7日の岸和田競輪、最終日の一般戦でしたが、3着になり確定板に載ることができました。
確定板に載ったのは、昨年7月12日の富山競輪最終日の2着以来です。自分でも最後にいつ確定板に載ったのか忘れてしまっていたくらいですから、大袈裟ではなく“選手になって一番嬉しい3着”でした。
このコラムにも時々書いていましたが、腰を痛めてからはなかなか思うような練習ができていませんでした。体幹に力が入らず豆腐のペダルを踏んでいるような感覚で、自転車がなかなか前に進みませんでした。
レースでも流れに乗っていけず大敗が続いていました。そんな時でも、オッズを見ると自分から車券を買って応援してくれている人がいるとわかり、「なんとか確定板に載って応えたい」と思って走っていました。
この3着は私にとって大きな一歩になりました。長い間、光の見えないトンネルにいたので、少しだけ光が見えてきたような感じがします。
以前私は、YouTubeにデッドリフトの動画を上げていました。そして最近、動画に「デットリフトはどうなりましたか」とコメントが届いているのに気づきました。腰を痛めてからウエイトトレーニングはまったくできていなかったのです。
ですが、同じ腰の痛みを持つ新潟の鈴木庸之君や松岡健介君から「軽くてもいいからウエイトトレーニングをした方がいいですよ」というアドバイスをもらいました。「ウエイトはある程度の重量でやらないと意味がない」と思い込んでいましたが、20キロから再開し、今では120キロまで上げられるようになり、力が入る感覚を得られています。
以前のデッドリフトの重量は220キロだったので重さは半分程度ですが、懐かしい感覚が戻ってきたような気がします。今までは重量にこだわりすぎていましたが、考え方を変えて、できる重量でやっても十分効果があることを実感しました。
これまでは目の前の成績に焦るばかりで、高いところを見過ぎてしまっていたように思います。実際はやれることがたくさんあるのに、前はできたことができないという焦りで頭が固くなりすぎていました。今は原点回帰して、現状の自分にできることを見つめ直しています。
ケガは基本的に苦しいですが、多くの選手との交流のきっかけにもなりました。平原康多君や柴崎淳君とは競輪場で会うと、腰の治療の話をしたりします。他にもたくさんの選手が私の成績を見て心配してくれて、いい治療院などを紹介してくれました。その気持ちがとても嬉しかったです。
それから1月には同期の伏見俊昭君がコラムに私のことを書いてくれていました。文字通り満身創痍の私ですが、そんなふうに見ていてくれたんだと嬉しくなりました。
こうしてたくさんの人の支えがあって、今も走ることができています。
久しぶりに確定板に載った時、お客さんの車券に貢献できるということはこんなに嬉しいことかと改めて知りました。よい着が取れていたころよりも一層、その重みがわかったような気がします。レースが終わった後、3着でも「よかったぞ」と言ってくれた人がいて、帰ってくるときも久々にいい余韻を感じられました。
今まで成績が悪くてぶれていた気持ちも、原点に戻ったことによって、迷いがなくなりました。より前向きに練習にも取り組めるようになり、40代になっても「体が変わる感覚」を感じています。ですが、まだもとの感覚に戻るまでは時間がかかりそうです。
ずっと目標にしていた「デッドリフト1万セット」。重量は違いますが、これを達成するためにまた動き始めました。信じてやってきたデッドリフトが間違いではないことを今より強くなって証明できるように、再出発です。
今回は3着ではありますが、ひとつの結果は私に手応えを与えてくれました。そして継続することの大切さと、たくさんの人に支えてもらっているのだということを再認識する大きなきっかけになりました。
お客さんから、もう二度と確定板に上がれないんじゃないか、このままクビになるんじゃないか、と思われても不思議ではない成績だったと思います。もちろん自分ではそんなことはないと思っていますし、まだまだ強くなることを諦めていません。
またお客さんの車券に貢献できるように、そして今度は1着を取れるように…。このコラムのタイトルの通り、“不屈”の闘志で挑んでいくつもりです。
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Kaneko Takashi
愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。