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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の逆行】オレの「死ぬ気でやる」はただの根性論ではなく最大心拍数値も含めた話である

2023/12/23 (土) 18:00 31

KEIRINグランプリ2023に出場する佐藤慎太郎(撮影:北山宏一)

 全国300万人の慎太郎ファン、そしてnetkeirin読者のみなさん、ひたすら練習に明け暮れている佐藤慎太郎です。今回で今年のコラムは書き納め。今年も多くの方に読んでもらい大感謝だ。2023年ラスト更新も全力で綴っていく!

あと1点を求めて

 今年1年の自己採点をすれば100点満点中「99点」と評価している。「これ以上はできない」と練習に励み、日々にやり残しのない11か月を過ごせたように思う。そして12月も計画的にトレーニングを積み上げることができている。己に課している「死ぬ気でやる」というテーマに妥協せず、ガッチリ取り組む毎日だ。

 100点をつけたくなる気持ちもなくはないが、『優勝できてない』って部分に1点分の減点をする。やるべきことをやっている実感があるため、本来なら結果がともなわなくても減点はしたくないが。

 しかし、勝つためにやっている以上、プロである以上、優勝がないのは残念だったからね。でも、今年はまだ終わっていない。まだKEIRINグランプリがある。そこで勝って1点を加点し、100点満点をつけて美酒を飲みたい。慎太郎ファンから祝福を受けたい。

あと1点を求めて(撮影:北山宏一)

記録への意識ではなく“チカラを出し切る”ことに集中する

 というわけでいよいよグランプリだが、2019年に立川で優勝していることもあり「立川といえば慎太郎さんの出番ですね」といった言葉をかけられることが多い。でも2023年は2023年のグランプリがある。「立川だからオレの出番」なんてまったく思ってない。でも、自分が意識しなくても、周りの声を受けて「あの瞬間の景色」を思い出すこともある。このプラスのイメージを受け止め、徹底的に準備して発走機に立とうと思う。

 また、周りの言葉で意識させられるトピックとして「最年長優勝記録」というのがある。ベテラン選手・佐藤慎太郎が47歳でグランプリを制すれば記録が塗り替えられるというやつだ。そんな記録を刻めるのならば本当に最高なことだと思う。でも、だからこそ、記録に意識を向けたくないんだよね。記録どうのこうのよりも自分のチカラを目一杯出し切ることに集中することが何より大切。やるべきことをやり切った先に初めて手が届くものだと考えている。

やるべきことをやり、出し切ることに集中する(撮影:北山宏一)

 そういや「最年長」的な年齢ネタを書いた“ついで”なんだが、最近のオレは若返りを感じている。これは気持ち的な話ではなく、練習時の最大心拍数の数値から心肺機能がまったく衰えていないことを確認しているってわけよ。心拍数192(※)で追い込んで脚が動かなくなっている47歳なんて、かなり希少だと思う。

(編集部注※)最大心拍数は「220-年齢」で算出するのが一般的。佐藤慎太郎の年齢47を基準に導き出すと173となる。このことから、いかに運動強度(負荷)に耐えられる心肺機能を有しているかは一目瞭然。また、身体的な意味で“命を懸けた”トレーニングに没頭していることもわかる。

 たまに「慎太郎、お前死ぬんじゃねえか?」って思うこともあるわ(笑)。死ぬくらいのつもりでトレーニングするってのは決して根性論ではなく、そういう限界数値を突破する気概で取り組むということ。今年は新しい力の台頭をひしひしと感じた。眞杉匠や山口拳矢がタイトルを獲ってのS級S班入りだ。オレはそれら若さに逆らい、抗っていく立場。ジジイ扱いされてる場合じゃねえ。

不死身の漢(撮影:北山宏一)

最終目的って何なのよって話

 今年の連載コラムでは、レースの振り返り以外にも「子ども時代のルーツの話」や「日常生活の中で思うこと」なども自由に書いてきた。みなさんのリアクションも届いてきており、楽しんでいただけたのかな、と思っている。そんなわけで、今月も“ふと思ったこと”を綴ってみようか。テーマは『最終目的って何なのよ』って話だ。

 最近、ゴルフや麻雀をしている時に、ふと思う。例えば、ゴルフといえばスコアを競うものでしょう。相手よりも少ない打数でコースを回るのが最終目的とも言える。でも、前の人にスコーン!と飛距離を出されると、オレの中に「負けたくねえ」って感情が湧き、とにかくボールをブっ叩いて、遠くに飛ばしたくなる。第1打・ドライバーで飛距離を出す者こそ勝者って感じになっちまうんだよな(笑)。

 麻雀もそう。最終目的を考えれば南4局が終了した時、誰よりも点棒を持っていればいいわけよ。でも「これは…!役満も作れそうじゃねえか!」って手が入ると、大冒険をしにいっちまう。

 最終目的は単純明快なのに『物事の途中』にはさまざまな感情や欲求が浮かんでくる。自己満足に過ぎない感情にも振り回されながら、その都度やりたいことを選択している。最終目的を忘れてはならないし、かといって最終目的さえクリアすれば良いというのも違うと思う。それは浅いと思う。

最終目的を忘れてはならないが、それだけに固執するのは浅いと話す(撮影:北山宏一)

 だが、これは競輪にも同じような節がある。レースでは誰よりも速くゴールして1着を獲ることが最終目的だ。でも、選択や判断にはさまざまな要素が絡んでくる。オレはもう長年「追い込み選手としての在り方」をずっと考え続けている。ある若い頃には「しっかりとブロックして2着なら」ってのが考えの中心にあったし、その考えを軸に理想の追い込み道を模索していた。

 そして時は流れ、立場・キャリアも変わり、競輪界のレーススタイルも変わり、それらを見るお客さんの価値観も変わり、オレの考え方も変化してきた。もちろん一貫して変わらない根底もあるがね。今年は特に新しい追い込み選手、隙のない追い込み選手になるために気張ってきた1年。でも本当に課題ばかりで、もっと広い視野を持って、オールマイティー性を体得する必要を感じている。

 まあ、「競輪の最終目的は1着でゴールすること」というテーマを探求するのは選手であるオレ自身。この天職に向き合い続け、自分のスタイルを磨き続けようと思う。人生というデカい目線で見れば競輪という職業だって「途中」の出来事であり、人生の1ページに過ぎない。どうせなら濃い1ページを書き殴りたいもんだよな。

 さて、それではここで筆を置く。立川グランプリは最高の先行屋とタッグを組んで戦ってくる。響平は今年、完全に自身のレーススタイルを確立しただけではなく、そのスタイルでしっかりと結果を残せることを証明した。連係が楽しみで仕方ないよね。

“徹底先行”を武器に連続S級S班入りの新山響平(撮影:北山宏一)

『慎太郎ファンはオレ1着の車券は買うべきだぜ。マジで突っ込むからな。買っとけばよかった!なんてことにはならないようにな!ガハハ!』と自信満々に言えるように心技体を仕上げて行く。というわけで、年末の大一番をとくとお楽しみください。

いざ決戦の舞台へ(撮影:北山宏一)

【公式HP・SNSはコチラ】
佐藤慎太郎公式ホームページ
佐藤慎太郎X(旧Twitter)

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佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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