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ほろ酔い放談 -競輪の因数分解-

【競輪偏差値70の男】競輪出走ゼロの11月はバイト漬け!?「まるで夏休みの学生です」♯31

2023/12/08 (金) 18:00 49

500勝記念祝賀会で浴びた久しぶりのスポットライトに胸が躍りウキウキ気分で迎えた11月だったが出鼻をくじかれ撃沈! さぞかし無念と思いきや、それなりに充実した日々を過ごした本業は競輪選手の中川誠一郎。アルバイトに魂を込めた怒涛の一か月を振り返ります。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】

 すいません。このコラムを始める前にひとつ報告と言うかお伝えしたいことがあります。

ーー唐突ですね。いったい何がありましたか。

 このコラムを担当してnetkeirinさんから毎月バイト代を頂いているのですが、ここ2か月ですか、報酬が5%ちょいカットされていたんです。

ーーいきなりおカネの話ですか。相変わらず好きですね。

 いやいや、クレームとかじゃないんですよ。たぶん税金だとかインボイスの影響だと信じたいのですが、ただ、オレの(コラムに対する)テンションも5%ばかり下がってしまうので、そこのところだけご了承願えればと思いまして、報告でした。

ーーつまり、5%分は手を抜くと…。

 いやいや、手を抜くとかクレームじゃないんです。世間的にもギャラの分は働かせていただきます、って言うじゃないですか。そこはご了承ください。

ーーわかりました。さて、本題に入りましょう。11月は一本も競輪を走りませんでした。休みすぎじゃないですか。

 松阪は祝賀会から中1日で日取り的に厳しいから欠場しました。京王閣は走るつもりだったけど直前に体調を崩したんです。1年3か月ぶり2度目のアレでした。

ーーそれでは、いつもながらにヒマな日を過ごしていたと。

 いや、それがですね、合間、合間にバイトが立て込んでいてなかなか忙しかったんです。

ーー本業をおろそかにしてアルバイトですか。

 まずは選手会の訓練講習会があったので行ってきました。

ーーそれはアルバイトじゃなくて支部の公務ではありませんか。

 いやいや、しっかり報酬をいただいていますから (笑)。江戸(中川は「東京」のことを「江戸」と表現する)から選手会の安田(光義)理事長もいらして近況報告と質疑応答をして、そのあと意見交換会にも参加しました。

ーー理事長と接点はあるのですか。

 はい。安田さんはオレがナショナルチーム時代、選手会の強化指定の担当だったため以前から知っていました。

ーー意外なつながりですね。

 安田さんが講義中、話の流れで「中川選手もお酒が好きみたいで〜」とか言っていて。懇親会のときにはボソっと「コラム、読んでいるよ」って。まさか読者だったとは(笑)。

ーー支部の役員として前向きな話はできましたか。

 公務ですから。もちろん、建設的な話ができました。酒好きな全競輪選手の代表として開催中のお酒の復活を直訴してきました。

ーーそれは私利私欲を満たすだけで、建設的でも何でもないじゃないですか。ちなみに以前は開催中にお酒を飲めたと聞きました。いつから休止しているのですか。

 コロナが流行りだしたころですね。昔は制限が無く飲めたのですが、酒の提供そのものが休止となって現在に至るです。

ーーそこで直訴と。

 はい。別に好きなだけ飲ませてください、とかそんな厚かましいものじゃないんです。夕食の際にビール瓶1本だけでいい、と。大事に味わって飲むからお願いしますって。

ーー理事長も突然、意味不明なことを頼まれてさぞかし困ったでしょうね。

 ものすごい大人の苦笑いをされて「き、気持ちは分かります…」と言ってくれましたが、明らかに困惑していました(笑)。コロナの影響でサウナとお酒とマッサージが休止になったけどサウナは復活したんです。せめてビール瓶1本だけはって感じです。

吉田敏洋(左)、川村晃司(右)と

ーー次のアルバイトは何でしょう。

 スピードチャンネルの「同期のチカラ#12〜オレたちの時代〜」って番組の収録に江戸まで行ってきました。

ーーどのような企画だったのですか。

 同期(85期)の(吉田)敏洋と川村(晃司)さんと昔話をするっていう内容でした。

ーーどうしてその3人が選ばれたのでしょうか。

 たぶん、敏洋がピックアップしてオレと川村さんを選んだんじゃないですかね。残念ながら東口(善朋)はいなかったけど。

声がかからなかった東口善朋と

ーー同期の話になると、とりあえず東口選手の名前が出ます。

 敏洋に「ウチのエースを呼ばなくて良かったの?」って聞いたら「オレら3人は自力でやってきて同じ年に500勝を達成したじゃないか」って。その縁で選んだものと思われます。

ーーぜひ東口選手にも出て欲しかったですね。

 “東口クン、同期で一番強いけど申し訳ない。別に好き嫌いで呼ばなかったわけじゃないよ”ってこのコラムを通じて伝言をしておきます(笑)。

ーータイプが違うせいでしょうか、その3人の接点がイマイチつながらないのですが。

 ですです。学校時代からめちゃくちゃ仲が良かったってわけじゃないんですよ。もちろん競輪場で会えば話はしますけど。

ーー収録後は3人で飲みに行こうとはならなかったのですか。

 敏洋は帰るって言うし、川村さんは子どもさんが関東にいて会いに行くとかで解散しました。そもそも2人ともプライベートで会うほど深い関係じゃなくて、私的に飲んだのもそれぞれ1回ぐらいしかないんです。

見るからに熱い吉田敏洋と

ーーGIなど仕事場では頻繁に一緒になっていたのに不思議ですね。

 そんな関係の3人で改まって話すっていうのがムズかゆかったですね。知っているけど遠いっていう微妙なぎこちなさ。そのぎこちなさがかえって新鮮でしたけど。

ーー思い出話もたくさんあるでしょうし、話題は尽きなかったのでは。

 テーマが不思議な縁、みたいなもので、オレと川村さんは同じ日に500勝を挙げて、オレが初めてGIを取った静岡ダービーは敏洋が2着だったりとか、そんな話題で盛り上がりました。久々に会ったけど、敏洋は熱いなと改めて感じました。

ーー学校時代からですか。

 学校時代も熱かったけど、デビューしてからの方が熱くて怖かった。オレも「もっとちゃんと走れよ」とか常に上から目線で怒られていましたから(笑)。

ーー放送はいつですか。

 今月9日です。微妙なぎこちなさを身にまといつつ、話していくうちに段々と噛み合っていく、そんな不思議な3人を見ていただければ。

熊本競輪場の記念式典に参加し記念品をゲット

ーーこうして話を聞くと結構、忙しいですね。次はどんなアルバイトを…。

 はい。熊本競輪場で行われた「500勝記念表彰式」に出席しました。

ーーそれこそアルバイトではないでしょう。

 いやいや、記念品でバカラのグラスをもらったんです。自転車の絵に「500」って入ったいいやつ。酒飲みにとっては最高のプレゼント。500勝を挙げてよかったなあって心底思いましたし、自宅ではもっぱらこのグラスで晩酌しています。そして次のバイトですが…。

未来の熊本の担い手は嘉永泰斗じゃない!?

ーーまだ、あるのですか。

 あります、あります。バイト三昧ですよ。久留米で支部合宿と支部プロがあったので公務として参加しました。

ーー熊本は若手選手が続々と出てきており、合宿も活況だったのではないですか。

 人数も集まったし精力的でしたね。練習はもちろんですが、それより食事会が盛り上がって。飲み放題プランにしたはずなのに、なぜか一升瓶5本が差し入れされたんです。

ーーそれはみんなで飲むしかないですね。

 空けなきゃ失礼になるから、ガバガバ飲みましたよ。みんな段々とハイテンションになってきて、松尾(正人)さんがとんでもないことを言い出したんです。

ーー松尾選手とは松尾勇吾選手のお父さんですね。

 そうです。勇吾を溺愛していて、好きすぎるあまりに「これからの熊本の中心は嘉永泰斗じゃないぞ。松尾勇吾だ」とか言い出して(笑)。そこで「勇吾ファースト」って言葉が生まれて熊本支部では流行っています。

ーー勇吾選手はどういう反応だったのですか。

 みんな受けているし何とも言えないような複雑な表情で、まさに究極の苦笑い。それを見たオヤジだけが悦に浸っているという最低な構図でした(笑)。松尾さんは「リップサービスだから本気にするなよ」って言い訳していたけど、満更でもないって顔だった。

中川が愛する「バーオー」コンビ(左:松尾正人、右:田川辰二)

ーー半分、冗談だよって感じですね。

 競輪選手の会話によく出てくる「バームー」って言葉、知っていますか?

ーーいや、まったくわかりません。それは松尾選手の話と関係あるのですか。

 単に「バカ息子」を略しただけです(笑)。もちろん冗談半分の呼称ですけど、そこから派生して親は「バーオー」って言うんです。

ーー内輪なら許される愛称ですが、外ではとても使いにくいスラングに聞こえます。

 ただの悪口を柔らかく言い換えただけ(笑)。みんなで松尾さんの親バカの度が過ぎるって話を延々としていたら、それまで黙々と飲んでいた辰兄(田川辰二)がボソっと「かけるファースト…」ってつぶやいたんです (笑)。

ーーまさか田川選手まで。田川翔琉(かける)選手のお父さんです。

 まさに松尾さんと辰兄は「バーオー」のそれで(笑)。辰兄なんか松尾さんに「言いにくかった父親の気持ちをよく言ってくれた」とか感動していて。それから数日後、先日の500勝祝賀会の幹事たちでお疲れ様会をしたのですが、その時もバーオー2人が同じ話で盛り上がっていました。

ーーここまで、とうとう競輪のエピソードがありませんでした。

 あ、最後まだバイトがあるんです。千葉の「PIST6」を走ってきました。レースは普段通りでしたが、徳島の藤岡隆治さんに「コラム、面白いよ」って言われました。

ーー12月は責任を持って仕事をしてください。

 まるで夏休みの学生かって思うほどバイト三昧でしたが、佐世保記念から復帰します。荒井(崇博)さんが長崎に移籍してから初の地元記念になるし、少しでも戦力になれるよう九州軍団の一員として戦ってきます。

「500勝祝賀会」幹事との慰労会に出席

●質問コーナー

ーー今月も質問が来ておりますのでお答えください。

Q. デビューした頃みたいにもう一度金髪にしてくれませんか?(熊本県/20代/男性)

 最近、白髪が増えていて、もっと増えたら色を抜いて金髪とかにするかもしれません。とはいえ、まだ数年は大丈夫と思うので、引退して九スポの評論家に雇ってもらった頃にはそんな色でアルバイトに勤しんでいると思います。

Q. 熊本に来たらこれを食べろ! このお酒を飲め! みたいなのありますか?(神奈川県/30代/回答なし)

 今「白岳KAORU」って米焼酎にハマっています。九州人のくせにこれまで焼酎が苦手だったのですが、KAORUに出会って変わりました。ソーダで割るとビールみたく何杯でもいけるし、酸味の強い日本酒っぽくなるのもいい。もはや晩酌のクリーンナップです。熊本界隈ではそのうまさ、広まっていますよ。

Q. 中川さん、初めまして。私は61才の競輪大好きおじさんです。20代から競輪に出会い365日ほぼ競輪を買っています。病気と言われても辞めようとは思いません、あの大勝した時の興奮が忘れられません。やっぱり病気でしょうかね?(京都府/60代/男性)

 それは間違いないです(笑)。自分も開催中、晩酌ができないのがきつくてたまりませんから、お互い治らないでしょうね。若い頃から通じて熱中できるものがあるっていいですね。

Q. 荒井崇博選手って本当は心根の優しい紳士なのではないですか? 朝は横断歩道で旗を振って子どもの通学を見守ったり、ゴミ拾いなどのボランティアに精を出すような。私の勝手な思い込みでしょうか?(東京都/40代/男性)

 その姿を想像しただけで笑ってしまいます。だってヤバくないですか? 子どもの登下校を見守る荒井さんとか、空き缶を拾ったりする荒井さんとか。そんなの考えたらエンドレスに酒が飲めますよ。質問者様がどこをどう解釈して荒井さんが「心根の優しい紳士」に見えたのか非常に興味があります。

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中川誠一郎選手が、読者の皆さんのお悩みを解決します!「仕事がうまくいかない」「お酒がやめられない」「オフの日の過ごし方は?」……など皆さんからのお悩み&質問を中川誠一郎選手へお届けします!

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中川誠一郎

Seiichiro Nakagawa

中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。

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