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【加藤慎平の選手解説】太田海也 駆け引き不要な”正攻法”のレースに課題は残るが、ダッシュと持続力はS級上位

2023/08/13 (日) 19:00 41

元グランプリレーサーで競輪評論家の加藤慎平さんがビッグやグレードレースで推したい注目選手を紹介。競走データからは見えてこない選手の特徴を解説します。今回は「オールスター競輪(GI)」に出場する太田海也選手です。

底知れぬダッシュ力と粘りが持ち味

 今回紹介するのは、イギリス・グラスゴーで開催された世界選手権を戦い抜いたばかりの太田海也選手。

 高校まではボート競技に励み、そこから競輪に転向した異色の経歴を持つ。ほぼ初心者の状態から、いきなり養成所に受かってしまうのも驚きだが、そこからゴールデンキャップを獲得し、121回生の早期卒業生となる。

 昨年デビューを果たした後も、同年にはS級に昇格し、今年5月の全日本選手権では出場した全種目(チームスプリント・スプリント・ケイリン)で優勝するという快挙を達成。世界選手権ではメダル獲得こそならなかったが、いまやナショナルチームのエースといっても過言ではない。

 自転車歴も5年ほどと浅く、荒削りなレースも多いなかで、ここまでの活躍は恐ろしい…そんな太田選手の強みは、“爆発的なダッシュ力”と“先行しても粘れる持続力”。バキバキに鍛え上げられた肉体から繰り出されるスピードは破壊的だ。FI開催では、残り2周時点で先頭に立ち、他のラインの先行選手の追い上げを許さず、そのまま押し切るレースも多い。FIではまさに敵なし。ライバルからしてもお手上げ状態といったところだろう。

 レーススタイルは完全に自力型で、脚質は“逃げ”か“捲り”の二択。逃げる際は、残り2周の赤板からの突っ張り先行で、そのままペースを緩めることなく、後続を完封するパターン。捲る際は、前受けから残り2周で完全に引いて、そこから豪快に捲るパターンだ。

 自転車競技の出場が多く、競輪競走に慣れてないことからも、太田選手はペース配分や戦局を読み込む能力が低い。器用なレース運びができないぶん、駆け引き不要な正攻法で勝負することが多いのだ。もはや身体的な能力だけで、ここまでかけ上がってきた印象だ。

 そしてついに、オールスター競輪で初のGI出場を果たす太田選手。昨年のグランプリ出場の9名や若手自力型の選手とどのように張り合うのか見ものだ。

 身体的な能力ではここでも互角以上、うまくはまれば優勝の可能性すらある。GIの舞台でも、前述の勝ちパターンと同じように、“突っ張り先行”と“後方からの豪快な捲り”と真っ向勝負をしてくるだろう。

 いや、正確に言えば、“正攻法のレースしかできない”可能性が高い。現状、太田選手のテクニック面を考慮すると、百戦錬磨の先輩相手に良い位置を取ったり、自分のタイミングで仕掛けていくのは難しい。自分の力を出し切るために、多少大味ながらも極端な戦い方をしてくるはずだ。

 そのなかでも、先行有利と言われる西武園バンクなだけに、突っ張り先行が主流になると見る。

 特にレース慣れしてない1走目は、ほぼ間違いなく前受けからの突っ張り先行を選んでくる。そこでどこまで粘れるかが、調子のバロメーターとなる。自力選手にマークされながらも、振り切って1着に来たら期待大だ。車券では太田選手の番手に自力型選手がついた場合、番手を1着、逃げた太田選手を2着で買っておくのも悪くないだろう。

 太田選手にとっては、世界選手権から約1週間後の参戦となる。正直、時差ボケは治っていないだろうが、疲れを抜いて臨める日程だ。しかも世界トップレベルの選手と凌ぎを削ってきた直後は、精神的に自信や勢いに満ちているものだ。

 デビュー2年目の怪物が、一線級相手にどこまでカマしてくれるのか。いまから待ち遠しくて仕方ない。

太田海也選手3行メモ
ナショナルチームで鍛えられたダッシュ力と持続力
戦法は突っ張り先行か引いての捲り
ペース配分や戦局を読む力はまだ低い

5月松山FI以来の競輪復帰となる太田海也。オールスター競輪では世界で戦ってきた力を見せられるか※写真は高知記念最終日(撮影:北山宏一)

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加藤慎平

岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々なメディアでMC・解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。筋トレ、サウナ、ゲームなどに造詣が深い。

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