アプリ限定 2023/11/16 (木) 18:00 186
今年の競輪界では、5月の日本選手権競輪(GI)を山口拳矢が、8月のオールスター競輪(GI)は眞杉匠が初タイトルを獲得。ともにS級1班の若手選手たちだった。グランプリの出場権を獲得し、来年のS班を決めた一方で、今年のS班の中には苦戦を強いられる選手も目立った。競輪祭までの戦いぶりを追いながら、ここまでを振り返る。(構成・編集=netkeirin編集部)
2023年のS班は、新顔の新山響平を除き、返り咲きの脇本雄太や新田祐大も含め「常連組」が揃った。平均年齢は36歳(11月14日時点)、地区別では北日本4人、関東1人、南関東1人、近畿2人、中国1人。中でも最強コンビと呼び声の高い近畿の脇本雄太と古性優作の2人、最多人数を誇る北日本4人(新田祐大、守澤太志、佐藤慎太郎、新山響平)に注目が集まった。
氏名 | 年令 | 府県 | 期別 | 在籍回数 |
---|---|---|---|---|
古性優作 | 32 | 大阪 | 100 | 2年連続2度目 |
脇本雄太 | 34 | 福井 | 94 | 2年ぶり4度目 |
新田祐大 | 37 | 福島 | 90 | 2年ぶり9度目 |
新山響平 | 30 | 青森 | 107 | 初年度 |
松浦悠士 | 32 | 広島 | 98 | 4年連続4度目 |
郡司浩平 | 33 | 神奈川 | 99 | 4年連続4度目 |
守澤太志 | 38 | 秋田 | 96 | 3年連続3度目 |
佐藤慎太郎 | 47 | 福島 | 78 | 4年連続5度目 |
平原康多 | 41 | 埼玉 | 87 | 10年連続14度目 |
スタートダッシュを決めたのは古性優作だった。和歌山、豊橋記念は決勝2着と、ラインを組む脇本を抜くことは出来なかったが、2月に高知競輪で行われた今年最初のGI「全日本選抜競輪」では脇本の番手から抜け出し優勝。
優勝賞金3,442万円を獲得して賞金ランキング1位に。この優勝により「KEIRINグランプリ」出場権と2024年のS班を確保。脇本が腰痛の影響で不調だったことを差し引いても、強さを感じさせるレースだった。決勝2着の守澤太志が賞金1,771万円を積んで2位に。
平原康多は年明けから波に乗れない競走が続き30位。
新山響平は、前年までの思い切りの良い先行が見られず、2月時点で41位。松浦悠士は年明け初戦の和歌山記念を体調不良で当日欠場。その後も不調が長引き、2月までは決勝進出もおぼつかず60位に低迷。3月のGIIウィナーズカップ優勝でランキングを一気に上げたが苦しい序盤戦だった。5月、平塚競輪で行われたGI・2戦目の「日本選手権競輪」は、S1班の山口拳矢が優勝。S班では佐藤慎太郎が決勝3着に入り、賞金2,638万円を加算し、5位に浮上した。平原康多は4月の武雄記念3日目の落車骨折により選手権を欠場。守澤太志と郡司浩平は、選手権5日目の準決勝で落車。その後の走りに影響を及ぼす要因にもなった。
スピード化が進むレースや加齢も考えられるが、今年のS班が苦しんだと言われる理由の1つにアクシデントがある。9人中5人がケガに見舞われた。超人的な回復力や、使命感や責任感の強さからレースに復帰したが、ベストパフォーマンスとは言えない走りも見られた。
選手名 | 症状 |
---|---|
守澤太志 | 第7頸椎骨折(5月) |
郡司浩平 | 右肩甲骨骨折(5月) |
松浦悠士 | 左上腕打撲傷(4月) 左鎖骨と肩甲骨骨折(8月) |
脇本雄太 | 右肋骨と肩甲骨骨折および肺気胸(8月) |
平原康多 | 右肩甲骨骨折(4月) 右肘挫創と頸椎捻挫、頭部および右腰部打撲(6月) グロインペイン症候群(7月) |
6月には3つめのGI「高松宮記念杯競輪」が岸和田競輪で行われた。賞金ランキング1位で地元の古性優作は、1走目で落車と崖っぷちに立たされたが、2走目から巻き返し、今年2度目のGI優勝で大会連覇。優勝賞金4,500万円を獲得し再び1位に。佐藤慎太郎が決勝2着と、ここでも賞金加算に成功。新山響平が本来の先行を見せ始め、賞金ボーダーに食い込んだ。
8月に西武園競輪で行われた、4つ目のGI「オールスター競輪」を制したのはS1班の眞杉匠だった。S班では古性優作が決勝2着で3,072万円を加算。地元で期待を集めた平原康多は決勝進出を果たすも、7着に終わった。脇本雄太と松浦悠士は、4日目のシャイニングスター賞で落車。脇本は約3カ月、松浦は約2か月の離脱を余儀なくされた。新田祐大は年明けの立川記念で完全優勝と好スタートを切るも、GII以上のビッグレースで決勝に進めず、ボーダー付近から抜け出せない状況が続いていた。
10月に弥彦競輪で行われた「寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント」を制したのは古性優作だった。コンビを組む脇本雄太が故障欠場で不在の中でも、強さを見せて今年3回目のGI優勝、賞金3,800万を加算した。自在の脚力、位置取りの巧さ、勝負強さはS班の中でも突出しており、”スーパーS班”の印象を与えた。
S班9人は、21日から行われる今年最後のGI「朝日新聞社杯競輪祭」に出走予定。ケガに苦しんだ選手もいるが、S班のプライドを賭け、全員最高のレースを見せてくれるはずだ。優勝争いはもちろん、グランプリ出場権獲得をめぐる戦いからも目が離せない。
netkeirin特派員
netkeirin tokuhain
制度の仕組みや選手の証言を通して競輪界の顔ともいえるS班を解説します。