2023/10/09 (月) 12:00 2
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は久留米競輪場で開催されている火の国杯争奪戦の決勝レース展望です。
久留米競輪場で開催されている【火の国杯争奪戦】ですが、ポスターに「待望」との文字を書かれたのは書道家で、熊本出身でもある武田双雲さんとなります。
ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、武田双雲さんは競輪専門誌のコンドルを発行している、有限会社コンドル出版社で専務取締役を務めている、武田圭二さんの子息でもあります。
武田双雲さんが【火の国杯争奪戦】のポスターを書かれるようになってから、今年で8年目。その間には熊本競輪場が2016年の熊本地震の影響で使えなくなっていましたが、来年の6月からの再開が決まっています。
ポスターに書かれた「待望」との文字は、熊本競輪の関係者や所属する選手たち、そしてファンにとっても同じ気持ちでしょう。
そのポスターに書かれた思いに後押しされるかのように、この決勝には地元の熊本に所属する選手が4人も名を連ねました。
その4人の並びは松岡選手-嘉永選手-中本選手-塚本選手。準決勝で上位独占を果たした北日本ラインは、その時と同じく新山選手-菅田選手-永澤選手。郡司選手と山田選手はそれぞれ単騎となっています。
大きく二分戦となった決勝ですが、1番車に嘉永選手が入っているだけに、前を取っての突っ張り先行が濃厚と言えるでしょう。その熊本ラインの後ろに入っていそうなのが2番車の郡司選手で、その後は同じく単騎の山田選手。北日本ラインは7番手からレースを進めていくと思われます。
後方に置かれた新山選手は、ジャンの前に熊本ラインを抑えに行くと思いますが、それでも松岡選手が突っ張っていくので、元の7番手に戻るはずです。そうなれば、嘉永選手の番手捲りには最高の展開となります。
初日の特選で落車をした嘉永選手ですが、その後は勝利をあげられていないとは言えども、レースの内容からすると状態は上向いているように見えます。
自分の感覚からしても、落車直後は痛みだけでなく、筋肉も硬直してしまうのですが、日を追って痛みも緩和されていくだけでなく、走ることにその硬直もほぐれてきます。
嘉永選手も決して万全では無いかと思いますが、松岡選手が前を走ってくれて、後ろも2人が固めるという絶好の展開となっただけに、ここでは力を出し切るようなレースをしてくれるに違いありません。
ただ、怖い存在となっているのが、その熊本ラインの後ろからレースを進めていく郡司選手と言えるでしょう。
準決勝では九州ラインの二段掛けを番手で追いかけていっただけでなく、最後は前を行く嘉永選手を交わし切ってゴール。今大会における出来の良さは明らかです。ただ、4車となった熊本ラインを相手に、同じレースをするのは難しいかもしれません。
それでも抑えに行った新山選手が車を下げずに、松岡選手とやりあうハイスピード戦となったのならば、郡司選手だけでなく、その後ろにいるであろう、山田選手にもチャンスが出てきます。
勿論、準決勝では鮮やかな捲りを見せた新山選手が、ここでも先行争いをせずに、捲りを狙ってくる展開も充分に考えられます。その場合は、熊本ラインの後ろで脚を溜めている郡司選手と、SS班での決着も考えられそうです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。