2021/05/09 (日) 12:00 11
第75回日本選手権競輪(京王閣競輪場)は決勝を迎えました。
通称「ダービー」は選手にとって最大の目標でもあり、格式、伝統、全てが備わった実力日本一を決める大会です。
「グランプリもあるじゃないか」と思う方もいるでしょうが、競輪選手にとって「ダービー王」は最大の名誉です。ダービーのことを考えると何ヶ月も前からピリッとします。
ウッチー(内林久徳元選手)はダービー王に執念を燃やしました。「他の大会なら次のGI頑張ればいいかと思えるけど、ダービーは『また一年後か…』と落胆しかなかった」といいます。ダービーの重みは他の大会とは全然違います。
激戦を勝ち上がった選手、ライン構成は以下の通りです
②郡司浩平(99期・神奈川)ー⑨佐藤慎太郎(78期・福島)
⑤浅井康太(90期・三重)
⑥松岡健介(87期・兵庫)
⑦清水裕友(105期・山口)ー③松浦悠士(98期・広島)
⑧眞杉匠(113期・栃木)ー①平原康多(87期・埼玉)ー④武藤龍生(98期・埼玉)
このメンバーで優勝に一番近いのは①平原康多でしょう。⑧眞杉が初のGI決勝なので先行以外考えてないと思います。それは「やることは一つ」というコメントにも現れています。
ラインができる②郡司や⑦清水が「関東ラインを出させて中団狙い」と考えているなら、①平原が絶対有利です。
では、関東ラインを叩きに行くのはどちらでしょうか?
私は⑦清水だと思います。
彼は昨年の豊橋全日本選抜競輪を松浦悠士の番手で優勝しました。その後、いわき平サマーナイトフェスティバルを優勝し、暮れの平塚グランプリに出場します。
GPは松浦悠士が脇本雄太ともがき合い、そのスピードを活かして清水がまくります。最終4角、先行する脇本の後ろ平原が前に踏まず清水を止めに行ったので清水は止まります。
結果、中を入った和田健太郎が優勝。清水は6着に沈みました。
今年の4月、松阪ウィナーズカップを優勝した清水は「全日本選抜の後、納得できるレースが少なかった。このまま終わるのかと思っていたので、この優勝は嬉しい」と言っています。
私たちには安定した成績を残していると思っても、清水はずっと葛藤を抱えてレースに挑んでいました。
なぜ、安定しているように見えていたかというと、そこの松浦の存在があったからでしょう。
一昨年の競輪祭は、清水がインで粘って平原をどかして松浦が優勝。その当時私たちは「松浦ー清水」より「清水ー松浦」の方がしっくりきました。しかし、今では「松浦ー清水」でもしっくりきます。これは、松浦が頑張って支えてきた証ではないでしょうか。
決勝は⑧眞杉の先行を考えて誰も前を取りたくないと思います。ですが、しびれを切らして単騎の選手が前受けすると考えました。
②郡司が関東の後ろを狙うと考えて後ろ攻め。⑦清水は前中団で一旦引いて関東勢に襲いかかるので、初手はこう考えます。
S.⑤、⑥、⑦③、⑧①④、②⑨
②郡司が出て関東勢を出させます。単騎の選手はその後ろでしょう。
←⑦③
打鐘.⑧①④、②⑨、⑤、⑥
清水が⑧眞杉を叩きに行きます。行かなければ、何度も言いますが①平原絶対有利。
平原が出るのは1角過ぎだと思うので、⑦清水がホーム線前に①平原を叩けば③松浦の出番が…
今節の③松浦は絶好調とは言えませんが、チャンスがあれば全力で踏むと思います。また、そうでないとダービーは獲れないと思います。
優勝は③松浦
3ー1ー495
3ー2ー951
を狙います。
今年前半戦を引っ張ってきたのは③松浦です。ダービー王の資格は十分あると思います。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。