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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の地元記念】素晴らしい応援を届けてくれたファンから頂戴した“お叱り”に思うこと

2024/02/23 (金) 18:00 58

いわき平記念決勝進出選手特別紹介にて(撮影:北山宏一)

 全国300万人の慎太郎ファン、netkeirinをご覧のみなさん、今年序盤からレースが続いている佐藤慎太郎です。着が悪かろうが、負け戦だろうが、どこの競輪場でも本当にたくさんの声援をもらっています。その声援に応えるべく岐阜GIでは優勝争いしたかったがね。今回は近況を振り返りながら、綴っていこうと思います。

地元記念決勝後「ワンツーが見たかった」の声

 1月からレースが続く中、オレは地元いわき平記念に出場した。とにかく地元のみなさんの応援が凄くて、決勝レース発走前のボルテージも半端じゃなかった。「慎太郎!」の声援を受けながら、気合十分にレースへ乗り込んだ。チャンスを探り直線に突入したが、確定板を捉えられず4着。

9番車・佐藤慎太郎は直線伸び切らず、外側2車に僅差で先着を許した(撮影:北山宏一)

 レース後に地元ファンから「優勝して欲しかったし、せめて2着でワンツーが見たかった」と“お叱り”を受けた。これは真正面から受け止めるべきお叱りであり、新田が優勝しているのだから、オレは最低でも2着にはいないといけない。

 勝負所で抜け出した新田の強烈な踏み出しに脚が削られ、直線では余力ナシ。伸びていくことができなかった。敗因分析をするにしても「あの場面でこうすべきだった」ような反省点もなく、余力がないから勝負できなかったってだけ。悔しいことだが、悔しがる以前に「単純に弱かった」という事実を受け止めるほかない結果だったように思う。

決勝戦を見守る多くの人達、地元勢へ大声援を送った(撮影:北山宏一)

 現場で声を出して応援してもらい、現場でお叱りを受ける。ここにリアルな熱量を感じたし、本当に期待してもらっていることを痛感した。「地元で勝ちたい」は当たり前の感情なんだけど、その感情はまた一段と高まった! 反省点が「弱かった」という振り返りなので、強くなるためにトレーニングを積むだけ。(感謝というと違うのかもしれないが)温かい声援だけではなく、期待が込められたお叱りもありがたく胸に刻みました。これから気張るしかねえってこと。

地元戦への思いはさらに燃えたぎっていく(撮影:北山宏一)

新しい挑戦は必要なこと、GIで感じた手応え

 ここまで休みなく走っていると、結果が伴わない時に“疲労のせい”だと思われがちだ。だが、強がりでも何でもなく、まったく体力的に疲れていない。「佐藤慎太郎らしい走りができなさそうだな」とパフォーマンス面で自信がなければ休む決断をするからね。今のオレにとってレース本番を舞台にデータを蓄積させることは、さらに強くなるために必要なこと。自転車のセッティングしかり、休みなく走っての状態確認しかり、練習では補えないことに挑戦している。

 読者のみなさんの中には覚えている人もいるかもしれない。昨年、ダービーが終わった後のコラムで「オレは“新しい追い込み屋”に進化する必要がある」と書いたと思う。

 自力選手全盛の時代が作り出すレースレベルは刻一刻と進化している。すげえ勢いでね。その流れの中で存在感を示すためには、新しいことを取り入れて挑戦し続けるしか手段がない。闇雲にやっても仕方がない。自分をアップデートしなくては戦えん。

こだわりをリセットすることが強くなるために必要(撮影:北山宏一)

 今ここにきて手応えも掴んできている。例えば全日本選抜の初日なんかは5着で終えたわけだが、トライしてきたことが走りに現れていた感覚があった。外並走で踏み上げていくことができ、最後まで失速せずに踏み切れた感覚。自転車のパーツ選択やセッティングと向き合い、理想をイメージしているんだが、そのイメージに近づいているような一走だった。まだまだ100%ではないけどね。イメージを固めてきた新フレームもモノになってきている。

 自転車のことを考えると無限の組み合わせがある。チェーンなんかは“半コマ詰める”だけで感覚が変わる。チェーン引きというチェーンのたゆみを調節する小さなパーツがあるんだが、その種類を交換するだけで変わる。レース本番の集中力から感覚が繊細になっているときは特にギャップを感じる。やっぱり練習の反応と勝ち上がりを懸けた一戦の反応は大きく違うからね。

 このあたりはレースをひたすら走ることで経験が積み上げられていく。走ることこそ意義がある。そもそもたくさん走れることに競輪選手としての純粋な喜びもあるけどね。

イメージに近づく手応えはある(提供:チャリ・ロト)

ガッカリしている時間はない

 そうそう、体は本当に大丈夫なんだが、レースが続くとメンタル疲れだけはあるかもな。神経系の伝達機能がわずかに鈍っていくような疲労感がゼロじゃない。細かく分析するとプレッシャーの蓄積の間隔が短いわけだから、その影響だろうとは思う。そんな時に自分の思い通りに1着が獲れたり、勝ち切るべきところで勝ち切れれば、スカッとリセットできるのかもしれない。それが叶わない時には気落ちしそうになったりもする。だが。

 佐藤慎太郎にガッカリしている時間はない。「勝っておごらず、負けて腐らず」を信念にここまでやってきたので、腐るはずもない。やるべきことをやるだけ。地元でオレを叱ってくれた、リアルな期待を向けてくれるファンが「あんたが応援してる慎太郎は弱いね」と言われちまうのは避けてえのよ。限界は気のせい。アップデートが必要なのは気のせいじゃない。応援の声に耳を澄ませば、思うがままに命懸けでやり抜くまでよ。

「勝っておごらず、負けて腐らず」(撮影:北山宏一)

【公式HP・SNSはコチラ】
佐藤慎太郎公式ホームページ
佐藤慎太郎X(旧Twitter)

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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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