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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】貧乏ヒマ無し!? 心入れ替えた中川誠一郎、合言葉は“カツカツが勝つコツ”♯33

2024/02/14 (水) 18:00 52

貧乏ヒマ無し!? 1月は各地を駆けずり回り大忙しだった中川誠一郎。わずかにモチベーションも上がり本業にもようやく兆しが見えてきた様子だ。日本酒を水のようにスイスイと流し込み、気分よさげに競輪の魅力を紐解きます。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】】

ーー今回は日にちが空きました。遅まきながら今年初のコラムになります。

 1月から2月の前半がものすごく忙しかったんです。1月はあちこち回って6週続けて飛行機を往復していたぐらいですから。

ーー1月は大宮記念と岐阜のFIシリーズ、そして2月頭に静岡記念を走りました。特別に忙しいようには見えませんが。

 大宮は前日に移動したのですが羽田の事故の影響で飛行機が飛ばず、福岡空港で5時間足止めを食いました。今年は心を入れ替えようとした矢先に出鼻をくじかれて、やるせなかったです。

ーー心を入れ替えるとは…。

 去年、あまりにも欠場が多くて、年末に出走本数が足りなくなるほどでした。今年はその反省を踏まえて仕事に打ち込もうと思ったんです。

ーー今年6月にはアラフィフに突入しますし、ようやく改心したのですね。

 そうだったんですけど、もう5時間で心が折れてしまい福岡空港で帰ろうとしたぐらいでした。

ーーまだ前日移動だったから良かったじゃないですか。

 当日移動組はもっときつかったそうです。伊丹空港回りで新大阪-東京は新幹線だったり。ガルちゃん(上田尭弥)なんか熊本からオール新幹線で、しかも自由席もいっぱいだったからドアの前にスーツケースを置いて座っていたって。

ーー移動だけでひと苦労ですね。

 しかもサングラスをかけていたみたいで。あんなデカいやつがグラサンかけてスーツケースに座っていたら怖いですよね。知らなかったら話しかけたくない。

ーー無事、到着しましたが初日予選は6着で早々と敗退しました。

 前検日、初日と何か体調が思わしくなかったんです。途中できつかったから帰ろうと思ったんですけど、飛行機も飛んでいないし留まりました。

ーーそのあとは開き直ったかのように3連勝と巻き返しました。

 まさに、“負け戦の鬼”が久しぶりに戻ってきました。

ーーその名前は、もう10何年も前に轟いてしました。

 いやいや7、8年ぐらい前まで呼ばれていましたよ。いわゆるビラピンピン枠。今はGI戦線で活躍できなくなったから、かつての主戦場に帰ってきました。

ーー初日に敗退しても2、3日目を連勝すると、最終日は決勝のひとつ下の格付けのレースを走れるのですね。

 そうです。特別優秀です。最終日は自力で動いて終わったと思ったら(中本)匠栄が位置をつくってくれて、そこから伸びたんです。そのおかげで匠栄は失格でしたけど。

ーー負け戦とはいえ3連勝はすごいです。大宮の500バンクが合ったのでしょうか。

 そうでしょう。500バンクは得意種目ですから。鬼にもなれます。

ーー新年、一発目のレースで目覚めたのは収穫だったでしょう。

 目覚めた、というより目覚めなきゃいけない理由があったんです。

ーーまた、思わせぶりですね。

 1月から選手のユニフォームに掲出するスポンサー制度が無くなったんです。だから、今はどの選手も胸元には何も入っていないでしょう。

ーー確かにそうですが。あっ、まさか…。

 おわかりいただけましたか。スポンサーが無くなり定期収入が減ったんですよ。だから、いいところを走って稼がないといけないんです。それで頑張ろうと奮い立ちました。

ーー毎月、ユニフォーム代っていくらぐらいもらっていたのですか。

 全盛期は10トン以上、最後の方でも7〜8トンはもらっていましたよ。

ーー結局はカネですか。相変わらず好きですね。

 以前はGIクラスだったので単価が高かったから一発で整ったけど、今は一本の単価が安いから稼がないと大変なんです。だから、ある格言が頭に浮かびました。

ーー格言ですか。

 “カツカツが勝つコツ”ですよ。カネがカツカツ、それが原動力になる。

ーーそれって違う人が使っているフレーズじゃないですか。

 そうですよ。X(旧Twitter)でウチの同期が使っていたものにインスパイアされました。

ーーあちらは“コツコツが勝つコツ”でしょう。

 そんな言葉を思い出して、あ、こっちだ! と気づきました。だから飛んだぐらいで欠場している場合じゃないんです。それで負け戦の鬼が立ち上がったわけです。

石井寛子(写真左)の600勝に乗じて坂本健太郎(写真右)が意味不明発言

ーー岐阜は決勝まで勝ち上がりました。気配も良さそうでしたが。

 後藤(大輝)君のおかげで決勝に乗れました。あんな若い子に介護してもらい寿命が伸びた感じです。

ーー吉田有希選手との2分戦でした。

 メンバーを見た瞬間、絶対にモガキ合いになると思い走る前からカツ丼を一気食いしたぐらい胸やけしました。まあ、決勝に乗れてよかったけど、あの開催のメインイベントは決勝じゃなかったですね。

ーーあの開催の大きなニュースといえば、ガールズケイリンの石井寛子選手が通算600勝を挙げていましたよね。

 600勝って数字すごくないですか。ガールズとはいえなかなか達成できるものじゃないですよ。オレも500勝以上していますが。

ーーちょいちょい自慢を挟みますね。

 (坂本)健太郎がいて「3人合わせて1600勝ぐらいですね」とか言ってきたけど、そもそも、3人の勝利数を合わせてどうすんだよって(笑)。もう意味がわからなかった。たぶん、もうすぐ自分も500勝を挙げますよって言いたかったんだと思います。

鉄人・倉岡慎太郎ら笑顔の熊本ファミリー

ーー1月のレースは2つじゃないですか。先ほども聞きましたがそんなに忙しく見えませんでしたが。

 いやいや、超忙しかったんです。岐阜のあとには(徳永)哲人のゴルフ筆おろし(デビュー)があったので立ち会ってきました。

ーー前回は中本選手の筆おろしでしたし、毎月そんなことをやっていますね。

 岐阜が前、後泊だったしその翌日ですから。そのまま静岡記念に行きました。

ーーメンバーは。

 (倉岡)慎太郎さん、(上野)優太、高木(竜司)さんらいつもの面々(笑)。あとモリ(森山智徳)が「2年ぶりです」とか言って珍しく来ました。

ーー結構、大所帯ですが盛り上がりましたか。

 2年ぶりとのモリに負けましたけどね。さすがに哲人には勝ちました。6週、飛行機で往復しているなかでも3回ゴルフに行きましたから。

ーー残りの日々は何をしていたのですか。

 東京にドラクエフェスに行って、旅行に行ってとバタバタでした。だから、今月発売された「龍が如く8」をまだ5、6時間しかやれていません。

ーー「龍が如く8」とはゲームソフトですか。

 はい。でもオレが家に帰ったら子どもはすでに20時間近くやっていたんです。おい、オレの稼ぎで買ったゲームだぞ、ふざけんなよって父親の顔になりました。ちなみに荒井(崇博)さんは90時間していたみたい。それもひどい話です(笑)。

人見知りの筆者が友達になった川津悠揮

ーー静岡記念を振り返ってください。

 静岡は荒澤(貴史)さんの部屋にずっといました。メシを食ったあとに部屋でぼーっとしていると、「遅い!」とか言って荒澤さんが迎えにくる謎のシステムでした。

ーー荒澤選手は同期ですね。

 荒澤さんと同部屋の川津(悠揮)君と佐藤(博紀)君と4人でずっとしゃべっていました。2人とはこれまでほとんど接点が無かったのに、すっかり仲良くなりましたよ。

ーー確かに、その2人との接点はまったく浮かびません。

 2人は深谷(知広)と同期なんです。川津君は静岡で久々に会ったみたいで「深谷がオレのこと覚えていてくれて、前検日におみやげもらいましたよ」ってすごくうれしそうにしていた。お前はファンかって(笑)。

ーー川津選手、おもしろいですね。

 川津君は準決勝に乗ったんです。オレは二次予選で飛んだので、もうそこからは「川津さん、お疲れ様です」って敬語でした。荒澤さんは初日から飛んでいたけど(笑)。

ーーそうやって、先輩をオチに使うのは良くないですよ。

「決勝に乗ったら川津様って呼ぶよ」って応援したけど、乗れずに最終日は特選回りでした。でもオレは特別優秀に乗ったので、最終日に立場は逆転しました。

ーー他県の後輩にまで負けず嫌いオーラを出すとは。

 これまで北日本の友達って新田(祐大)と(渡邉)一成に(大森)慶一ぐらいしかいなかったけど、仲間が増えて良かったです。

ーー静岡はGIを初めて取った印象深いバンクです。何か思い出したりしましたか。

 3日目は2着だったんですけど、ダービーの雰囲気を思い出しました。川村(晃司)さんから「やっぱり走り方を知っているねえ〜」って言われて、自分でもカマしている間に“ああ、6600万円を取ったときはこんな感じだったなあ”って。

ーーでも実際は…。

 7年前なら逃げ切っていたけど、行かれてしまい2着。これは明らかな老化ですね。オワコン街道まっしぐらです。

深谷知広の強烈ブロックに筆者は撃沈

ーーとは言えども、二次予選は久しぶりにいいスピードで仕掛けていました。

 スムーズに車が出たしいい時の感覚でした。あれはケガをする前のもので、最近のなかでは一番よかったです。

ーー深谷(知広)選手のブロックが無ければ突き抜けていたと思いましたか。

 深谷は振ってから前に踏むと思ったから2、3着はあると思ったんです。でも、しつこかったし最後のもうイチ押しがきつかった。

ーー執ようなブロックに食い下がっていたようにも見えましたが。

 普通の追込選手ならあそこまで来ないし、すぐ戻るんですよ。でも、もう一発きたし内も入られたので締められなくなり終わりました。あれで深谷が飛んだら嫌がらせだけど、1着だから何も言えない(笑)。

ーー確かに深谷選手が強かったです。

 二次予選は燃える材料もありました。準決、決勝あたりでアテ馬にされて華々しく散るならいいけど、まさか二予で自力扱いと思わなかったから。

ーー切られ役としての自覚があるし、やはり格が違います。

 しかも12Rかよって。メインのアテ馬だったのも静かなる闘志となって、昔のギラギラしたものを思い出したんです。

ーーそれでも、兆しが見えたのはいいことですね。

 刀が抜けるようになってきました。以前なら、さやがサビすぎて抜ける状態じゃなかったけど、今はまだサビているけど抜ける。ちょっと兆しが見えてきました。

ーー戦う気持ちを取り戻したと。

 きっかけはカツカツだったけど、そのあとにモチベーションが上がってきた。それもこれも7月の熊本再開があるからでしょう。もうちょっと頑張ります。

ーー今月も質問が来ておりますのでお答えください。

Q. チョイ差しはセンスだとどこかで聞いたことがあるのですが、どうですか? 中川さんは得意ですか?(熊本県/20代/男性)

 それ、自力のオレに言わせますか。チョイ差しは自分が1着を取りたい気持ちと前を残したい気持ちの天秤のバランスでしょう。要は欲望のバロメーターってこと。小倉(竜二)さんとかは自分を出し過ぎず、前を立てながらとか…。まあ、それがセンスかと言えばセンスか。ちなみにチョイ差しの上はズボ差しと言うのですが、さらにその上をいく「4角から番手まくり」って人も以前にはいました(笑)。

Q. 荒井さんって漢ですよね! 師匠の原司さんに2回も記念を勝たせるあたり最高でした。その際に「記念はいつでも取れるので」とサラッと言ったことも心に残ってます。荒井さんの漢気あふれるエピソードを教えてください。(埼玉県/40代/男性)

 ひとつ思い出しました。静岡で千葉の野口(裕史)君から「コラムの読者です」と声を掛けられて「なぜか、ジャイアン扱いになっている荒井さんの話が大好きです」って。やっぱり人気がありますね。こんな話題がさらりと出るあたり、人気があるしすごく漢らしいと思いませんか。

Q. 荒井崇博さんと伊藤旭さんは今後もラインを組まないんですかね? 最近、旭さんは力を付けてきていると思いますが。(熊本県/20代/男性)

 また、荒井さんの話ですか(笑)。ってか、皆さんこういうビミョーな話題を何でいつもオレに聞くの? 確かに旭は力を付けてきているけど、オレ、この話題に登場しないから許してください。

Q. 取鳥雄吾選手が後継者のような扱いになり、本人もまんざらではないようですが、若手の活躍が著しい昨今、俺ら側の選手だなって子はほかにもいますか?(岡山県/20代/男性)

 いわゆるピンピンビラ枠。今年、走ったどこかでオレら側に雰囲気が寄っているなって子がいたのですが、誰だか思い出せないんです。生まれては消えていくなかのひとつでひらめいたのですが、今月は忙しくて色々なことを考えているうちに忘れてしまいました。アイツじゃないか、と思われる選手が浮かびましたらどなたか教えてください。何も景品は出ませんが。

Q. 以前、地元のゆうかファミリーロードを走っておられる中川選手をお見かけしたのですが、そういう時にお声掛けしても失礼にあたりませんか? 街道練習中の中川選手オーラが半端なかったです。熊本競輪場の再開時、多分GIが開催されると思うのでその時はまた強い誠ちゃんを心から応援させてください。大ファンです!(熊本県/40代/回答無し)

 めちゃくちゃドがつくローカルな質問ですね。もう23年間、走っていますよ。ロード練習に行く時にあの道を通ります。ぜんぜん声をかけてください。ただ、そっとかけてくれるとありがたいです。この間も車から突然「頑張れぇ〜〜〜〜〜!」って大きな声がかかって、もうビクっとしてコケると思いましたから。

Q. うちの息子(22歳)の顔が中川選手にそっくりです。大丈夫でしょうか?(千葉県/40代/男性)

 大丈夫でしょうか? とは何がでしょうか(笑)。すごくいい質問のあとに強烈な容疑がかかりましたね。22年前ってデビューした年ですよ。千葉かぁ…… んっ…? あっ!!

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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