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前田睦生の感情移入

【競輪の2段駆け禁止論】眞杉匠の発進問題の賛否両論…70年続いてきた競輪の要因は?

アプリ限定 2023/09/17 (日) 12:00 178

眞杉匠(左)は森田優弥に思っていることを走りで示した

70余年を支えてきたものは何か

 競輪創生から70年を超える。1948年11月に小倉競輪場で始まってから、長くファンに愛され、地域貢献を続けてきた。確固たる存在意義がある。当初の目的である戦後復興、地域を支え、社会へ貢献することが基礎で、その上に「競輪を楽しむ人たちのために」が成り立っている。

 野球やサッカーといった人気スポーツだけでなく、どんなスポーツ、娯楽、趣味も、それを愛する人たちのためにある。競輪はマイナーと呼ばれることもありはするものの、広く深く人々の心をつかんできた。

 だからこそこうも長く続いているわけだが、常に安泰というわけでもない。吉田拓矢(28歳・茨城=107期)の暴走失格の際に書いた“時代”というキーワードが最近、強く気になっている。戦後や、その後の経済成長期、バブル崩壊、そして現在も“時代”の色を持っている。

 その色の濃淡はしかし、大きくは変わらないと思う。競輪を支えてきたのは、戦う選手たちをつぶさに見つめ、その心理を読む面白さにハマり、簡単ではない車券推理に挑むファンの神秘性がある。競輪の色は、選手の色よりもファンの色の方が濃いのかもしれない。

眞杉匠発進問題

眞杉匠はバンクの外でも思いを表現していた

 かつてもあったことだが、GIという最高格のレースを勝った選手が、次のシリーズでは勝てないことがある。ラインのためを優先して、大きな着になるケースがある。「なんで最強のはずのレーサーが、こんなことになるの?」は昔から、競輪を覚えたての人たちには生まれてきた。

 競輪を長く、そうでなくとも、それなりの時間見ていると、なぜか…は分かるようになる。発進、という行為を排除すべきかどうかは少し置くが、他のギャンブルでも情報を持たずにお金を賭け、やられて不平を言っても仕方ない。どういったものかを研究してみんなが勝負しているので、『自分は知らなかった』では言い訳にもならない。

 人生においてもそうだが、失敗して、やられて覚えるもので、おおらかにそれは「授業料」と呼ばれてきた。それで競輪は敷居が高いと言われてもいるので、「授業料なしの競輪にしろ」の声もずっとあるが、これも少し置く。

 眞杉匠(24歳・栃木=113期)は同期の森田優弥(25歳・埼玉=113期)が先んじて上に上がり、上位戦で戦い、苦しみ、立ち向かっている姿を見てきた。過去、別線で戦ったこともあったが、「並んで戦いたい」という思いを強く持っていた。やっと並ぶことができて、眞杉は森田の前で、関東の先頭で戦う意志を示し、多くのファンはそれを「眞杉を切った関東ラインが人気になる」という投票行為で支えた。

 だから、続いてきたんじゃないの。競輪は。

発進はダメなのか

思いを抱えて走っているからこそ面白い

 昔から2段駆け禁止論は根強くある。そしてもう、その時代は来ているのかもしれない。だが、現在も多くのファンが支持している「選手の心理を読む競輪」があるのは事実。長く続いてきた根拠がここにあると私は考えている。

 ただし、私が“終わってる”可能性も十分あるので、この見解を押し付ける気持ちはない。ひとつの考え方としてとらえてもらえればと思う。「授業料なしの競輪」作りを検討することは必要だろう。面白くないと思うけど。

 発進には原理があって、選手の熱い思いが根底にある。ファンもそこにいる。競輪はそこを見逃さず、研究し、可能なら車券を当てて儲けることができれば一番というものだ。喜びをともにできる時間も生まれる。一緒に悔しい思いをすることもある。2段駆けも、よく失敗するし…。

 その時間こそがこれからも競輪が続いていく力になる。ファンが支えてきた競輪があるからこそ、眞杉の走りは私は良かったと思うし、感動するものもあった。これは眞杉だけにとどまらず、ずっと、いろんなところで、たくさんの選手に感じてきたことだ。

 まあ、世の中のすべてのことにおいて賛否両論は生まれがち。多少なりとも競輪の話題が沸き上がることだけでも、喜びたい。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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