アプリ限定 2023/12/22 (金) 18:00 25
立川競輪場で12月28日から30日まで開催される「KEIRINグランプリシリーズ」。29日に行われる「ガールズグランプリ2023」に出場する選手の今年の戦いぶりを、デイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。
今年で12回目を迎えるガールズグランプリ。舞台は4年ぶり4回目の立川だ。優勝賞金は過去最高の1330万円(副賞含む)となった。
優勝候補の筆頭は佐藤水菜だろう。ナショナルチームのエースとしてパリ五輪でのメダル獲得を目指すトップレーサーだ。自転車競技との“二刀流”でガールズケイリンの頂点を狙う。もちろん、2018年から3年連続でグランプリ制覇の実績を持つ児玉碧衣の抵抗も見逃せない。
それでは、ガールズグランプリ2023出場選手のこの1年の戦いぶりを、ひとりずつ振り返っていこう。
自転車競技日本代表の佐藤水菜がガールズグランプリ初制覇を目指す。2020年の夏からナショナルチームに所属すると21、22年の世界選手権・ケイリンで銀メダルを獲得した。来年8月のパリ五輪で金メダルを狙う世界のスピードスターだ。
ナショナルチームの活動がメインのため、ガールズケイリンの参加は少ないが、今年は17走して15勝と取りこぼしがほとんどない。
前半戦は3月のコレクション(別府)を優勝し、後半戦は10月のGI「オールガールズクラシック(松戸)」を優勝してグランプリ出場権を獲得した。
11月のGI「競輪祭女子王座戦」も決勝2着と上位戦でもしっかり結果を残している。12月はナショナルチームの合宿に参加しており、調整ばっちりで本番に臨むことだろう。
グランプリは4回目の参戦。昨年は最終3角で落車(再乗して5着)して終わってしまっただけに、「今年こそ」の気持ちは強い。自信のあるロングスパートで初のグランプリ優勝をつかみ取る。立川では直近2開催連続優勝しており、バンク相性の良さも追い風になりそうだ。
児玉碧衣は“女王奪還”を狙っている。グランプリはデビュー2年目の2016年から8年連続出場中で、2018年静岡、2019年立川、2020年平塚と3度の優勝を誇り実績はナンバーワンだ。しかし、昨年は前記の佐藤水菜と同じく最終3角で落車。人生初の鎖骨骨折を味わった。
今年はケガからのスタートで負けが続く苦しい状況だったが、戦うことから逃げなかった。結果が悪くてもしっかり動くレースを続けていくと、成績は少しずつ上昇。6月のGI「パールカップ(岸和田)」を制してグランプリ出場権を手にし、“完全復活”をアピールした。
8月のオールスター競輪で行われたコレクション「ガールズドリームレース(西武園)」では最大のライバル・佐藤をシャットアウト。きっちり優勝をつかみとった。
7年連続ファン投票1位に輝く人気はさることながら、大一番での勝負強さが児玉の魅力。ガールズケイリンを1年間支えてきた意地で、ナショナルチーム勢に抵抗する。
梅川風子は11月のGI「競輪祭女子王座戦(小倉)」で佐藤水菜マークから差し脚を発揮し優勝。賞金ランキング圏外から大逆転でグランプリ出場権を掴んだ。
グランプリは3年ぶり4回目の参加となる。佐藤と同様ナショナルチームで鍛えたパワーが持ち味。前回出場の2019年立川グランプリは落車(再乗)で終わっているだけにリベンジに燃えているはずだ。立川は昨年末の12月、今年5月と普通開催で2開催連続完全優勝で、出場選手中バンク相性は一番。地元東京勢のプライドをかけて臨む。
久米詩、吉川美穂の2人はグランプリ初出場だ。
久米は5月のコレクション(平塚)、7月フェスティバル(函館)を優勝。二つのタイトルを獲得し、賞金ランキング1位でグランプリに参戦する。
父・久米康徳(引退・70期)から受け継いだ競輪DNAが今年ついに開花した。昨年秋からナショナルチームの練習に参加することで脚力がアップ。組み立ての幅も広がった。19日の前夜祭を体調不良で欠席しており状態の回復具合だけが気になるが、ビッグレースでの強さが目立つだけに初出場Vも十分狙えるはずだ。
吉川はフェスティバル、オールガールズクラシックで準優勝。ビッグレースでしっかり賞金を上積みしたことがグランプリ出場につながった。
今年は普通開催ではしっかり人気に応えて優勝を量産。ナショナルチーム中距離チームで鍛えたテクニックはガールズケイリンでも上位で、好位確保から差し脚勝負に構えれば上位進出も見えてくる。ちなみに立川バンクは初参戦だ。
尾方真生は3年連続3回目の出場。
出場メンバーの中で一番長い距離を踏めるのが彼女の強みだ。昨年のグランプリは前受けから奥井迪を突っ張って先行勝負に打って出た。今年も仕掛けてくる選手がいなければ、積極策が濃厚となる。
しっかりペース駆けに持ち込んで、後続のもつれを誘えば押し切りもあり得る。こちらも立川バンクは初めての参戦だ。
2年ぶりのグランプリ参加となる坂口楓華は、今年一番成長したガールズケイリン選手だろう。ここまで優勝回数は18回。賞金ランキング7位で滑り込み出場を決めた。
根性と負けん気の強さもメンバー随一。しぶといレースで浮上してくるだろう。立川では今年2月に完全優勝しており、車券には欠かせない存在となりそうだ。
松本直
千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。