2023/12/21 (木) 12:00 15
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は立川競輪場で開催されるKEIRINグランプリのレース展望です。
30日に立川競輪場で行われる、【KEIRINグランプリ2023】の共同記者会見が19日に行われました。
そこでは車番と9選手のコメントも発表されています。予想を出すのはもう少し先となりますが、一足早くレース展望をしてみたいと思います。
1番車となったのは①古性選手で、以下順に②佐藤選手③松浦選手④眞杉選手⑤深谷選手⑥山口選手⑦清水選手⑧新山選手⑨脇本選手。その並びは脇本選手-古性選手の近畿ライン、新山選手-佐藤選手の北日本ライン、清水選手-松浦選手の中国ラインとなり、眞杉選手、深谷選手、山口選手は単騎となりました。
中国ラインの並びがどうなるかなと思っていましたが、予想通りに清水選手が前となったように、サプライズは無かったですね。
今年の競輪界の主役を務めてきた9名ですが、このグランプリに向けて調子を上げてきた感があるのは眞杉選手、そして深谷選手と単騎の2人です。そして、脇本選手がグランプリに向けて、どこまで調子を取り戻せているかも注目です。
その脇本選手ですが、古性選手が1番車となっただけに、近畿ラインがスタートを取るのが濃厚となりました。ただ、脇本選手は他の選手にスタートを取られたとしても、後方に車を下げてからの捲り、もしくはカマシ先行というレーススタイルに変わりはありません。
脇本選手が前受けをした場合、車番的に後ろに入っているのは北日本ラインで、その後は単騎の3人となります。7番手となった清水選手は脇本選手を抑えに入りますが、その動きに合わせて、単騎勢は中国ラインの後ろに切り替えていきます。
それを見た新山選手が一気に先行していきます。新山選手からすれば、一年を通して貫いてきたレーススタイルであり、それはグランプリと言えども変わりはないはずです。
この時に誰が北日本ラインの後ろに入っているのかが1つのポイントとなります。脇本選手を抑えに行った清水選手がその位置を取りにいきそうですが、単騎勢の3人も優勝に近づくためには、狙いたいポジションでもあります。
先行体勢へと入った新山選手ですが、後ろに脇本選手がいるだけに、仕掛けるタイミングが非常に難しくなります。
早めに踏み出していったとしても、脇本選手が自分の行ける距離から動き出していったのならば、昨年のグランプリと同じ結果になってしまいます。とはいっても新山選手が優勝を意識して構えてしまうと、脇本選手はすかざす捲っていくに違いありません。
今年、様々なレースで行われてきた「脇本攻略法」ですが、それを可能としてきた捨て身の先行選手が不在かつ、単騎の選手3人を含めての細切れ戦となったグランプリでは、「対脇本」よりも、誰もが優勝を意識したレースになります。
それだけに脇本選手が完調に近い状態で、自分の走りができたのならば、グランプリ2連覇は濃厚と言えるでしょう。ただ、脇本選手と同様に、「徹底先行」という自分のレーススタイルをここでも貫く新山選手を捲り切れなかった場合に浮上してくるのが、単騎勢の選手たちとなります。
2番車の佐藤選手がスタートを取りにいったのならば、新山選手の突っ張り先行も考えられます。この場合は最後方となった脇本選手が新山選手を抑えに行かないだけに、道中は一本棒で流れていくことになります。
この展開で浮上してくるのが、北日本ラインの後ろを回っている単騎勢の3人です。3人共に自力のある選手であり、後方から捲ってきた脇本選手や清水選手も含めて、ゴール前は大混戦となりそうです。
その時に立川の長い直線を味方に抜け出してくるのは、北日本ラインのすぐ後ろを回っているであろう、眞杉選手ではないかと見ています。
眞杉選手は加速に優れたスプリンターの選手というよりも、トップスピードを持続させる「地脚型」の先行選手です。それだけにスピードの出やすい「軽いバンク」では苦戦している印象もありました。
それが、風の影響を受けない屋内バンクの小倉競輪場で行われた競輪祭では、今回と同じ単騎戦でGI・2勝目をあげています。これは調子の良さもさることながら、若さみなぎる走りが、スピードの絶対値を上げているのでしょう。
「地脚型」の選手が得意としているのは、この時期特有でもある「重いバンク」でもあります。持続力に加えて、スピードを伴った眞杉選手ならば、グランプリ初出場での初優勝もあり得ると見ています。
一方でラインができている清水選手と松浦選手が、どんな作戦を練ってくるかも注目です。強力な捲りを繰り出せる深谷選手も、単騎とは言えども侮れません。また、ポジション取りの上手い山口選手も、道中の位置取り次第では、こちらもグランプリ初出場での初優勝が見えてきます。
ここ立川でグランプリを制している佐藤選手の、年齢を感じさせない走りも気になるところであり、予想をする側にとっても【KEIRINグランプリ2023】は特に面白いレースとなっています。皆さんもレース当日まで展開や推理を働かせながら、今年の大一番を共に楽しみましょう!
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。