2023/12/29 (金) 12:00 46
2023年もあとわずか。恒例の特別企画「極私的10大ニュース」を今年も図々しく行います。競輪界の頂上決戦「KEIRINグランプリ2023」を控えるなか、スキマ産業的に業界内をうごめく中川誠一郎が間隙を縫って数字稼ぎに勤しみます。なお、中川はグランプリ前座のFI「寺内大吉記念杯」に出場予定でしたが、込み入った事情で欠場となりました。あらかじめ、ご了承ください。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】
ーー当企画、中川選手は毎年ノリノリですが、viewなどの数字がそこまで振るわないそうで、編集部としてはあまりノリノリじゃないみたいです。
そりゃそうでしょう。公開マスターベーションですから。オレの10大ニュースを読みたいファンがどれだけいるかって話でしょ。しかも競輪界的にはグランプリシリーズ一色だし。だから今回は、どうすれば10大ニュースが人の目に留まるかを考えてきたんです。
ーーやはり、この企画への執着がすごいです。
いや、佐世保記念で早々と飛んでしまってあまりにもヒマだったから。さっきも言ったように、このコラムは毎年グランプリシリーズ中に公開されるので、タイミング的にインパクトが薄いんです。これじゃ、いつもまでも目立たないし数字も取れない。
ーー何かいいアイディアが浮かびましたか。
要は、目立たないといけないんです。そこで今回は、グランプリを全面に打ち出した10大ニュースにしたいんです。
ーーちょっと、意味がわからないです。そもそも、中川選手はグランプリどころか寺内大吉杯も欠場したじゃないですか。
そうなんですよ、そこが問題で。だから、どうするかっていうと、サムネに「グランプリ」って文言をムリヤリ入れて勝手に携わるんですよ。12月は「グランプリ」ってキラーワードですから。
ーー「ワッキー頑張れ!! 中川誠一郎から見たグランプリ」みたいな感じですか。
いや、それではまだインパクトに欠けますね。もう「中川誠一郎が、禁断のグランプリ予想!?」とかまで突き抜けないと。
ーー絶対、各団体から怒られます。
それぐらいのサムネ詐欺ってことですよ。予想、してもいいんですか? みたいな質問に“いやいやダメに決まっているじゃないですか〜。予想は引退してから。もう少し現役をさせてくださいよ〜”とか落とす感じで、実際にグランプリの話題はほとんど出ない。
ーーグランプリを使ってまで数字を取りに行くとは悪知恵が働きます。
画期的じゃないですか。グランプリの何かの企画かな? ってクリックさせて、この10大ニュースに飛ばされるって。
ーー以前も脇本(雄太)選手や平原(康多)選手の名前を使って似たようなことをしていました。
そんなムキになってviewを稼いだところで、YouTubeと違ってこっちの収益にはならないんですけど。ギャラも5%減のままだし。
ーー相変わらずカネの話になると口が回りますね。さて10大ニュースに参りましょう。
ーー荒井崇博選手ですね。
まさか、メディア嫌いの荒井さんで数字を稼ぐ日が来るとは。世には荒井マニアが結構多いんですよ。
ーー中川選手は先日の佐世保記念でも一緒でした。
佐世保は荒井マニアの平原がいて、会うなり開口一番「先輩! バイトお疲れ様です!」って来てくれました。だから「やっと本業に帰ってきたよ」って返しました。
ーー荒井選手は4連勝で完全優勝と非の打ちどころのないレース運びでした。
レース後は「特選から4連勝なんて、オレ、チョーイチ(超一流)みたいじゃね?」とか自画自賛していましたよ。打ち上げに誘われたけど、翌日バイトがあったから帰りました。上機嫌の暴君をみんなが苦笑いで囲む、ジャイアンリサイタルみたいだったでしょうね。
ーーそれでも、平原選手や新田(祐大)選手らが参加するなか4連勝でねじ伏せてしまうのだからすごいです。
今の競輪界にあれだけ開催そのものを支配できる人っていないと思う。前検日から雰囲気の出し方がとてもうまくて。たぶん素なんでしょうが、わざとでもすごいなって。
ーー地元開催へ向ける並々ならぬ思いが表に出るということですか。
そんな感じです。昔ながらの昭和の競輪を出してくるんですよ、この令和の時代に。(井上)昌己は語らずレースだけ見ていて欲しいってタイプだけど、荒井さんはオーラをビンビンに出す(笑)。
ーーレースにも影響しますね。
不思議と流れが向くんです。準決も決勝もまあまあピンチでしたよ。だけど色々なものが荒井さんに向き、何か偶然が起きても荒井さんが勝つための必然になっていく。
ーー来年も荒井さんとのエピソードを楽しみにしています。
見習いたくないところがほとんどですが、地元記念への入り方とかは見習わなければいけないなと思いました。
ーーこれは、ゴルフの話ですか。
麻雀と一緒で堂々と人に言えるような趣味じゃないですが、ゴルフが好きなんです。先日、(中本)匠栄のゴルフデビュー戦に立ち会ってきました。
ーー競輪選手はゴルフを趣味にする人が多いです。
GIIに共同通信社杯ってあるでしょう。あれって優勝すると副賞でゴルフクラブのフルセットがもらえるんです。(中本は)もらったけどなかなかこれまでやらなくて、3年寝かせたそのセットを持ってゴルフ場にやって来ました。
ーーどのようなメンバーでラウンドしたのですか。
(倉岡)慎太郎さんに引退した本田博さん。あとは高木(竜司)さん、寺ピー(寺崎祐樹)、兼本(将太)にオレたちです。
ーー他の方はともかく、中本選手には負けられませんね。
そうですよ。高木さんから「匠栄に負けたらゴルフもう引退だな」って言われたので、引退をかけた戦いでした。何とか勝ちましたが(笑)。
ーー楽しかったですか。
バーディーのときなんて、うれしすぎて思い切り喜んでいたら、周りに「競輪で1着を取ったときより激しいガッツポーズだった」とか言われて。あと、そこで変な縁を感じたんです。
ーー何でしょうか。
実はオレのクラブセットも共同通信社杯のやつなんです。2006年に合志(正臣)さんが優勝したときにもらったものを譲っていただいて、それがきっかけでゴルフを始めたんです。だから、匠栄の筆おろしと被るなんて、何か縁があるのかなって思いました。
ーーこれは外せません。
こんなボロボロな自分にありがたかったです。皆さま、来年もぜひよろしくお願いします(笑)。30位をキープだなんて言えないし、出られるだけでいいですので。
ーーGIに出られる機会が激減しているので大事なアピールですね。
来年は2月岐阜の全日本選抜競輪が引っかかったんです。まさか、もう一個、吉報が届くとは。とにかく来年もオールスター30位に選んでもらえるよう、あの手この手で取り組みます。
ーー中川選手はドラクエウォークが好きで以前からあちこちに行っていますね。
山梨県の富士急ハイランドで大きなイベントがあったので、1泊2日の弾丸ツアーをしてきました。
ーーそこまで好きなのですか。
オレと高木さんはガチウォーカーなんです。富士急では1人で2時間以上スマホを持って真剣に取り組みました。
ーー遊びには全力をかけますね。
そうしたら、ある競輪選手に見られていたみたいで。後日、回り回ってオレの耳に入ってきました。
ーーどんな話が入ってきたのですか。
「富士急で中川誠一郎を見かけたが真剣な表情でイベントに参加していたので、とてもじゃないが声をかけられる雰囲気じゃなかった」って。
ーー声をかけてもらえないのも逆に恥ずかしいですね。
そうなんですよ。少年のように遊んでいただけで、何も悪いことをしているわけじゃないんだから(笑)。冷静に観察されていたのかと思うと結構、恥ずかしかったです。
ーーこれは熊本ならではです。
熊本県内の各地に漫画「ONE PIECE」の銅像があるんです。ぜんぶ周るのが聖地巡礼と言われていて。高田隼人さんの影響を受けてオレも行ってきました。
ーー何体あるのですか。
10体ですね。さすがに1日で回るのはきついので空いた日を使って何回かに分けて。最後は全線復旧した南阿蘇鉄道の「ONE PIECE」列車に乗って、阿蘇駅の「ウソップ」と高森駅の「フランキー」の銅像を回ってコンプリートしました。
ーーこれは興味深いです。
まだ完成は先なのですが、ウォークトップなしの2層しか塗っていない状態でひとまず試し走りをしてバンクの確認をするということで、支部の役員たちが代表して乗ってきました。
ーー写真を見るかぎり、かなりでき上がっているように見えます。
形状もしっかりしているし、ようやくここまで来たかって感じですね。
ーー感慨深いものはありましたか。
色々と想像をしていたんですけど、いざ走ってみると景色もそんなに変わらないし、ああ久しぶりって思ったぐらい。バンクがあるときのいつもの日常がもうすぐ戻るなって。
ーー来年が楽しみですね。
試走会のとき、飲み屋や競輪場で会ったことのある人がバンクにいて。話をしていたら、なんとその人はバンクの担当者さんでした。「早くバンクをつくって、ただの競輪ファンに戻りたい!」って力説していました。そんな人が携わっているのだから、熱い思いがこもった素敵なバンクになること間違いなしです。
ーー7月に西川(親幸)さんが電撃引退しました。
ビックリしましたよ、まさに名物レーサーでしたから。この間の祝賀会で久しぶりにお会いしましたが、まったく変わっていませんでした。
ーー最近は開催が終わると連絡が来ていたという話でしたが。
今は減りましたね。そもそも、オレがまったくレースを走っていないから(笑)。走ると毎回、苦情と暴言がくるシステム(笑)。あと、今月に隼人さんと(仲山)桂さんが急に辞めちゃいました。
ーー高田さんは先日の500勝祝賀会の発起人でしたね。
隼人さんは昔から飲み友だちなんです。共に田川辰二塾生なので今後もかなりの頻度で会うでしょうし、辞めた感じがしないです。つい先日も第2回の送別会をしてきたぐらいですから。
ーー第2回ですか!
たぶん、このあとも第15回ぐらいまでやるでしょうし、肝臓を鍛えておかないと。
ーー仲山さんも突然でした。
桂さんは下ネタを言っているかイタズラをしているイメージばかり(笑)。練習に来てもノーアップでいきなりモガいて、30分もしないうちに帰ったりして本当にコスパがいいと思った。
ーー歌手としても活動していましたよね。
作詞作曲をしてライブをするわ、以前はショップやバーもやっていたような。今も兼業で何かやっているみたいだし、人の3倍ぐらい生きている気がします。
ーー先輩たちが減っていくのは寂しいですね。
こうして送る機会が増えると、いろいろ考えさせられますね。お先されると後に続きたい気持ちもあるし、まだやりたい気持ちもあるし複雑でした。
ーーこれはどういうことですか。
オレぐらいヤジに対して意見を持っている競輪選手はいないと思うんです。ヤジられてナンボという姿勢があるので。ただ、最近のヤジの傾向が明らかに変わってきて少し困惑しています。
ーー具体的にいいますと。
最近は酒系のヤジが増えて。「寒いから早く帰って熱燗でも飲めよ!」みたいな。
ーーそれはヤジじゃなくて声援ではないですか。
そうなんですよ。明らかに暴言系が減っているんです。先月、白岳Kaoruの話をしたじゃないですか。そうしたらさっそく、佐世保記念で「Kaoru飲んで、寝ろ!」ってエールが飛んできた。
ーーヤジられる耐性が身に付いている中川選手にとっては複雑じゃないですか。
複雑っていうか、“あ、これはコラムが浸透しているんだ”って思うようになって。そのうち1viewゲットだ、とか感じるようになった。間違いなく、これを読んでいるなって。だからありがたいですよ。
ーーやはり、これは外せません。
昨年、荒井(崇博)さんで、今年は(児玉)碧衣ちゃんと俺、川村(晃司)さん、(吉田)敏洋と身近な人たちが連続して達成したでしょう。
ーー10月の祝賀会も大盛況でした。
12月には久留米で碧衣ちゃんの祝賀会があったので参加してきました。豪華な会場で雰囲気もよくて、話を聞いたらどうやらオレの祝賀会を参考にしてくれたみたい。
ーー祝賀会といえば1月に荒井選手も開催しました。
そうです。あれが自粛ムードをかき消す突破口になった感じ。けっこう強引に開催しましたからね。あの後にオレや碧衣ちゃんがどさくさに続きました。やっぱり晴れ舞台はいいですね。来年以降も熊本で多くイベントがあることを願います…… ん?
ーーそして今年の1位ですが。
あ、んっ? これで10個、取り上げましたよね?
ーー今、10位から2位まで取り上げましたので残り1つです。
すいません。9個しか考えて来なかったです。浮かばないので、今年は9大ニュースでお願いします。よって、ぜんぶ1個ずつ繰り上げてください。だから500勝が1位。
ーー最低な終わり方ですね。
今年は全然まともなレースをしていなかったから、1年が早かった。ケガも体調不良もあったし、来年はいい思い出を作って10大ニュースができるように踏ん張ります。皆さん、よいお年をお迎えください。
【大募集】
中川誠一郎選手が、読者の皆さんのお悩みを解決します!「仕事がうまくいかない」「お酒がやめられない」「オフの日の過ごし方は?」……など皆さんからのお悩み&質問を中川誠一郎選手へお届けします!
中川誠一郎
Seiichiro Nakagawa
中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。