2023/12/21 (木) 12:00 4
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は玉野競輪場で開催されているひろしまピースカップの決勝レース展望です。
広島競輪場が改修中のため、今年の【ひろしまピースカップ】は玉野競輪場での開催となっています。
玉野競輪場は選手時代に記念大会を3勝した験のいいバンクです。また、同期(55期生)の柳原(茂己)さんや、54期生の三宅(勝彦)さんとも仲が良かったこともあって、毎年のように合宿を行っていました。
その際には競輪だけでなく、競技でも活躍されていた、本田(晴美)さんの走りにも目を凝らしていました。
当時は本田さんのようなトップの選手に対して、合宿とは言えども、他地区である自分が同じ練習をさせてもらうのはもっての外でした。なので、合宿中は柳原さんや三宅さんに教えてもらった、本田さんと同じ練習メニューを自分も行っていました。
その時の経験があったからこそ、玉野バンクでの活躍に繋がったのかもしれません。一緒に練習をしてくれた柳原さんや三宅さんだけでなく、他地区の自分を受け入れてくれていた、本田さんにも感謝するだけです。
玉野競輪場は癖の無い400バンクと思いきや、意外と捲りづらく、勝負どころで後方に置かれると、巻き返すのが大変となります。それでいながら寒波の影響もあって、先行選手は空気の重たさをひしひしと感じているはずです。
準決勝10レースでは守澤選手、12レースでは松井選手と、今大会の注目選手が落車で失格となってしまったのは残念です。
また、11レースに出走していた新田選手も決勝に進出できなかった一方で、広島競輪場をホームバンクとする町田選手や、初日の特選から3連勝をあげている山田選手といった、調子の良さが目立つ選手が決勝へ駒を進めてきました。
決勝ではその町田選手と山田選手が西日本ラインを組むことになりました。決勝では唯一、3車で並ぶのが皿屋選手-浅井選手-山内選手の中部ライン。野口選手-大槻選手は東日本ラインとなります。そして稲川選手と佐々木選手は単騎です。
2車と言えども強力な並びとなった西日本ラインに、果敢に先行勝負を挑んでいきそうなのが、東日本ラインの野口選手です。
スタートを取るのは3車の中部ラインになると見ています。その後ろが西日本ラインとなりますが、稲川選手は西日本ラインの先行も考えて、町田選手-山田選手の後ろを回っているはずです。
稲川選手の後ろが佐々木選手であり、車番の悪くなった野口選手が中部ラインを抑えに行きますが、その時に3日間を通してバックを取っている町田選手が、一気に先行体勢へと入っていくはずです。
ここで町田選手が出切ってしまえば、番手を回る山田選手の完全優勝が見えてきます。
山田選手は単騎戦となった初日の特選では、北日本ラインの後ろに切り替えての快勝。決勝メンバーの中でもスピードの違いは明らかです。2着候補は先行した町田選手だけでなく、西日本ラインの後ろにいるであろう稲川選手も、その争いに加わってきそうです。
ただ町田選手と同様に、3日間を通して先行している野口選手が、やすやすと町田選手の先行を許すとは思えません。ここで両者がやり合うようだと、中部ラインの先頭を任された皿屋選手の捲り頃となります。
この展開となれば、皿屋選手の番手を回っている浅井選手が有利となります。浅井選手は東日本ラインが先行した場合でも、その後ろを中部ラインが取っているので、直線勝負となった場合でも浅井選手に分がありそうです。
決勝当日の玉野競輪場は好天ながらも、気温はそれほど高くならないとの予報が出ています。決勝の9名はウォーミングアップをしっかりと行ってから、レースに挑んでもらいたいと思うだけでなく、観戦に行かれる方も暖かい恰好で競輪場へとお越しください。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。