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前田睦生の感情移入

【オールスター競輪】脇本雄太 苦闘と成長の1年、そして次世代エース・中野慎詞はぶち上げるか

2023/08/14 (月) 12:00 25

脇本雄太は昨年大会の覇者

脇本雄太の濃密な1年間

 8月15〜20日は西武園競輪場で「第66回オールスター競輪(GI)」が開催される。初日にファン投票1〜9位のドリームレース、2日目に10〜18位のオリオン賞レースとガールズ8〜14位のアルテミス賞レース、3日目にはガールズケイリンの1〜7位のガールズドリームレースが行われる。6日間の長丁場のナイターGIで、昨年は壮絶だった。

 暑さもあって日々の消耗は激甚。しかし、信じられない状況から脇本雄太(34歳・福井=94期)が優勝をつかみ取った。決勝は同県の後輩・寺崎浩平(29歳・福井=117期)の番手。赤板で松浦悠士(32歳・広島=98期)に内をすくわれて後退してしまった。

 この時すでにペースが上がっており、追い上げるのは困難。現実的な判断から、まくりに構えて優勝を手にした。まくりが利かない西武園バンクで、信じられない勝利だった。だが、胸の中には悶々とするものがあった。

 追い上げるのが、本来やるべきことだった。

1年かけて

今年もドラマが待っている

 それからほぼ1年後。福井記念(不死鳥杯)の決勝だ。
 藤井栄二(32歳・兵庫=99期)の番手を回ったが、ジカで関東屈指のマーカー・河野通孝(40歳・茨城=88期)が競ってきた。道中で位置を奪われたが、懸命に追いかけて番手を守ることに力を費やした。敗戦となったものの、脇本が“これからやるべきこと”を表明した形だ。

 脇本自身がコラムで「自分も若いころに後ろの選手が追い上げてこなくて疑問に思ったことがある」と書いている。昨年背負った十字架は、長く背中に焼き付いていたのだ。

 今後もケースにはよるわけだが、『近畿ラインをどうしていくか』から逃げずに向き合うことになる。現状は自力の方が比重を占めているので、福井記念決勝のような場面は多くはないだろう。しかし、それをやること、見せること、の重みを知っているだけに戦いの熱量はすさまじいものになってくる。

 優勝したものの悔しい思いも秘めたあの日から、KEIRINグランプリ制覇も経て、濃い1年間を過ごしてきた。今年もドラマが待っていることだろう。

 競りに行った河野の姿勢も神聖なもので、その後に競ったことを糧にして、さらにいい走りをしていることも見逃せない。青森も、すごかった…。

ドリームレースは、中野慎詞は、どうなる?

中野慎詞は、やるぞ!

 座談会の方で、『ドリームレースは並びとしては北日本がどうか』が話題に上がった。
 並ぶと思うが、3番手、4番手は入れ替わるかも…と話した。佐藤慎太郎(46歳・福島=78期)と守澤太志(38歳・秋田=96期)の関係性は、揺れ動いている。ドリームに向けてのコメントを待ちたい。

 また北日本の次世代エース・中野慎詞(24歳・岩手=121期)が、イギリスで行われた世界選手権のケイリンで銅メダルを獲得した。来年に迫るパリ五輪に向けて大きな一歩だ。すぐに“競輪”の方での活躍が期待されるもので、なぜそれが大事なのかは中野が一番分かっていると思う。

 競技でも競輪でも活躍することが、広く世の中に対してのアピールになる。強くそれを声に出し、挑戦したのが新田祐大(38歳・福島=90期)、深谷知広(33歳・静岡=96期)、そして脇本といった先輩たちだ。先輩たちは大いにその道を切り開いたが、大きな果実収穫には至らなかった。それを見てきた責任ある立場として、このシリーズに挑む。

ガールズドリームは児玉碧衣と佐藤水菜の争い

児玉碧衣が迎え撃つ

 ガールズドリームレースはとにかく佐藤水菜(24歳・神奈川=114期)に大きな注目が集まる。今年は「勝率100%」を目標に掲げ、ガールズケイリンでは負けないことを自らに課している。イギリスの世界選手権を終えての参戦になり、結果を出せなかった気落ちがあるのか、その悔しさをぶつけるのか…気になるところだ。

 太田りゆ(28歳・埼玉=112期)も同じ条件になるわけだが、太田としては「大きいところをとにかく勝ちたい」と欲望むき出しで来るだろう。こちらはギンギンだと思う。

 迎え撃つ立場は無論、児玉碧衣(28歳・福岡=108期)だ。
「ドメスティックVSナショナル」を標榜し、ある意味でガールズケイリンを盛り上げようという感もある。そして、そこで自分が勝つという責務を自分に与え、ファンを巻き込んでいる。

 より高い所へ、ガールズケイリンは進むことが求められている。今回の戦いは、その一歩を示せるか、重要な位置づけになる。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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