2023/09/09 (土) 12:00 68
9月7日の熊本市議会で大西一史市長が「2024年6月をめどに熊本競輪を再開する」と一般質問で説明した。
ついに、その時が来る。2016年4月、2度にわたる大地震で熊本は傷ついた。競輪場はボロボロになり、廃止の声すら上がったこともあった。
『再開』への道は進んでいたが、それがいつなのかは「2024年秋」「2024年の熊本記念がある10月には」とあいまいで、再開は決まっていてもモゾモゾするものがあった。今回の市長の説明で、もう光しか見えない。
500バンクで“滑走路”の異名を持つ長い直線が特徴的だったバンクは400バンクに生まれ変わる。地域の施設として全体的に再構築され、また新しい熊本競輪の歴史が始まっていく。20年以上前、初めて熊本競輪場に行った時の緊張と興奮を思い出す。
競輪ファンのシンガーソングライター・友川カズキの歌には競輪を歌ったものがある。競輪場に売っている「アジフライ!」と叫ぶものもあって、ある時、熊本競輪場の売店でアジフライを求めたことを思い出す。
大学の先輩が友川のファンであり、また競輪のファンでもあり、競輪場への道が通った。そこは異様な熱気で、エネルギッシュなおっちゃんたちが騒いでいた。その雰囲気の虜になり、またレースの激しさと美しさに心を惹かれた。
ハンチングのおっさん、だみ声の予想屋さん、静かなじいさん、いつだったかコーチ屋も見た。決定発表をみんなで見て「バンザーイ!バンザーイ!」と的中を喜ぶ小さいおじさん集団も見たな…。Aプライスで買ってきたのだろうマカロニサラダが好きだった。
競輪選手の過酷な戦いと、挑む姿勢を知るようになり、もう離れることができなくなった。取材でも訪れていたわけだが、2016年の大地震からは、時折、見に行ったり、状況の取材に行かせてもらったりしたが、「ここでレースを見られないのか」と灰色の気分になっていた。
ようやく…だ。
再開の時、6月の開催日程はどうなるだろう。とにかく祈りたいのは、昼の単独開催で全国的に華々しく再開のお祝いのシリーズをつくってほしいということ。
「再建された熊本競輪場で走ってこそ、本当の復興」
中川誠一郎(44歳・熊本=85期)が訴え続けた言葉だ。
競輪選手が、また熊本競輪場を走る、その瞬間を競輪ファンみんなが共有してほしい。熊本の人たちが集まって、また全国からこの瞬間を待ち望んだ仲間が集結して、熊本競輪場で本当の復興を感じる時--。
競輪の力を、世界中に伝えられるだろう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。